エデンワークス篠崎恵美が花で綴る、旅ダイアリー。

Interiors 2020.11.09

「旅は、自分を解き放って自由をくれる時間」と語る、フラワークリエイターの篠崎恵美。彼女が世界を旅して感じ取った景色や暮らし、植物……6カ国のダイアリーを花で表現する。

Amsterdam

陽光あふれる街に輝く、元気な原色のブーケ。

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仕事で訪れたアムステルダムでは、光の入り方が日本とは大きく違うと感じた。写真を撮ると、どんな場所も自然光で生き生きと輝いて映る。宿泊していたロイド・ホテルで見かけた、貸し出し用の赤ちゃんベッドが並んでいる様子(上)でさえ、まぶしく美しかった。オランダは球根植物の国としても知られている。もしかしたら、この陽光の入り方が関係しているのかもしれない。そんなアムステルダムは、原色で元気なイメージの花が似合う。ラナンキュラスやダリア、紙で作る花のブランド、PAPER EDENのチューリップを、赤が利いたヴィンテージの花器に自由に生けて。

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Los Angeles

ベージュという色が、西海岸の乾いた空気を運ぶ。

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私のロサンゼルスのイメージカラーは、ベージュ。ロサンゼルスを思い出して頭に浮かんできたのは、ベージュを基調にオレンジとブラウンの色合いを添えたブーケだ。原産の花ではないけれど、アンスリウムやピンクッション、ブーゲンビリアが、西海岸の乾いた雰囲気を運んできてくれる。ロサンゼルスの陶芸家が創った、アーティなフォルムの白い花器に伸びやかに生けた。ロサンゼルスを訪れたきっかけは、ガーデンプロデュースの仕事を受けたことだった。自生している植物が、とにかく巨大化していることに驚いた。夜の湿度の高さと日中の日差しの強さは、植物にとって非常に好条件なのだ。その生命力を感じたくて、植物公園(上)に何度も足を運んだ。

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Melbourne

力強く根を張る、ワイルドフラワーのように。

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新婚旅行で訪れた、オーストラリアのメルボルン。公園を散歩したり、カフェでお茶したり、ただのんびりと過ごした。ロサンゼルスと近い温暖な気候ながら、植物は少し異なる種類のもの(上)を多く見かけた。特に興味深かったのは、ワイルドフラワーと呼ばれる、花を咲かせた自生の植物たち。力強く地に根を張っている様子が、健気でとても可愛らしかった。メルボルンをイメージしたブーケは、そんなワイルドフラワーの力強さと賢さを表現したくて、乾燥させるとそのままドライフラワーになるカンガルーポーやプティロータスをチョイス。形がちょっぴりいびつなヴィンテージの陶器の花器を合わせて、おおらかで優しい雰囲気を演出した。

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Paris

花のある暮らしにオマージュを捧げて。

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パリは、仕事で足を運ぶことも多い街。少し歩けば、レストランやホテルの生け込みに生花が飾られている様子を目にする。道沿いの外壁に、トリコロールの花束が貼り付けられていた(上)のも印象的だった。日本のコンビニエンスストア感覚でフローリストがあり、この街の人々の暮らしにいかに花が身近な存在であるかを知ることができた。そんなロマンティックで美しいパリを表現するブーケは、シンプルにバラだけ。ツルバラと落ち着いたピンクが愛らしいバラ・エデンロマンティカの2種を選んだ。枝も花も個性的なツルバラはアイアンの花器にそのまま造作なく生けることで、自然体なのに小洒落たパリの空気が漂ってくる。

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Helsinki

シンプルに生けた、ライラックの北欧らしさ。

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ヘルシンキのイメージは、モダンなインテリアにも合うブラウンのヴィンテージの花器に。ポテッとした抽象画のようなタッチが愛らしい。鮮やかなラベンダーカラーのライラック一種のみをナチュラルに生けて、温もりも感じられるシンプルで洗練された雰囲気を演出した。ヨーロッパに仕事で訪れた際、インスピレーションを得たくて1日だけ訪れたのがフィンランド。小さなヘルシンキの街を駆け足で歩いた後に向かった湖では、2羽の白鳥が寄り添っていて(上)、まるで絵画のように美しい光景だった。湖の畔で見かけた木々や植物はシャープで独特の気配があり、寒い地方のためか、実のなる木が多いように感じられた。

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Shanghai

色香を感じる花が、ビビッドな街へと誘う。

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イベントのお手伝いで訪れた上海は、ビビッドな色使いが印象的な街だった。もうすぐ閉鎖するという花市場の一角にあった壁も、目が覚めるようなピンク色(上)。そんな街の色合いとリンクしたかのような、発色の強い花々をそこかしこで見かけた。上海を思い浮かべてセレクトしたのは、アイリス、オンシジューム、メディニラ・マグニフィカなど、アジア原産の個性あふれる花々。磨りガラスのようなグラフィカルな深いグリーンの花器も、高層ビルが多く近代化が進みゆく上海のイメージに合わせて。花それぞれの向きを変えて生けたニュアンスあるブーケは、チャイナ服を着た美女の姿が浮かんでくるよう。

篠崎恵美
Megumi Shinozaki
フラワークリエイター
栃木県生まれ。ファッション業界から転身し、2009年に独立。edenworksを立ち上げ、アパレルブランドとのコラボレーションやミュージシャンのアーティスト写真など、幅広く活動する。ドライフラワー専門店EW.Pharmacyや土日のみオープンの花屋edenworksbedroomも人気。また、紙で花を作るプロジェクトのPAPER EDENもスタートさせた。
https://edenworks.jp

*「フィガロジャポン」2020年8月号より抜粋

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stylisme : MEGUMI SHINOZAKI, photos : TOSHIAKI KITAOKA

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