ひと皿の小説案内☆
買ったのは結構前なのですが、なかなか読めなかった1冊「ひと皿の小説案内」(ダイナ・フリード 著、 阿部公彦 監修・翻訳)のページをようやくめくりました。
「白鯨」「若草物語」「太陽がいっぱい」「赤毛のアン」「ボヴァリー夫人」「ミレニアム・ドラゴンタトゥーの女」など古典から現代ものまで海外小説の50篇に描かれた50の食事シーンを再現した1冊。
物語を読んでいて私の場合、一番想像力を刺激されるのは料理&食事シーン。
食べたことがないものだったり、それこそ私がまだ子供の頃などは今のようなインターネットは無く、情報を簡単に得られなかった時代なので本や漫画を読むたびに「それってどんな料理?どんなお菓子?」と。
大人になって実際を知るとそれはイメージ通りだったり、逆にガッカリしたり。
読書家ではないけれど、いくつかの食事シーンが自分のイメージと重なるかな?!と興味を持って購入しました。
では、このひと皿は?
カンパーニュパンの上にとろとろのチーズ、ミルクも添えられて素朴だけど美味しそうな一枚は「ハイジ」で、ハイジのおじいさんが焼く黄金色のチーズ焼きを再現した一枚でした。
続いてこれも名作。
こちらは「ライ麦畑でつかまえて」のスイスチーズのサンドイッチ&ピクルス。
本書は右ページに料理写真、左にその食事シーンの描写の抜粋が記載されています。
また簡単にその小説、作家についてのミニ知識も添えられているので雑学的にも楽しめます。
「失われた時を求めて」のマドレーヌと紅茶、「不思議の国のアリス」のティーパーティー、「ライオンと魔女」のターキッシュ・ディライトなどその盛り付けと食器のチョイスも興味深く見ました。
ではもし私が小説家ならどんな物語にどんなひと皿シーンを描くだろう?
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なんだろう、この香り?
その嗅いだことがあるような無いような不思議な青い香りに導かれてケーコがたどり着いたのは裏通りにひっそりと佇む一軒の中華料理店だった。
ガラガラガラと遠慮がちに引き戸を引くとキッチンから無愛想なオヤジがジロリと一瞥。
洗い物をしていた奥さんらしき女性がエプロンで手を吹きながら笑顔で出てきた。
「いらっしゃいませ」
「あの、、不思議な香りを辿ってきたらここに…」
「不思議な香り? あ〜、これね!ニラ蕎麦の匂いかな。このニラは今の時期しか食べれないものだから」
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ダメだ…。全く文才がなく三文小説以下の以下で小説など書けません!!
と現実に戻ったところで、私がひと皿シーンとして書いてみたいと思った一つが、去年の桜の季節に食べた新宿区曙橋にある中華料理店「敦煌」の「ニラ蕎麦」。
このお店のスペシャリテの1つですが、食べられる時期が限定的。
使われるニラが他の季節では硬くなったり、えぐみが出たりで、この柔らかいネギに近い食感でいただけるのは春先だけなのだそう。
軽く湯がかれ、細かく刻まれたたっぷりニラを下のうどんのようなもっちり食感の太麺とよーくかき混ぜていただく。
ニラというと独特の臭い匂いが連想されますが、このニラはちょっと違っててとてもマイルドで所謂ニラ臭が極めて少ないのです。
単に「ニラ蕎麦」と聞いていたイメージとはだいぶ異なるものでした。
つくづく食べ物の表現というのは難しい…。
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