Comme d'habitude 〜パリ・東京行ったり来たりblog〜

雅なアンソロジー☆

蚊取線香ではなく、お香です。

その香りは、白檀の香木をベースにローズ系のお花の香りの「月待ち雲」なるネーミング。

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久しぶりに日本で梅雨シーズンを過ごす中で、空気が重い…淀んでる…と感じることも多く、最近は積極的に1日2回朝と夕方にお香を炊いています。

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その香り包まれながら行なっているのが、外出自粛生活中に始めた1日1行の写経や文字練習。

(関連ブログ→ https://madamefigaro.jp/paris/blog/keico/1-4.html

お経に限らず、あれこれテキストを買って文字を書く行為を愉しむようになりました。

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そこで今月7月から始めたのが『百人一首で美文字練習帳』。

こう見えて(?)私は小学生時代に「競技かるた」をやっていました。

最近では漫画「ちはやふる」(←読んでいないので内容は知らないのですが)などで知名度も広がり、競技人口が増えていると聞きますが、「競技かるた」とは、百人一首を使って読み手が上の句を読み上げたらそれに続く下の句の札を取る競技です。

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ここでは詳細ルールは割愛で、ざっくり説明しま〜す。

そのかるた取りは、1対1の対決で、1人25枚ずつ札が配られ計50枚の札を取り合います。

自陣の札を取ったら1枚減り、敵陣の札を取ったら1枚相手へ送ることができ、自陣の札が先にゼロになった方が勝ちです。

まず札が配られた後、札を並べ、制限時間内に自陣・敵陣の札を暗記します。

そして読み手が上の句を読んだら下の句の書かれた札を取るわけですが、ゆっくり上品に「はい」なんてしてたら勝てない。

読み手の声、発した音に瞬間的に反応してシュパーーン!と札を払い飛ばすように取らないと!

(某月某日、都内で見た満月。お月様画像の理由は後ほど↓)

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上の句を全て聞かなくても1字〜6字までの『決まり字』で暗記することで、いち早く札を取りにいけます。

例えば「む」で始まる札は(←決まり字1文字)『村雨の露もまだ干ぬまきの葉に 霧立ちのぼる秋の夕暮』の一首しかないので、「む」と聞いた瞬間『霧立ちのぼる秋の夕暮』の札が取れます。

という訳で「競技かるた」は記憶力(100首丸暗記は大前提)、集中力、瞬発力、そして1対1なので相手に「あんたには負けないから!」的な圧もガンガン与え、受けながら戦うので見ため以上に疲れます。

(エッフェル塔と満月の夜↓)

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今、新たに100首の和歌を暗記しろと言われたら多分無理ですが、当時は簡単だったと思うと子供時代の記憶力ってすごい!?

私の場合、中学・高校へと進む中で古文・漢文にも抵抗なく、当時はそれらが得意科目になったのも「競技かるた」がベースにあったからかと。

そんな「競技かるた」から30年以上の時を経て、今は百人一首をなぞり書きし、意味を感じながら読んでみたら、その世界観は千数百年前の歌なのに現代にも重なってなかなか面白いのです。

人類の根本的なところ、感情はどんなに時代が変わっても普遍だと感じることばかり。

さて、たまたま今日読んだ一首が大好きな和歌なので、パリ&東京のお月様画像とともにご紹介。

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『天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも』。

教書的な訳では、「大空を振り仰いではるか遠くを眺めると、昔見た春日にある三笠山から出た月と同じ月が上がっているな〜」となります。

これを私なりに超訳すれば(あくまで私的な超訳なので学術的、専門的な指摘はご遠慮いただきたく)こんな感じ。

「今さ、こうして広〜い中国の夜空で見上げてる月も、俺の故郷の春日の三笠山から見えた月も同じ月なんだよね。って思うと感慨深い。ま、でももうすぐその三笠山の月も故郷で観れると思うと感無量!」

この歌を詠んだのは、阿部仲麿(あべのなかまろ)。

といえば、古文よりも歴史の教科書で思い出すであろうな遣唐使・安倍(阿部)仲麿です。

(某月某日。パリのアパルトマンからスーパームーンのお月見↓)

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奈良時代に遣唐使として中国留学した、なかまろっち(以下まろっち呼ばわり)は、当時のいわゆるエリート官僚。

エリートだし、中国での生活も悪いものではなかったのでは?と想像しますが、その駐在歴も30年を過ぎ、ちょいちょい自分の老いも感じ、そろそろ本帰国したいと思っていたところ、帰国の辞令が出て喜んだと言われるなかまろっち。

この歌は、そんな彼の送別会で詠まれた歌として伝わっています。

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そう思って詠むと、海外生活や遠距離恋愛(?)を経験した方には心情的に重なる部分もあると思うのですが、夜空に浮かぶ月を見上げて同じ月見てるのかな〜と故郷や家族、旧友、パートナーを想ったりすること度々です。(よね?)

月は神秘的で感傷的に自分の気持ちをかぶせたくなるので、なかまろっちの置かれた状況を思ってこの歌を読むと一段と沁みるというか、望郷と大変だった遣唐使時代も振り返るような部分もあるかな?と思います。

そんな歌を詠んだ宴の後、なかまろっちは無事本帰国して晩年は退職金をたっぷりもらって悠々自適に豊かに暮らしましたとさ。

で終わったら良かったのですが、現実は違いました。

彼の乗った船は難破し、命は助かったものの、また中国に戻ることになり、そこで生涯を閉じました。

現代のように「じゃ、帰国は来週のフライトで」と簡単にできない時代ですし、また政治的なことも絡んでるでしょうが、彼の帰国は果たされませんでした。

(お月様不在。でもシャンパンフラッシュが煌びやかなパリの夜↓)

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と、なんだか熱くなって長々と書いていしまいましたが、選りすぐりな百人一首は、なんとも雅で現代にも通じる感覚満載の歌を集めたアンソロジーだ!と再発見してる今日この頃。

好きなので、これは!な歌はまた時々私的超訳でご紹介したいと思うのですが…。

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おまけのパリ。

バスを待っていたら向かいの道路でとタクシーが止まり、降りてきた運転手さんがトランクを開けて座ってバゲットサンドイッチを食べるランチタイム。

なんてことないのに、映画のワンシーンのようにカッコよく見えた。

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KEICO

新潟県の旅館に生まれるも女将にならず、上京、進学、就職、まさかの出逢いと結婚。
約10年間のOL生活の後、2004年渡仏。
現在は夫と共にパリ・東京を行ったり来たりな生活中☆


そんな毎日からのグルメ・ファッション・カルチャー・バカンスなどの話題を中心にブログ更新致します。

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