アラビア窯の作家、ヘイニ・リータフフタ。
フラワーアーティストとコラボレーション。

「フィガロ」北欧特集号にも登場していたフィンランドのセラミックアーティスト、ヘイニ・リータフフタ。1月30日より伊勢丹新宿店で「The Innocent Art〜ヘイニ・リータフフタ×GENTE 並木容子」が始まります。「花」をテーマに、フラワーアーティストの並木容子さんとのコラボレーション。ヘイニの新作も登場し、うつわやジャグなどに花を生けるヒントも紹介されるようです。楽しみですね。

130129_design_01.jpgPhoto: Noriko Kawakami、取材協力:CASE gallery

その準備もあわせて、昨年、来日していたヘイニ。今回はそのときに語ってくれた自身の制作についての話を紹介しましょう。ヘルシンキの名門陶磁器メーカー、アラビアが設けたアート・デパートメント(アート部門)の所属作家では最も若い彼女。まずはアラビアに工房を持つきっかけから、うかがいました。

130129_design_02.jpg「Art Plate(アート・プレート)」。Photo: Courtesy of CASE gallery(他ヘイニ作品も)


130129_design_03.jpg「Lintu(リント)」。


「ヘルシンキにあるアラビアのアート部門に所属している作家は、現在8名います。アラビア本社の9階にアート部門があって、作家のスタジオがそれぞれ設けられているんです。フィガロのこのコラムにも登場しているFuji (石本藤雄さん)の工房は、私のスタジオの隣ですよ!」

130129_design_04.jpgアラビア、アート部門のメンバー。石本藤雄さんは右手前に。Photo: Courtesy of CASE gallery

130129_design_05.jpgアトリエで。Photo: Courtesy of CASE gallery

「アラビアで制作を始めたのは1999年、アートスクールの学生だったときに、アラビアがデザイナーを募集していることを友人から聞いたんです。アラビアの最初の返答は『あなたはまだ若いし、経験もないから』というものでしたが、研修生にしてもらえ、学校と並行してアラビアに通う毎日を過ごしていました」

「その3年後にはゲストアーティストとして工房の一部を使わせてもらえるようになり、アラビアの所属作家となったのは2003年。アートスクールの卒業制作もアラビアで制作し、その後、製品化されています」

アラビアの「Runo(ルノ)」シリーズはヘイニの繊細な世界が表現されていて、日本でも人気です。

130129_design_06.jpg「Runo」シリーズから。

「アラビアでは、作家が工場ととてもよい関係を築いていて、色や表現の研究を思う存分できるんです。私も、さまざまな手法を応用するなどして、実験的な作品にとりくみたいですね。柄はもちろん、色も大切。アラビアには、独特のブルーをはじめ、色に関しても伝統から生まれた表情が蓄積されてきましたね」

「陶磁器で焼きあがる色は釉薬そのものの色とは違います。アラビアでは作家がイメージした色を工場が調合してくれ、そのなかで、私のカラーパレットを整えることができました。制作では鮮やかな色が好きで、私はピンクの服を着ることはないのですけれど、作品で遊び心を表現したいときにはピンクを用います。そして濃い赤。紙に印刷されるのとはまた違う表情で、生き生きとしていて、赤もよく使いますね」

130129_design_07.jpgアラビアの窯ならではの色彩、ヘイニの美意識。「Art Plate」。

130129_design_08.jpgヘイニらしい色と柄の「Helmi Lamp(ヘルミ・ランプ)」。ヘルシンキ芸術デザイン大学(現:アアルト大学)修士課程の卒業作品で、アラビアから商品化されています。

アラビアの募集を目にするずっと前、セラミックアートの世界に進むきっかけは、意外や意外、家族とともに暮らしていたアメリカ西海岸時代のことだそうです。

「父の仕事の関係でカリフォルニアに暮らしていた中学時代、美術で専攻した陶芸コースの先生から大きな影響をうけました。当時つくったのが、家のオブジェ(笑)。サンフランシスコの丘に建つ家をイメージしたもので、屋根をはずせば容器として使えるようにして、タイルの柄も細かく表現したんです......その後、家族とフィランドに戻った後に専門学校で陶芸を勉強し、さらに芸術大学で陶芸を専攻しました」

「セラミックアートに向きあいながら、多くの作家の活動に学んできました。影響を受けたひとつに、1970年代にアラビアのアート部門に所属していたタピオ・ウリ・ヴィーカリがデザインした鍋があります。母の時代のもので、今は新しいものも出ていますね。フィンランドのデザインソサイエティはそれほど大きくないんです。皆が知り合いですし、多くの先輩たちから影響を受けているといえるかもしれません」

そうした巨匠との共作も。カイ・クランクの「Teema(ティーマ)」をはじめ、歴史的なデザイナーがつくったスタンダードなフォルムのテーブルウェアに絵を描くシリーズにも関わっているヘイニ。「機能的なデザインとアートの接点を探る作品」と彼女、まさに北欧デザインの醍醐味ですね。 

130129_design_09.jpgカイ・フランクの「Teema」にヘイニが絵付けしたもの。

「私自身の制作では"シンプルなフォルムに表現を加えていく"発想が基本ですが、なかには自然界から選んだフォルムもあって、キノコはそのひとつです。そして、六角形の『Heksagons(ヘキサゴン)』。テーブルウェアとして食卓で使ってもらえることはもちろん、床や壁面を覆うように並べることで、巨大なオブジェもつくることができます」

130129_design_10.jpg「Mashroom Tray」。

130129_design_11.jpg「Mashroom」。

130129_design_12.jpg「Heksagons」。

「セラミックアートの魅力は、制作を通して常に何かを探っていけることだと思います。それも、色が加わり、かたちが加わり......大きな喜びであり、醍醐味です。窯で焼くことでの表情の楽しみもありますね」

「アラビアの窯はトンネル窯と呼ばれるもので、トンネルを通っていくようにゆっくり作品が移動しながら焼かれていくんですよ。いつも期待を胸に作品を窯に入れるのですが、満足できる作品を実現できそうなときは、窯に入れるときに、なにか予感がするんです(笑)」

130129_design_13.jpgパートナーのミッコ・ヤーベンパーと。ミッコが手にしているのは、彼の会社JALO HELSINKI(ヤロ・ヘルシンキ)の火災報知機。布に覆われています。デザインはハッリ・コスキネン。Photo: Noriko Kawakami

この春、ふたり目のお子さんを出産予定だというヘイニ。「ひとり目の子どもが生まれたときには、出産当日まで工房で制作に没頭していた(笑)」そう! 「作品をつくっている時間が楽しいし、とてもリラックスできるので......(笑)」。すてきな笑顔を見せてくれました。

「残念ながら伊勢丹の展示にあわせての再来日は難しいのですが、展示をぜひご覧くださいね!」。ヘイニとパートナーのミッコ・ヤーベンパーから、フィガロ読者へのメッセージをいただきました。

130129_design_14.jpg「Art Bowl Dahila(アート・ボウル・ダリア)」。


「The Innocent Art 〜ヘイニ・リータフフタ×GENTE 並木容子〜」
伊勢丹新宿店 本館5F「ザ・ステージ#5」、1月30日(水)〜2月12日(火)
新作フラワーベースの紹介のほか、ポットやジャグ、ボウルなどのヘイニ作品に花を生ける提案も。
ヘイニのアート作品展示は2月25日(月)まで開催されます。
http://www.isetan.co.jp/icm2/jsp/store/shinjuku/index.jsp (伊勢丹新宿店)


今回掲載したヘイニ作品の問い合わせ先:TEL 03-5452-3171(CASE gallery)

Noriko Kawakami
ジャーナリスト

デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。

http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

フィガロワインクラブ
Business with Attitude
キーワード別、2024年春夏ストリートスナップまとめ。
連載-パリジェンヌファイル

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories