心地よく暮らすための小さな美の見つけ方 猫と緑とワイン......好きなものだけに囲まれる暮らし方。
Interiors 2021.09.08
「庭と猫、あとはいい香りのものがあれば幸せ」と、少女のような笑顔で語る黒田トモコ(alice daisy rose主宰)の家は、千駄ヶ谷にあるヴィンテージマンションの角部屋。重たい鉄の扉の向こう側に、秘密の庭が広がっている。
分厚くて丈夫な古いデュラレックスのワイングラスは、屋外で使うのにぴったり。グラスになみなみと注ぐのが黒田流。セルヴァンで、お気に入りのデイリーワインを探すのが目下の楽しみ。
「20年近く前、広いルーフバルコニーが気に入って入居しました。もともとあった人工芝を、すべて剥がしました。いまはグラジオラス、ブッドレア、エキナセアなどが咲いています。春はミモザと藤、初夏になるとオルレア、冬はヒヤシンスやムスカリ。花が咲き、種がこぼれて、の繰り返し」
この庭は、グラフィックデザイナーである夫が育てた。趣味のガーデニングが嵩じて、庭造りの仕事も手がけている。花だけで100種類以上あるが、花よりも緑の種類が多い。天気のいい週末は、昼間からお気に入りのワインを開けて、一日の大半をべランダで過ごす。黒田が読書をする傍ら、夫は水を撒きながら植物の手入れをする。それぞれが好きなことをして過ごすベランダでの時間は、何よりも豊かだ。
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1. 育てて、摘んで、飾って楽しむ
自然美を大切にしたイングリッシュガーデンを、そのままブーケにしたような飾り方。千駄ヶ谷のVEINで購入した花に、ベランダで育てたグリーンをたっぷりと交ぜて生ける。アンティークのピクルス瓶や薬瓶を花器に、気取らないラフな花のしつらえが素敵だ。
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2. ワインのエチケットを壁に貼る
「どんなものにでも、ついつい可愛さを見いだしてしまって……。だからモノが捨てられないんです」。飲んだワインのエチケットやコルクも、捨てられずにとっておく。ふと思い立って、ワインのエチケットをステッカーのように冷蔵庫に貼り始めたところ(写真上)、真っ白で味気なかった冷蔵庫がなんだかとっても魅力的に。冷蔵庫に貼るスペースがなくなったいま、キッチンの壁(写真下)もエチケットだらけに。
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3. 家中のあちらこちらに猫
「うちの猫に似ているものを見つけると、連れて帰らずにはいられなくて……」と語る。ロンドン、パリ、東京、いろいろな旅先で出合った猫たちが、家中のそこかしこから顔を覗かせる。
塩川いづみに描いてもらった作品(写真上奥)や、旅のお供の亡き愛猫の等身大のクッション(写真上)。
ドイツ製の猫のポット(写真下)は愛しさのあまり壊れたものも捨てられなくて同じものを3台(!)所有。
スタイリストの岡尾美代子に譲ってもらった猫柄の古い壁掛け時計は、縦にすると秒針が上がらないので、壁にかけずにミシン台の足元に横たえて置いている。
プレスルーム&オンラインセレクトショップalice daisy rose主宰。90年代、英国に暮らす。ファッションブランドのPRのほか、英国のヴィーガンフレグランスキャンドル、LOのPRとセールスもスタート。
Instagram:@alice_daisy_rose
*「フィガロジャポン」2021年9月号より抜粋
photography: Sodai Yokoyama