ベビー ディオールをデザインするコーデリアって?

特集

6年前からベビー ディオールのクリエイティブ ディレクターを務めているコーデリア・ドゥ・カステラーヌ。その苗字から察せられるように、ディオール・ジョワイユリーでファンタジー溢れるジュエリーをクリエイトし続けているヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌの従妹にあたる。ヴィクトワールが子供時代の思い出を語るときによく登場するのは、1日に何度もゴージャスなジュエリーをとりかえていたという父方の祖母シルヴィア・ヘネシー。彼女はコーデリアの祖母でもある。

「祖母はディオールで装うことが多く、そのおかげで、私は彼女の持つ美しい服の数々に囲まれて育ちました。それに私の母はマルク・ボアンと仲良しだったので、私はディオールで仕事をするより遥か昔から、このメゾンは私にはとても身近だったのです」

こう語るコーデリア。品格と魅力に溢れる美女である。ディオールのショー会場でフロントローを占めていても不思議のない彼女を見ていると、現在の彼女のこのポストに実に正当な存在であるという印象を強く受ける。

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4児のママ、コーデリア・ドゥ・カステランヌ。

今年はベビー ディオールの50周年を祝う年。1967年にディオールにベビーと子供のためのブランドが生まれたのは、マルク・ボアンがアーティスティック ディレクターの時代だ。

「クチュールの顧客であるモナコのグレース公妃の子供たちは、小さい頃にディオールを着ていました。エリザベス・テイラーが子供と揃いツイードの服を着ている1961年の写真も残っていますね……。このようにクチュールのクライアントの女性たちから多くの希望があって、子供のためのブランドを設けることにしたそうです。彼はとても偉大なクチュリエ。才能とポエジーに溢れていて……。彼が残してくれたベビー ディオールのアーカイヴは、私の大きなインスピレーション源となっているんですよ」

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1967年にベビー ディオールがスタートした時のクチュリエ、マルク・ボアン。ブティックのオープニングでは、クチュール顧客であるグレース公妃がテープカットを行った。

50周年を記念して、1967年に彼がデザインしたアイコニック・アイテムのピエロ・ルックが彼女による再解釈で復刻された。素材は彼が使ったのと同じ光沢のある黒いビロードだ。

「彼はヴィジョネアでもあった、と思うんですよ。今でも子供に黒を着せるということがあまりないのに、1967年にすでに……とってもシックなジャンプスーツでした。私はジャンプスーツ、そしてAラインのシャジュブル・ドレスを作りました。50周年記念には、クリスチャン・ディオールゆかりのすずらんの花のドレスを着た人形もあります」

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1967年にマルク・ボアンがデザインしたピエロ・ルック。

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ベビー ディオール50周年を記念して、コルデリアが復刻したマルク・ボアンによるアイコニックルック。子供服といえども緻密なアトリエ作業(photo:Sophie Carre)は大人の服と何ひとつ変わらない。

クチュール・メゾンとして、今年70周年を祝うディオール。ベビー ディオールというブランドが誕生する前にも、クリスチャン・ディオールがデザインした子供服というのが存在する。子供好きだったというクリスチャン・ディオール。友達の子供や姪っ子のために、デザインをしていたそうだ。これらはつまりクチュール・ピースということになる。

「そうです。今もその習慣をディオールではキープしているんですよ。子供のためのクチュールを! ウエディング・ドレスをオーダーした女性が、介添え役の子供たちの服をオーダーすることが、よくあります。それから、クリスマスや洗礼式などの宗教行事のためとか……。これから生まれる子供のために産着やら何やら新生児に必要なすべてを、と妊娠中にオーダーに来る女性もいますし、あるいは自分たちの結婚20周年祝いのディスコパーティで娘が着る服を、といった注文も。クチュールの仕事で何よりも嬉しいのは、刺繍とかアルチザンたちのサヴォワールフェールを生かせることですね。子供のためといっても、大人のクチュールとまったく同じ工程を踏まえて制作しています」

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2015年にグランヴィルのディオール美術館で開催された『ニュールック革命』の展示より。友人の子供へのクリスマスプレゼントの人形は、クリスチャン・ディオールがクチュール部門に作らせたニュールックのコートとイヴニングを着ている。

そろそろブティックに並ぶプレタの2017〜18年の秋冬コレクション。メゾンのアイコンバッグであるLady Diorがシルバーのミニサイズで登場する。ブランドのマスコットであるクマの顔がちょこんと愛らしい表情を見せているバッグだ。

「もともと大人のためにデザインされたバッグです。それを子供向きにするにあたって、こうした要素で子供っぽくすることはとっても大切なんです。私はチビ・ロッカーとか、穴あきジーンズとタグのTシャツといった大人子供の服は嫌いです。これらは、私のベビー ディオールでは考えらません。子供はあくまでも子供らしい装いを! マルク・ボアンの時代は大勢の使用人がいて子供の面倒をみていましたけど、今はそういった時代ではありません。だからデザインはベーシックで、かつ快適に動きやすいことに重きを置いています。スウェットやジーンズ、スニーカーといったアイテムは彼の時代にはありませんでしたけど、色のバランスやコーディネートによって、私はメゾンのエレガンスを常に保つように心がけています」

17歳から6歳までの4人の子供を持つコーデリア。彼らがクリエイションのインスピレーションになることはないけれど、彼らが服の中でどう動くのか、どのような快適さが必要か、といったことの参考にはしているという。秋冬コレクションの中には、ダンスのインスピレーションも感じられる。ふわっとした軽やかさは、彼女が子供服に取り入れたいことのひとつ。それに彼女自身、バレエが大好きなので無意識にそういった面が自分の仕事に入り込むのかもしれないという。

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ベビー ディオールの2017〜18秋冬コレクションのプレス発表より。

「先月、オペラ・ガルニエでリカルド・ティッシがコスチュームをデザインした『ボレロ』を見ました。男女ともにダンサーたちはレースやチュールのとっても素晴らしい衣装をつけて、ラヴェルの音楽が力強く刻むリズムにのせて……マリナ・アブラモヴィックによる舞台装置の効果もあいまって、見終わった後なんだかぼーっとしてしまいました。ああ、もしいつかバレエの衣装をデザインする仕事があるのなら、ぜひしてみたいわ ! 」

彼女は1年前までは、自分の名前のイニシャルをつけたCdC (セー・ドゥ・セー)という子供服ブランドのデザインもしていた。それ以前はウンガロのクチュール部門にいたのだが、創業者エマニュエル・ウンガロの引退と共に彼女もメゾンを去り、子供の面倒をみるべく1年の休業期間を設けることにしたのだが……じっとしていられず、2カ月したところで、子供服のブランドを作ろう! と思い立って、2006年にCdCをスタートしたそうだ。

「祖母によって芸術的感覚が私に植え付けられたのだと思います。彼女のジュエリーへの情熱をヴィクトワールが、色彩のセンスを私が受け継いだのですね。とてもコケットな女性で、祖父との夕食の前に毎晩1時間かけてメイクして……祖父は祖母の素顔をみたことがないといっていました。亡くなるまで信じられないほどのエレガンスを保っていた女性です。でもその人生たるや、実に情熱的。何しろ、その時代にあって、4度の結婚をしたのですからね。興味深い女性です。私もヴィクトワールも彼女には、すっかり魅了されていました。その祖母が私にベビー ディオールの服をいろいろ買ってくれたんです。大切に保管されていたそれらは、今はこのディオールの仕事部屋に置いてあります。私が着た中で思い出に残っているベビー ディオール……それは背中がバツになったリバティのワンピースです。襟はギピュールレース。丈が短くなって、ママに“もうこれは小さすぎるわ”と言われても、着続けるほど好きでした。ワンピースとして無理になっても、トップとして着続けて、もう腕も動かしにくくって……(笑)。それから、今もここで保管しているのですけど、刺繍つきの白い革のコート。これは私にとって、いわば“プルーストのマドレーヌ”です。つまり、お菓子なり、香りなり、それによって幸せだった時間を思い出す何か……私にはそれがこのコートなんですね。私の幸せな子供時代に、しっかりと結びついているコートです」

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幼少期の幸せな時間を象徴するベビー ディオールのコートを着たコーデリアと一緒にいるのは、先の話とは別の祖母。シックな女性であることは同様だが、厳格で知的なこちらの祖母からは人生の基本を学んだそうだ。

時が流れ、今度は彼女が世界中の子供たちに向けて、“プルーストのマドレーヌ”となるベビー ディオールをデザインする番となった。パリ市内、ロワイヤル通りのベビー ディオールのブティックは彼女がクリエイティブ ディレクターに就任してから生まれ、彼女の美意識が内装にも生かされている。50年前から不動のモンテーニュ通り28番地のブティックだけでなく、こちらもぜひ訪れてみよう。

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ロワイヤル通り店は、1階がベビーと男子、2階が女子のフロア。

Baby Dior
Village Royale,
25, rue Royale
75008 Paris
tel:01 53 05 95 20
営)10:00~19:00
休)日

réalisation:MARIKO OMURA

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