初夏のスペシャリテ! 麗しき香りのモーヴな花々を飾る
〜花の女王・バラとシャクヤクの美しいあしらい 前編〜

花のある週末 2015.05.22

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日増しに濃くなる緑のまばゆさに心洗われる五月、初夏に向かう季節に最も美しく咲く花は、花の女王・バラ。
花屋さんでは一年中手に入るバラですが、旬の季節はまさに今! 全国各地で華やかなバラのイベントが開催されていますね。丹精込めて育てた庭先のバラを楽しんでいらっしゃる方も多いことでしょう。

遥か昔から人々は、バラの美しさ、麗しい香りに熱狂してきました。クレオパトラの寝室の床一面に敷き詰めたバラの花びら、マリー・アントワネットのバラをたずさえる肖像画、モダンローズの生みの親・ナポレオン妃ジョセフィーヌなど、時の権力と伝説的な女性にはバラにまつわる逸話がたくさんあります。ローマ時代から「バラの下で」という言葉は"秘密"を意味し、棘のあるバラの美しさにはどこか背徳の香りもして......そのあやうさがまた魅力でもあります。

バラと一言でいっても、ガーデンに咲くガーデンローズと、花屋さんに並んでいるバラ(切花用に生産されるバラ)とは栽培性など特徴が異なり品種も違います(極稀に両用できる品種もあります)。バラは人と関わってきたその長い歴史の中で、種類が何百何千にも及び、その分類や系統も複雑ですのでここでは深く触れませんが、ざっくりとご説明しましょう。

1867年にナポレオン妃ジョセフィーヌが作出した「ラ・フランス」以降生み出された品種を「モダンローズ」といい、それ以前に栽培されていた品種を「オールドローズ」といいます。「オールドローズ」は芳香豊かなことが特徴で、中には野生種も含まれ、モダンローズの交配の元になっている品種群になります。いずれにしても私たちが現在ガーデンや花屋さんで出会うバラのほとんどが「モダンローズ」になります。さらに1960年代に英国の育種家デヴィット・オースティン氏が「モダンローズ」に「オールドローズ」の香りの特徴を融合させた「イングリッシュローズ」の作出に成功し、バラの世界はひときわ華やかになっていきます。
この20年ほどの切花用のバラのトレンドを振り返ると、よりナチュラルな印象のバラへの回帰、と言えるでしょう。かつては「高芯剣弁」といわれるバラ(高島屋の包装紙のバラをイメージしてください!)が主流だった切花用のバラ、一般的に花持ちがよくないとされてきたバラは、長持ちさせる品種改良の過程でバラ本来のしなやかさや香りを失っていきました。茎が真っ直ぐでカチッとした印象のバラが高く売られる一方で、ふんわりこぼれるように咲くイングリッシュローズの趣や、オールドローズのごとく黄金の花芯をのぞかせるバラ、古代から語り継がれるダマスクローズの香りの再現に人々は心を奪われていったのです。

今はそんなトレンドも一巡して、高芯剣弁の凛としたバラも、丸い花弁のカップ咲きのバラも、それぞれの美しさを追求して共存しているように思います。そしてバラがバラである以上、「香り」は永遠のテーマともいえるのです。

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今日ご紹介するアレンジに使用しているバラも、まさに「香りのバラ」。
モーヴ系の色からこぼれる甘やかな香りにうーーっとり......!!
バラの香りは、女性ホルモンに働きかけ女性を美しくする! という有名な説がありますが、この香りに触れると、幸福感に満たされて、本当に美しくなれそうなエレガントな気分になるから不思議です。

本来バラには強弱こそあれ芳香はあるとされますが、切花として茎をカットされた後もその芳香が続くことが希少とされます。せっかくバラを贈ったり飾ったりするなら、この至福の香りをぜひ楽しんでいただきたいですね♪

バラには、1本の茎に1輪の花が咲くスタンダードタイプと、1本の茎が枝分かれし複数の花をつけるスプレータイプ=「スプレーバラ」があります。スプレーバラ、そのままでももちろん素敵ですが、枝分かれしている節のあたりをカットし、数本にばらして使用すると、様々な使い方ができます。小さな花器に分けて家の中のいろいろな場所でバラを楽しむこともできますし、これからご紹介するアレンジのように、1つの花器の中で咲いているものからつぼみまで様々なバラの表情を魅せることもできますよ。

バラには様々な色や咲き型の品種がありますので、バラだけを集めて飾っても十二分に美しいですが、今回はさらに季節感を楽しむために、今の季節だけの香りの花「ライラック(リラ)」の花をあわせたところ、何となくノスタルジックな雰囲気に。バラとライラックの香りのハーモニーも素敵です!
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【香りのバラとライラックのアレンジメント】

<材料>
(画像右から)
スプレーバラ(リベルラ) 1本
バラ(ウィッシング)   2本
ライラック(枝モノ)  1本

花器(今回使用した器は15cm角)
切花鮮度保持剤※ 
(最近は小袋をつけてくれる花屋さんが増えています)

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<作り方>
1. 花器に水をたっぷり入れ、切花鮮度保持剤を分量どおりに加えます。

2. スプレーバラとライラックを小分けにカットします(カットする場所は画像ご参照ください)。下葉が水に浸からないように、下の方の葉は手で取り除きます。

3. ライラックの花と葉の枝を左右に入れ、交差する茎が花留めの役割をするようにします。

4. 中央にバラを2本活けます。花に少し高低差をつけるとそれぞれの表情が生きます。

5. 小分けにしたスプレーバラを間に挿していきます。咲いているものを器の縁近く、まだつぼみのものは軽やかに上のほうに挿します。つぼみの枝は少し長めに加えるとアレンジに動きが出て素敵です。

※花の本数が少ない場合は、花器の縁から花がこぼれ咲くように活けるとボリューム感がアップします。

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アレンジに使用した「ウィッシング」という淡いピンクのバラは、咲き進んでいくと次第に花の中央が4分割されたような「クォーターロゼット」という咲き型になります(画像下左)。クラシカルな花姿と香りはオールドローズの趣、優しさの中にも選ばれし高貴な佇まいを感じます。

また、花屋さんで手に入りやすい「香りのバラ」で、最もポピュラーな品種は「イブ・ピアッジェ」というオペラピンクの大輪のバラになります(画像下右)。アレンジに使用したバラも同様ですが、青みがかったピンク、ピンクでもやや紫に振れたモーヴ系の色合いのバラたちは、ほぼ裏切ることなく麗しい香りをはなちますので、花屋さんで香りのバラを探す時のご参考に!

もちろん、白や黄色、オレンジ系のバラでも香りのバラはいろいろありますので、花屋さんではご遠慮なくバラの中に鼻をつっこんで、エレガントにくんくんしてくださいませ(笑)。

バラの香りやその効能のお話は、次回改めてご紹介させていただきますね。

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そしてそして、この季節に忘れてはならない花は「シャクヤク(芍薬)」!!
英名をPeony(ピオニー)といい、欧米でも熱狂的に愛されている花です。甘く優雅な香りと、瀟洒な花姿、そこはかとなく漂うオリエンタルムードも魅力です。シャクヤクのバックストーリーは次回にご紹介させていただくとしまして、今日は飾り方のヒントをご紹介します。

シャクヤクオンリーで飾って、ゆっくりと咲いていく様子を楽しむのも良いですし、和洋どちらの花材とも相性が良いので、インテリアやお料理のテーマなどにあわせて合わせる花を考えるのも楽しいですよ♪

おすすめは、初夏の瑞々しいグリーンとあわせること。写真は、「利休草」という明るいグリーンの葉と、「リョウブ」という白い花をつける、こちらも明るいグリーンの葉が特徴の枝モノになります。シャクヤクの花弁がもつ透明感やしっとりした質感には、同じ質感をもつ花やグリーンをあわせると、今の季節をそのまま切り取ったような瑞々しさが表現できます。今回はさらに、ランの花「バンダ」をあわせて、よりオリエンタルムードを強調したスタイリングにしました。

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【シャクヤクを美しく咲かせるポイント】

1. つぼみがまだ硬い時には、つぼみの表面に花の蜜のようなものがついています(画像下・花の表面のテラテラしたもの)。柔らかい布巾を濡らして蜜を優しく拭きとるか、もしくは軽く水で洗い流します。

2. 花器にたっぷりの水を入れ、切花鮮度保持剤を分量どおりに入れます。

3. 下葉を取り除き、花器の水に葉が浸からないようにします(雑菌の原因になるので)。花のまわりにある葉はデザイン的に残してもOKです。

4. 茎はできるだけ斜めにカットします。

5. 水は濁ってくる前に、できるだけ頻繁に替えてあげましょう。また、水替えのタイミングで、茎も1〜2cm切り戻してあげるとベターです。

※エアコンの風が直接あたる場所や直射日光は避けて飾ってください。

※個体差や置いてある場所の環境にもよりますので一概には言えないのですが、私の経験上では、画像くらいのつぼみの状態からはだいたい3〜4日くらいで満開になっていきます。

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シャクヤクは初夏だけのスペシャリテ! 今週のウィークエンドはぜひ、旬のシャクヤクの甘い香りと目を見張るような豪奢な花姿にときめいてくださいね♪♪ 来週もバラとシャクヤクをメインに初夏の花々のアレンジをご紹介します。

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