レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校で学ぶ。その2

Paris 2018.10.29

前回紹介したように、学校の講義内容には3つの柱がある。今回は「ジュエリーの芸術史」と「原石の世界」という2つの柱について紹介しよう。

原石の世界

原石の世界は4種の講義が用意されている。宝石学の初歩を身につける「原石を知る」、宝石学に親しみ石を選別する「石を選定する」、 そして「ダイヤモンドの魅力」のパート1、パート2だ。いずれも講師ふたりによる授業で、休憩を一度挟んでの4時間コースである。豊富な内容をわかりやすい語りとビジュアルで進める講師陣のおかげで、4時間が長く感じる間もなく終わるのでご安心を。

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原石の世界の講義が行われる教室。

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2パートに分かれて、たっぷりと「ダイヤモンドの魅力」を学ぶ。

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ダイヤモンドの秘密を探るため、プロの使うピンセットとルーペが受講生ふたりひと組に用意されている。

宝石の王者だけあって、ダイヤモンドについては語るべきことが山ほど。「ダイヤモンドの魅力1 歴史と伝説」では、その神話と伝説を学ぶ。「ダイヤモンドの魅力2 科学と宝石学」では、ダイヤモンドが唯一無二の宝石である理由を探る。1では歴史と伝説を座って聞いているだけだが、2においては実技が挟まれていて、サイエンスの堅苦しさをリラックスさせつつ、ダイヤモンドの秘密を知る授業となっている。

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炭素で形成されているダイヤモンド。地下150〜250kmの深い場所で、炭になるかダイヤモンドになるかはケイ素の量、1,000℃を超える温度、数千気圧といった環境次第だ。

ダイヤモンドが主として炭素でできていることを説明する化学構造から始まり、自然が作ったダイヤモンドがいかに人間の手まで届くのか、“征服できない”という意味のギリシャ語“アダマス”を語源に持つダイヤモンドの硬度について、そして光学的特性とカット技術。この4つが講義のテーマである。講義を聞いていると、ペットの遺骨から合成ダイヤモンドを作るという荒唐無稽に思えた話の謎が解ける。なぜ15世紀以前の肖像画で王様がダイヤモンドを身につけていないのかも、ダイヤモンドがカットされるようになるのが1400年頃からと知って納得。地球から40光年離れた場所にダイヤモンドの惑星が存在する可能性を発表した研究論文への興味が深まり、そして、その昔レコード・プレイヤーの最高級針はダイヤモンド針だったことを思い出して……。人造ダイヤモンドの作り方もダイヤモンド鑑定書の読み方も知り、4時間が終わったときにはダイヤモンド博士になった気にさせる講義だ。

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GIA(米国宝石学会)が定めたダイヤモンドの4C(color, clarity, cut, carat)。その白から黄色にいたる6段階のColor(色)については、三角に折った白い紙にダイヤモンドを色順に並べる実技も。

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ピンセットの持ち方を教わり、石の不純物をルーペで見る。

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カット技術の変遷も講義される。学校の図書室にレプリカが展示されているカリナン・ダイヤモンドは、南アフリカの鉱山で1905年に採れた世界最大(3,106カラット)のダイヤモンドで、ジョゼフ・アッシャーが9個と90個の小さなダイヤにナイフとハンマーで劈開したものだ。最も大きなカリナン・ダイヤモンドは英国王室が所蔵し、ロンドン塔に保管されている。

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ジュエリーの芸術史

ジュエリーの芸術史。宝飾品の歴史が豊かなこともあり、ここでは講義内容が6種と豊富である。その中で誰にも身近なテーマは「タリスマンと貴重なシンボル」ではないだろうか。タリスマン、つまりお守りは国、時代、文化、宗教を超えて存在するのだから。講義はさまざまな映画の抜粋からスタート。ハリー・ポッター、アーサー王の伝説、ミステリー・ストーン……。そして締めくくりは、5つのビッグジュエラーにおいて、いつの時代にも姿を見せるタリスマン・モチーフについてだ。ブルガリの蛇、シャネルのライオンとコメット、カルティエのラッキーチャーム、ディオールのスズランやバラ、そしてヴァン クリーフ&アーペルについては、幸運を信じるというお守りの考えがメゾンの創立者の時代からジュエリーのクリエイションに強く影響していた歴史も含めて紹介される。

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お守りにまつわる映画の抜粋から始まる講義。

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こうしたお守りにまつわるエピソードが4時間の講義の間、多数語られていく。

このスタートと締めの間に語られるのは、お守りが作られる際のインスピレーション源、そして文化も時代も異なる実在の複数人物が大切にしていたお守りの例だ。

先史から中世にかけては保護、権力のためであり、最近では幸福を求めて、と人がお守りを持つ理由はさまざまであり、うさぎの尻尾、ドラゴン、てんとう虫、馬の蹄鉄、四つ葉のクローバー……用いられるシンボルもさまざま。近頃人気のスカルにしても死の象徴ゆえに、“生を楽しめ”という意味のあるお守りとして古い歴史を持つモチーフであることを学ぶ。誕生石、エクス・ヴォト(願掛け)などについての解説もあり、盛りだくさんな内容だ。講義に耳を傾ければ、今後の海外旅行、美術展鑑賞などの折に、お守りをキーワードにいろいろ見えてくるだろうし、あちらから語りかけてくるものもより増すことだろう。

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箱に詰められたお守りを、インド、中近東、ヨーロッパといった地域に分けていく実技で、メモをとる手を休めてちょっとリラックス。©Van Cleef & Arpels

「ジュエリーの芸術史」の講義の中には、“ヴァン クリーフ&アーペルの世界に入り込む”と題し、メゾンの歴史と発展を知ることができる2時間のクラスがある。めったに公開されないハイジュエリーを間近に見るチャンス。そして、有名なミステリーセットの謎も披露されるという。これは大いに気になる!

次回へ続く

「レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校」日本特別講座
期間:2019年2月23日(土)~3月8日(金) 14日間
場所:京都造形芸術大学 外苑キャンパス(東京都港区北青山1-7-15)
申込方法:レコール 日本特別講座 公式ウェブサイトにて受付(12月11日公開予定)
https://jp.lecolevancleefarpels.com/

【関連リンク】
レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校で学ぶ。その1

réalisation:MARIKO OMURA

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