うつわディクショナリー食堂 #4 宇田津 鮨の折詰をあの人のうつわで

うつわディクショナリー食堂#4へようこそ

うつわディクショナリーでこれまで紹介した作家さんのうつわ(著者私物)を使いながら楽しむ「うつわディクショナリー食堂」。気になるうつわを見つけたら作家名をクリック!インタビューページに飛び込んで、親しまれるうつわが生まれた背景を知っていただけたら嬉しいです。ステイホームが続く中、うつわ店やギャラリーはオンラインショップを充実させているのでチェックしてみてください。今回は、お寿司の注目店から。(衣奈彩子)
 
繊細な寿司の味を
静かなうつわの多重奏で楽しむ。
 
今回、テイクアウトしたのは、昨年2月、中目黒にオープンしたばかりの「宇田津 鮨」。このお店、住宅街にひっそりと佇み看板もありません。格調高い古木戸だけが目印。戸を引いて路地に迷い込むように進むとモルタル仕上げのモダンな空間に誘われます。壁には現代美術も。通常は、店内でのおまかせコースが基本ですが、いまは、お土産として定番のバラちらしや握りに加え、お家でできる手巻セットなど楽しいメニューもテイクアウトで提供しています。
 
ある日、インスタグラムを見ていたら、テイクアウトに「限定の鯖の棒鮨」が登場。ほんのりピンクの棒鮨を前に、私はすぐさま、岡さつきさんのお皿を思い浮かべてしまい、うつわありきで、棒鮨を予約してしまいました。お皿の誘惑、恐るべし。もちろんお寿司に日本酒は欠かせないので「お摘みセット」もプラス。

 
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鯖の棒鮨には、
岡さつきさんの紅安南の八角皿を。
 
鯖の棒鮨は、「宇田津 鮨」さんオリジナルのガリと、広島県のハーブ農園「梶谷農園」の花ピクルスが、半分ずつ挟んであるというんです。断面から見えるピンク色のピクルスがなんともかわいく、酢飯にもすこし色がある。これに合うのは、岡さつきさんの安南手しかない。そんな気持ちで盛り付けてみると、お寿司、釉薬のベージュ、淡い草花柄がちょうどよいグラデーションを作って、テーブルの真ん中でメイン料理の顔になりました。盛り付けた料理をふちどるようにさりげなく施された岡さんの絵付け、さすが。
 
「お摘みセット」は、ウドとミョウガの和え物や、巻物、鮪の燻製、卵焼き、タコやカラスミなどの珍味。竹箱の中の盛り付けがあまりに綺麗なので、崩すのがもったいなく、取り皿を添えていただくことに。
 
我が家で「使いやすい取り皿」の筆頭は、伊藤聡信さんの四方皿。ろくろで成形してから正方形に切っているので適度なカーブがありながら、丸いお皿よりコンパクト。ちょこちょこ盛り付けたい時や、焼き魚など、主に和食の献立で活躍しています。隣には、同じく伊藤さんの印判の色絵小皿。ラフな絵付けなのにハレの室礼にも合う、魅力的なうつわです。
 
日本酒の杯は、
磁器も陶器もいろいろ混ぜて。
 
お家で高級店のつまみとお寿司ですから、旨い日本酒を用意しないわけにはいきません。酒器は山本亮平さんの染付の磁器と、新見麻紗子さんのほんのりピンクな磁器、ほかに陶器もいくつか。磁器と陶器では、お酒の味も変わるので、両方並べて飲み比べるのは、食事と同じくらい味わいのある嗜みです。今日のお酒は栃木の「仙禽」。口にいれた瞬間、ふわっとやわらかい果実味を感じますが、その後しっとりと穏やかな味におちついていくので、今回の、ちょっと華やぎのあるおつまみによく合いそうです。
 
どれも食材が持つ食感の楽しさと塩加減などの塩梅が絶妙で、お酒が進む味。チビチビやりながら、楽しい時間が流れます。
 
鯖の棒鮨は、しっかりとしまった鯖に梶谷農園の花ピクルスが爽やかな酸味をプラスしてとても美味しく、パクパクと食べ進めてしまいました。「宇田津 鮨」では、普段からコースの中でも、梶谷農園のハーブを用いた「ベジロール」や「季節のハーブ巻き」を出しているそう。次回、お店でいただく日を楽しみに。
 
ひとり分のテイクアウトならこちらがおすすめ。
 
ひとり分なら「鯖の棒鮨」だけでも十分です(限定なので事前に必ず確認を)。おうちに帰ったら、できれば酔いが進む前に、お吸い物を用意しておくことをおすすめします。岡さつきさんの安南手にも、伊藤聡信さんの色絵にもあう漆器といえば、中野知昭さんの深い飴色のお椀。溜塗り(ためぬり)で仕上げています。黒や赤よりも焼物に合い、使い続けることによる風合いや色の変化もよく感じられる漆だなと思います。お寿司は、読書しながらでも食べられるから、家の中のお気に入りのスペースにスタンバイして、リッチな時間を楽しんでも。
 
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【PROFILE】
宇田津 鮨
2019年2月にオープンした隠れ家的鮨どころ。普段はおまかせコースのみだが、いまは、テイクアウトでバラちらし、握り鮨(12貫)、太巻き、手巻きセット(1人前)、お摘みセットなどを提供。

https://www.instagram.com/udatsu.sushi/?hl=ja
テイクアウトの注文は、インスタグラムのDMかお店(050-3550-5938)に。
受け取りの場合は来店2時間前までに連絡を。

photos:TORU KOMETANI realisation:SAIKO ENA

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