うつわディクショナリー

うつわディクショナリー#15 阿部春弥さんのうつわ、花爛漫

うつわディクショナリー

食卓を彩る花のうつわ

たわわに重なる花びらを描いた豆皿や秋色の輪花鉢など、これからの季節にぴったりの花モチーフのうつわが気になって、陶芸家の阿部春弥さんの個展を訪ねました。
 
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—花モチーフを秋を感じさせる落ち着いた色味でというのは、うつわだからこそできる花の表現ですね。中でもカメリアの花のような豆皿にひかれます!
阿部:ファッションが好きな方に多い気がするんですが「これはカメリアですか?」と聞かれること、よくありますね。カメリアは椿ですが、これは牡丹の花がモチーフなんですよ。牡丹は、古くから焼物の絵柄や装飾に使われてきたモチーフで、僕はそれを陽刻(ようこく)という彫りの技法で表現しています。
 
—陽刻とは、どういうものですか?
阿部:浮彫(うきぼり)とかレリーフというと分かりやすいかもしれません。この豆皿も、花びらの線が浮き上がって見えますよね。牡丹の文様を彫りこんだ石膏型に、ろくろで豆皿の形にひいた土を押し当てることで浮彫を出すんです。石膏型から外す瞬間は、日々の作業の中で一番ワクワクする時。土の状態は天候や季節によって変わるので、同じ型を使ってもその時々で文様の出方が異なるんです。
 
—同じく陽刻文様の大皿もありますね。文様のインスピレーションは、どこから?
阿部:古染付など焼物の「絵付け」の柄を参考にすることが多いです。「彫る」というよりは「描く」ような気持ちで彫刻刀を動かしていると思いますね。花をどこに配置するか大体の位置を決めたら、あとはフリーハンドで。決め込みすぎず、風にそよぐ花のようなやさしい雰囲気を出したいんです。
 
—彫りがあるところとないところでは、釉薬の色の濃さも違う。手作り感が伝わってきます。
阿部:手作りのうつわについて、取り扱いが大変だと感じたり、緊張するという人もいると思うんです。工業製品よりはもろいのは事実ですし、扱いづらいことがあるのも本当です。でも扱いづらいものを身近に置くと、それがあることを意識するようになる。他のものよりちょっと意識を持って使うことが「愛おしい」とか「大切」という気持ちを芽生えさせて、行動が丁寧になったり、生活が変わっていったりする。ものがあふれている現代にあえて手作りのものを使う意義は、そういうところにあるんじゃないかと思うんです。
 
—阿部さんは、SNSで、ろくろを回す様子や焼く直前の土のうつわの写真を積極的に公開していますが、それも使う人へのメッセージのひとつですか?
阿部:手作りのうつわといっても目の前にあるのは完成したうつわですし、特に僕が作っている磁器は工業製品の中にもたくさんあります。お客様にとっては、どこがどう手作りなのか、なかなか実感が沸かないと思うんです。手作りの品物を実感を持って使ってもらえるように、制作風景を公開するようになりました。
 
—お父様も陶芸家だそうですね。
阿部:生まれ育った長野県上田市は焼物の産地というわけではありませんが、父が陶芸家なので焼物はいつも身近にありました。長野は、森が多く自然素材に恵まれていることから、ものづくりに携わる人が多い土地です。「クラフトフェアまつもと」もありますしね。いまの時代は、日本のどこにいても焼物のための土が手に入るんです。僕は、熊本の天草というところの磁器土を取り寄せて作陶しています。産地の伝統や慣習に縛られずに自分のスタイルで自由に作れるからこそ、普段からお客様と繋がって手作りのものへの思いや使い方を共有することで、いまの生活に合う日常のうつわを作っていけたらと思っています。
 
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今日のうつわ用語【陽刻・ようこく】
浮彫(うきぼり)、レリーフともいう。周辺を削って文様部分を高くする、型に入れて文様を浮き上がらせる、スポイトで立体的な線を施す(イッチン)といった方法がある。

瑠璃色の輪花鉢は野菜の色をなんとも美味しく見せる。淡瑠璃輪花5寸鉢¥3,240/ライオンポタリー

取り皿にちょうどいいサイズの輪花皿は土っぽい焼物にもあう柔らかい白。白磁輪花5寸皿¥2,160/ライオンポタリー

阿部さんらしい動きのある陽刻文様。黄磁陽刻牡丹文7.5寸皿¥5,400/ライオンポタリー

カメリアのコサージュのような豆皿は実際には牡丹の花がモチーフ。淡瑠璃牡丹豆皿¥1,620/ライオンポタリー

干支をモチーフにした箸置きシリーズから、呉須錆箸置き 鳥¥1,080/ライオンポタリー

そばちょこの文様には石膏型は使わず、直接手で彫りこんでいく。¥3,240/ライオンポタリー

【PROFILE】
阿部春弥/HARUYA ABE
工房:長野県上田市
素材:陶器(天草土)
経歴:愛知県窯業高等技術学校を卒業後、岡山県の備前焼の陶芸家・山本出氏に師事。2004年より生まれ育った長野に戻り築窯し「三窯」として独立する。ひとつひとつ積み重ねていくという思いを込めて、横棒を3つ重ねた「三」の字を用いたという。

ライオンポタリー
東京都目黒区中央町2-35-18
Tel. 03-6331-0708
営業時間:13時〜19時
定休日:日、月
http://www.lion-pottery.com
✳商品の在庫状況は事前に問い合わせを

『阿部春弥展』開催中
会期:2017年9/23(土)〜9/30(土)

photos:TORU KOMETANI realisation:SAIKO ENA

衣奈彩子

ライター、エディター

「フィガロジャポン」編集部を経て独立。うつわを中心に工芸、インテリア、雑貨など暮らしにまつわる記事を執筆。うつわと食を愉しむ提案をするUTSU-WA?主宰。著書に『うつわディクショナリー』(CCCメディアハウス刊)、『料理好きのうつわと片づけ』(河出書房新社刊)。編集した書籍に『どっちつかずのものつくり』(安藤雅信著・河出書房新社刊)。http://enasaiko.com

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