夏、パリから直行できるプチ・カルチャー・トリップを。#02

パリから2時間、開港500年を祝うル・アーヴル到着。

特集

印象派発祥の地といわれるノルマンディー地方の港町ル・アーヴル。クロード・モネが『サン・ラザール駅』(1877)で描いているのとあまり変わらぬ駅舎から列車に乗り、2時間で到着する。ブルーとグレーのグラデーションが刻々と変化する空を海辺で眺めるだけで、この地がどれほど画家たちを魅了したかがわかるのだが、今夏のル・アーヴルはそんなのんびりとした散歩だけでは終わらない。開港500周年を祝う今夏は、アート絡みの盛りだくさんのプログラムが用意されているのだ。

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刻々と変化するル・アーヴルの空の色。アート作品を眺めるついでに、印象派の画家に絵筆をとらせた空も見上げよう。

アンドレ・マルロー近代美術館(MuMa)では、「ピエールとジル」展が開催されている。ピエール・コモワが撮影し、ジル・ブランシャールがそれに絵の具をのせるという共同作業をスタートしてから、今年で40年になる。 美術を学んだ二人がパリで運命の出会いをしたのは1976年。ル・アーヴル生まれのジルにちなみ、展覧会場の導入はル・アーヴルの海岸を彷彿させる構成だ。ストロマエ、アリエル・ドンバールなどを被写体にした写真を飾ったカラフルな5つの海の小屋が並んでいる。中央の小屋はピエールとジルのセルフポートレートで、その前には40周年のハッピー・バースデーのケーキ! 「一緒に仕事をする喜びは、今も変わりません」と二人は声を揃える。

それに続くのは、オルセー美術館の次に印象派の作品を有するというMuMaの所蔵品から二人が選んだ絵画のコーナー。デュフィやモネといったル・アーヴル出身の著名画家のあまり知られていない、地元ならではの作品を鑑賞できる。ちょっと奥まった次の部屋は、それぞれの子供時代に始まり、二人の思い出の品々をぎっしりと展示していて、なかなか賑やかだ。

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ピエール(左)とジル。出会って以来40年間、写真と絵画による共同作業を続けている。

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展覧会の導入部。5つの海小屋に並べられた5点の作品中、最新作はストロマエが被写体の『Forever』(右端)。2014年の作品だが、彼らの作品制作手法は一貫している。手作業でペイントされた作品はすべて一点ものだ。

二人の作品を約100点近く集めた展覧会。初期の70〜80年代の作品から始まり、その後はテーマ別だ。宗教、ゲイカルチャー、神話……テーマは異なれど、色が弾けそうなポップな作品が並ぶ部屋が続く。

パリの郊外に暮らす彼ら、地下の巨大なスタジオが仕事場となっている。コスチュームだけでなくデコールもすべて二人の手製で、例えば背景のチュールにあれこれと飾り、さらにその奥にまた別のチュールがあって、という手の込んだ職人作業を毎回行う。彼らの被写体はセレブリティが多いことでも知られているが、それゆえに皆、このスタジオまで撮影のために足を運ぶのだ。もっとも、マドンナだけは例外だったとか。

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左の『ル・アーヴルの港に浸って』(1998)を始めとして、マリン・ストライプと水兵帽のコスチュームは彼らの作品によく登場する。

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ジェラール・ドパルデューはそっくりさんがモデルだが、マドンナ、オドレイ・トトゥ、ジャン=ポール・ゴルチエなど、セレブリティがモデルの作品も多数。もっとも、願っても彼らに作品を作ってもらえないセレブもいるらしいが。

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街の無名の少年からマーク・ジェイコブスのような著名人……彼らの創作意欲を刺激する男性モデルたち。

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額装も麗しい三部作の『Ganymède』(2001年)。ピエールとジルは作品のアイデアが浮かんでも、それに理想的なモデルがみつかるまで制作を実施しないという。この作品のモデルはフレデリック・ランファンだ。Pinault Collection© Pierre et Gilles。

Pierre et Gilles, Clair-obscur 展
会期:2017年8月20日まで
MUMA (Musée d’art moderne André Malraux)
2, boulevard Clémenceau
76600 Le Havre
tel:02 35 19 62 62

さて、「Un été au Havre」と題した10月8日までの開港500周年の催しでは、ガイド付きで2時間をかけて街を発見する4つの徒歩コースが提案されている(英語コースは毎土曜の15時から)。こうしたグループツアーに参加せずに、4つのコースのプログラムから気になる要素を組み合わせた自分だけのツアーをつくって歩くのも楽しいだろう。4つのコースの出発点はいずれも、市の文化会館であるLe Volcan(ル・ヴォルコン)だ。プログラムの入手や有料の文化施設のチケット購入などもここでできる。火山という意味をもつ、白いコンクリートの流れる曲線が美しい建築物はオスカー・ニーマイヤーの作品。劇場、図書館、レストランなどを擁している。

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建築ファンを喜ばせるオスカー・ニーマイヤーによるLe Volcan(8, place Niemeyer)。開港500周年のイベントUn Eté au Havreの情報はすべてここで得られる。

しかし、ル・アーヴルの建築を語るとき、忘れてはならないのは何と言ってもオーギュスト・ペレ。第二次世界大戦で爆破された街の中心部の再建を託されたのが、鉄筋コンクリートの巨匠、コンクリートの詩人などと形容される彼なのだ。1945年から1年をかけて彼が設計した建築物で再建されたル・アーヴルは、都市として2005年にユネスコの世界遺産に登録されている。パリのリヴォリ通りにペレが例をとったという、市内中心部を走るパリ通りを歩くのもいいだろう。またペレが建築したアパルトマンの1室は市が所有していて、有料だが見学が可能だ。当時の家具、内装などペレの革新的な仕事に触れられる。

サン・ジョセフ教会もペレによる設計だ。1957年の建築で、遠方からも眺められる107メートルの塔が圧巻である。その内部はというと、ピンク、ブルー、オレンジなど何千枚ものカラフルなガラスから光が差し込み、息を飲む美しさ。さらにUn été au Havreの期間中は、このガラスとコンクリートの優雅な共演に、日本人アーティストの塩田千春による赤い糸のインスタレーションが驚きを添えている。教会に入ってくる人々の祈りが秘めるエネルギー……赤い糸は祭壇から 渦を巻いて高い塔の上方へと向かって行く。

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ル・アーヴル復興の一環としてオーギュスト・ペレ(1874~1954)が1953年に設計したサン・ジョセフ教会(130 Boulevard François 1er, 76600 Le Havre)。中では塩田千春のインスタレーションが見られる。

イベントの期間中は彼女だけでなく、現代アーティストの作品が多数展示されている。商業港ル・アーヴルはコンテナの並ぶ景色でも知られる街。パリ通りがぶつかる河岸には、ヴァンサン・ガニヴェによるコンテナを使った吊架のインスタレーションが見る者を驚かせ……。

1517年にフランソワ1世の命で建設された港である。新しいばかりがル・アーヴルにあらず。第二次世界大戦の戦禍を受けたものの、鐘楼は16世紀、正面 扉は17世紀のままというのはパリ通りのノートル・ダム大聖堂だ。中には17世紀にリシュリュー卿から贈られたというオルガン(戦後に修復がなされている)が鎮座。500年前の開港の時代から残る貴重な大聖堂である。前を通ったらぜひ立ち止まって。時間があるなら、中も覗いてみよう。

見るべき場所が書ききれないほど、盛りだくさんのル・アーヴル。日帰りもいいけど、1泊するのも悪くない。ジャン・ヌーヴェルの建築によるプールやスパのあるLes Bains des Docksもあることだし……。

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ル・アーヴル大聖堂(44、Rue de Paris, 76600 Le Havre)。第二次世界大戦で受けた被害の修復後、1952年に再び開かれた。photos:Mariko OMURA

réalisation:MARIKO OMURA

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