ひき続き......海や島とアート!
「瀬戸内国際芸術祭」開幕です
デザイン・ジャーナル 2010.07.20
前回記事で少しだけ触れた「瀬戸内国際芸術祭」。先週末がオープニングセレモニーで、昨日ついに開幕。仕事で東京を離れられなかった私は、開幕時の盛況ぶりを関係者の皆さんよりうかがいつつ、さていつ行こうか?! と旅の計画をたてているところです。
今回が初の国際芸術祭、それも複数の島々が舞台という、他に類を見ない大規模なアートのプロジェクト。直島、豊島(てしま)、女木島(めぎじま)、男木島(おぎじま)、小豆島、大島、犬島の7つの島と高松港周辺が会場となっています。
ある地域を舞台とする大規模な国内の芸術祭といえば、新潟県、越後妻有での「大地の芸術祭」を思いおこしますが(こちらも私は大好きです)、今回は会場と会場が「地続きでない」ところがおもしろい。
島々の間にすてきな"余白"のようにある海をフェリーで移動しながら、それぞれに個性ある島を訪ね、その場のために制作された作品に触れる......芸術祭のタイトル通り、これは「冒険」。「1日の鑑賞は、大きな島なら1島、小さな島なら2島が目安でしょう」とは事務局のアドバイスですが、さてどう移動するか、プランの段階からワクワクします。
実は先日、李禹煥美術館にうかがった際、短時間でしたが、豊島も訪ねてきました。海辺に建てられた小さな美術館ではクリスチャン・ボルタンスキーが作品の最終調整に没頭されていて、その様子も少しだけ拝見......。心臓音のアーカイブ、という彼らしい作品。
森 万里子さんの『トムナフーリ』は、え、ここを登っていくの? と驚かされるロケーションに。内藤 礼さんの「水の作品」と一体になった、西沢立衛さん設計の豊島美術館(常設)は秋の完成に向けて建設が進行中。こちらも本当にユニークな構想です。
現地レポートでは、後日改めて行いますが、本日は作品の一部ご紹介として、開催事務局から開幕直前にお借りした写真を紹介します。まずは女木島、鈴木康広さんの作品から。
鈴木さんからだいぶ前、この作品案を聞かせていただいたことがあっただけに、その構想が実現したことに私も感無量です。ファスナーの留め具に見えるように改造された船。海上を進むと、海をファスナーで開いていくかのように見える、という鈴木さんらしいポエティックなもの。東京残留組の私、ニュースで進水式の模様を目にしました。
そしてこちらは、お隣、男木島でのプロジェクト。旧公民館の広い空間を会場に紹介されている一枚の大きな絵。大岩オスカールの『大岩島』です。
他にも、島々の建物をアーティストがどう変容させるのかが、興味深いところ。塩田千春の作品は、公民館だった建物で。建物中央に登場するトンネル状の作品を形づくるのは、解体された古い家々の窓や扉。
本芸術祭の総合ディレクターを務める北川フラムさんのオフィス、アートフロントギャラリーの鶴谷ゆうみさんに、だいぶ前にご紹介していただいたトビアス・レーベルガーも、今回の参加作家のひとり。彼は空き家に挑戦します。
「その後トビアスは、ヴェネチア・ビエンナーレで金獅子賞に輝くなど、すっかり大物アーティストですね!」。皆で楽しく食事をした時間を思いだしながら、先日、鶴谷さんとそんな話をしたところでした。彼は今回、豊島の空き家を改装してレストランにする作品を。
話題の作家が瀬戸内に大集合している今年。夏の旅でも秋の旅でも、アートと豊かな自然(あわせて瀬戸内のおいしい食も)堪能できること、まちがいありません。
皆さま、どうぞひき続きすてきな夏を!
瀬戸内国際芸術祭「アートと海を巡る百日間の冒険」
10月31日まで
瀬戸内国際芸術祭総合インフォメーション
TEL 087-813-2244
http://setouchi-artfest.jp/
Noriko Kawakami
ジャーナリスト
デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。
http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami