グリーンランドの光の描写、ロイヤル コペンハーゲン「ウニカ」。

ロイヤル コペンハーゲンの新コレクションをご紹介しましょう。毎年ひとりのアーティストが手がけるユニークピース、「ウニカ」(UNIKA)。ロイヤル コペンハーゲン 丸の内本店で、今年の作品の展示、販売が始まりました。

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2019年のUNIKA。Photo: Courtesy of Royal Copenhagen Japan.

「ウニカ」はロイヤル コペンハーゲン窯が200年前より発表している、各一点もののコレクション。2019年のコレクションを手がけたのは、デンマークに生まれ、アートと工芸を学んだアーティスト、ピア・アンダーセンです。

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デンマークを代表するアーティストのひとり、ピア・アンダーセン。

作品制作や展覧会のテーマを「ある場所への旅を通して決めている」と語るピア・アンダーセン。「光の物語を、人生を明るい方向から見ること、静かに思いにふける場をつくりたいと願ってきました。このような願いを託せる場を自分の作品を通じて創出することを思ってきました。その場はまさにグリーランドにあったのです」

グリーランドは初めての訪問で、1か月ほど滞在したそう。「グリーランドでは自然そのものを経験しました」と彼女。「グリーランドの風は光と切り離すことはできず、海と氷山、光が一体となっていることを感じました」

この地で受けた印象そのもの、経験したすべてが後に絵画作品として表現され、さらには連作となる今回のウニカとなりました。

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コペンハーゲン本店での展示風景。油彩やエッチングの技法を活かし、多様なタッチで描かれるピアの絵画作品同様に、ウニカも豊かな色合い。

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絵画作品では絵の具を何十にも塗り重ねることで、「光」の表現を試みているピア。「私は、色というよりも、光を扱っている」とも述べていました。ウニカ コレクションでは陶磁だからこそ表現できる「光と色」の表現が試みられていることを感じます。

陶磁器の表現は絵画とは異なります。素地に絵付けを行い、釉薬を施して焼成するアンダーグレイズ技法では用いることのできる色の数も限られます。しかし、焼成するなどの制作過程でそれらの色は微細に表情を変え、ポーセリンならではの豊かな色彩と階調をもたらすことに。施される金彩、さらにはそれぞれ異なる質感もユニークピースの魅力です。

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191107-unika-06.jpg「2019 UNIKA by Royal Copenhagen: Pia Andersen」。

ところで、今回のウニカをはじめ、ロイヤル コペンハーゲンから発表されるコレクションに出会うたび、自然に対する同社の「心」を感じるのは私だけではないでしょう。

夏の話に戻ってしまうのですが、「ハウ」(HAV)シリーズを紹介する展示も同様でした。世界的に活躍するアーティスト、山本 基さんの作品とともになされていたお披露目の場の様子も、デザイン・ジャーナル読者の皆さんにお伝えしたかったひとつです。

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山本さんの「波打ちぎわの泡」の作品とともに新シリーズ「ハウ」(デンマーク語で「海」)が紹介された展示の風景。会場に入った瞬間、圧倒されてしまいました。私が今年目にした多数の展示のなかでも特に印象的だった展示のひとつです。

会場は東京ミッドタウン内にある21_21 DESIGN SIGHT GALLERY 3。安藤忠雄さんの設計となる建物内に山本さんの作品が広がっていました。山本さんが作品で用いているのは一貫して塩ですが、この波打ちぎわも塩を素材として、手で描かれたものです。

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広島県尾道市生まれの山本さん。ハウのテーマである北海とは異なる日本の風景を、と尾道の対岸となる向島の穏やかな波打ちぎわを表現したそう。心を向けるのは「見えそうで見えない海の底」。「泡の一つひとつは些細な日常の風景であり思い出。忘れてしまいがちな日常のできごとをもう一度思い起こしたい、との気持でうねりを表現しました」

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「ハウ」シリーズは建築家ビャルケ・インゲルス、デザイナーのラース・ラーセン、イエンス・マーティン・スキブステッドが結成したデザインユニット「キビシ」のデザイン。

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ピア・アンダーソンが手がけたウニカのコレクションに話を戻しましょう。ロイヤル コペンハーゲン 丸の内本店での展示は11月12日(火)までの開催です。

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「グリーランドは空がどこまでも澄んでいるので、海を越えてずっと遠くまで、見渡すことができます。また、海が私たちの心をどれほど強く自然へと向かせ、氷山は詩の一節であると思わせるのか。それは、氷山が留まることなく動いては、新たな場所をつくり続けているからなのです」

留まることのない自然とともに私たちは生きていて、日々の時間もまた自然の営みと切り離せません。それら自然の存在について、あるいは自然との関係を築きながら生きていくことの意味についてなど、さまざまな思いを巡らせるきっかけもくれるウニカコレクション。デンマークから届いた10点以上の作品を前にしていると、ピア・アンダーソンの心に刻まれた雄大な風景や北の地の光が広がっていくように感じました。
 

「2019 UNIKA by Royal Copenhagen: Pia Andersen」
期間:10月31日(木)〜12月上旬
場所:ロイヤル コペンハーゲン 丸の内本店
東京都千代田区有楽町1-12-1 新有楽町ビル1F
休)11月11日(月)
www.royalcopenhagen.jp
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