4600年以上前から続く、ジュエリーと身体の関係とは。

特集

ジュエリーと人間の身体の歴史を壮大なスケールでとらえた展覧会が、ニューヨークのメトロポリタン美術館で開催中。ノンフィクション作家・ジャーナリストの朽木ゆり子が、この画期的な展覧会の見所を紹介する。

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会場に入ると、王冠やヘアオーナメント、イヤリング、ノーズリング、ネックレス、ブローチ、ベルト、指輪、アンクレット、トウリングなど、身体のあらゆる部分を飾るジュエリーが宙に浮かんだように展示されている。 
© The Metropolitan Museum of Art, New York

紀元前から現代までのジュエリーを網羅。

ニューヨークのメトロポリタン美術館で、『Jewerly: The Body Transformed(ジュエリー: 変容する身体)』展が開催中だ。展示作品は約230点で、ほぼすべてがメトロポリタン美術館の所蔵品。紀元前2600年から現代にいたるまで、制作年代もバラエティに富んでいる。ティファニーやアレキサンダー・マックイーンなどの作品もあり、幻想的な展示が美しい。

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1934年にエルザ・スキャパレリ(1890〜1973年)がデザインした握った手のベルト。シュルレアリスムの影響が感じられる。
Brooklyn Museum Costume Collection at The Metropolitan Museum of Art, Gift of the Brooklyn Museum, 2009; Gift of Arturo and Paul Peralta-Ramos, 1955 (2009.300.1227)

本展はタイトルからもわかるように、ジュエリーを纏うことで、人間がどんなふうに変身するのかを探った展覧会だ。ジュエリーを着ける5つの理由から「The Divine Body(神の身体)」、「The Regal Body(王者の身体)」、「The Transcendent Body(超越する身体)」、「The Alluring Body(誘う身体)」、「The Resplendent Body(輝く身体)」と5セクションで構成されている。

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神と人間を、ジュエリーが繋ぐ。

「神の身体」セクションで展示されるのは、主として古代世界の宝石と宝飾品。身に着けることで神を体現したり、死後の世界を手に入れたりすることができるジュエリーの数々で、古代エジプト、古代メソポタミアの国家「ウル」、青銅器時代などの作品が並ぶ。

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エジプト新王国時代(第18王朝 トトメス3世時代 紀元前1479〜1425年頃)の豪華なネックレスのセットはトトメス3世の妻とともに埋葬されたもの。緑石と金のスカラベは長さが6.7cmある。
Necklace and String of Beads: Egyptian Blue; Scarab: Green stone, gold 
Necklace: L. 41 cm (16 1/8 in.); String of Beads: L. 21 cm (8 1/4 in.); Scarab: L. 6.7 cm (2 5/8 in.); 
W. 4.8 cm (1 7/8 in.); D. 1.6 cm (5/8 in.); L. (scarab with wire) 74.3 cm (29 1/4 in.)
The Metropolitan Museum of Art, Fletcher Fund, 1920 (26.8.66,.91,.67)

「王者の身体」セクションでは文字どおり王が身に着ける宝石、そして階級や地位を誇示するジュエリーが並ぶ。イギリスやフランスの貴族や王室、メディチ家からはじまって、アフリカのベニン王国、南アメリカのマヤ文明時代などのジュエリーも展示されている。

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16世紀から18世紀にかけて、男性は自分の特権を誇示するために刀の柄や勲章などを宝石で飾った。左のガラスケースの中には豪華なペンダントのような聖マイケル・聖ジョージ勲章(頸飾)、そして金羊毛騎士団勲章を着けた男の肖像画などが展示されている。 © The Metropolitan Museum of Art, New York

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古代ギリシャ時代でも、身体をジュエリーで飾って身分・財産を誇示した。これはヘレニズム時代(紀元前330〜300年頃)のイヤリング。ギリシャ神話に登場する美少年ガニュメーデスと鷲が、金、クリスタル、エメラルドで表現されている。
Gold, rock crystal, emerald  H. 2 3/8 in. (6cm)
The Metropolitan Museum of Art, Harris Brisbane Dick Fund, 1937 (37.11.9, .10)

 

第3セクションは「超越する身体」で、ここで取り上げられているのは聖霊、神、死者などと交信するためのジュエリー。アジア、太平洋諸島、アフリカなどの作品が多い。

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インド南東部(アンドーラ・プランデーシュ州)紀元前1世紀頃の金のイヤリング(左には象、右には翼のあるライオンが見える)で、儀式の時に使われた。
Gold  Overall (each): H. 1 1/2 in. (3.8cm); W. 3 in. (7.6cm); L. 1 9/16 in. (4cm)
The Metropolitan Museum of Art, Gift of John and Evelyn Kossak, The Kronos Collections, 1981 (1981.398.3, .4)

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魅惑的な身体を彩るジュエリー。

第4セクションは「誘う身体」。身体に纏って魅了するためのジュエリーの数々が展示されている。まず、魅惑的な真珠の展示があり、ティファニーほか特色ある真珠のネックレスが並ぶ。また、江戸時代に花魁などが使った不自然なほど長く装飾のある簪(かんざし)や笄(こうがい)もジュエリーとして展示されていた。

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真珠をセクシーに纏ったアメリカ人ジャズ歌手ジョセフィン・ベーカー。1920〜30年代にパリで活躍した彼女は「黒いヴィーナス」と呼ばれた。写真はアドルフ・ド・メイヤー。 Direct Carbon Print
The Metropolitan Museum of Art, Ford Motor Company Collection, Gift of Ford Motor Company and John C. Waddell, 1987 (1987.1100.16)

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アレキサンダー・マックイーンのジュエリー担当デザイナー、ショーン・リーンがデザインしたアルミとクリスタルを使ったヤシュマック(イスラム圏の女性が被るベール)。隠すためのヤシュマックが、反対に美の境界線を押し広げる役目を果たした例だ。
Designed for Alexander McQueen (British, founded 1992) Spring/summer 2000, edition 2017 British  Aluminum, Swarovski crystal
The Metropolitan Museum of Art, Purchase, Friends of The Costume Institute Gifts, 2017 (2017.328a–c)

最後のセクションは「輝く身体」。光り輝き、人目を引き付けるためのジュエリーだ。このセクションでは、工芸的にもデザイン的にも超一流で、ダイヤモンド、プラチナなどを豊富に使って燦々と輝くジュエリーが並んでいる。メトロポリタン美術館にこれだけのジュエリー・コレクションがあったとはびっくり。

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「輝く身体」部門の展示。イタリアの19世紀の宝石師カステラーニ、ティファニー、ラリックなどの特徴ある作品、そして前衛的な作品など見ごたえのあるジュエリーが展示されている。 © The Metropolitan Museum of Art, New York

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フランスのルネ・ラリック(1860〜1945年)作の金、七宝、オパール、アメシストが使われたアールヌーボーの華やかなネックレス(制作は1897〜99年頃)。
Gold, enamel, opals, amethysts  Overall diam. 9 1/2 in. (24.1cm); 9 large pendants: 2 3/4 x 2 1/4 in. (7 x 5.7cm); 9 small pendants: 1 3/8 x 1 1/4 in. (3.5 x 3.2cm)
The Metropolitan Museum of Art, Gift of Lillian Nassau, 1985 (1985.114)

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ニューヨーク出身のアメリカ人ルイス・コンフォート・ティファニー(1848〜1933年)作、トンボの髪飾り(制作1904年頃)。金、銀、プラチナ、黒オパール、デマントイドガーネット、ルビー、七宝などが使われている。
Gold, silver, platinum, black opals, boulder opals, demantoid garnets, rubies, enamel. H. 3 1/4 in. (8.3cm)
The Metropolitan Museum of Art, Gift of Linden Havemeyer Wise, in memory of Louisine W. Havemeyer, 2002 (2002.620)

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デトロイト生まれのアメリカ人ユージーン・ピジャノウスキ(1938年〜)と、東京生まれのヒロコ・ピジャノウスキ(1942年〜)作のネックレス“Oh I am Precious #7” (1986年制作)。材料は水引とキャンバス。
Mizuhiki, canvas 10 1/2 × 25 × 1/2 in. (26.7 × 63.5 × 1.3cm)
The Metropolitan Museum of Art, Gift of Donna Schneier, 2007 (2007.384.46)

ジュエリーは美の粋を極めた工芸作品であると同時に、人間にさまざまなパワーを与える服飾品だ。この展覧会では、人間がジュエリーの持つパワーを、魔力や宗教的シンボルとして使ってきた時代から、美を強調する手段として利用するようになるまでが効果的に展示されている。展覧会場では、展示されているジュエリーが発散する不思議なパワーが感じられた。これまで何気なく着けていたアクセサリー、今後はもっとその威力を見直したいものだ。

Jewerly: The Body Transformed(ジュエリー: 変容する身体)
会期:開催中〜2019年2月24日(日)
The Metropolitan Museum of Art
1000 Fifth Avenue New York, NY 10028
tel:+1-212-535-7710
開)10:00〜17:30(月〜木、日) 10:00〜21:00(金、土)
休)12/25、1/1
入場料)一般25ドル
www.metmuseum.org

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réalisation : YURIKO KUCHIKI

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