コーデリアによる新生ディオール メゾンが気になる!

特集

2017年にベビー ディオールが50周年を迎えた際に、クリエイティブ ディレクターのコーデリア・ドゥ・カステラーヌをここで紹介した。子ども時代、ベビー ディオールで装うことが多かったという彼女にこれはまさに適役で、クラシックだけどファンタジーあふれる子ども服を発表し続けている。私生活では4児のママで大忙しなのだけれど、2年前、ディオール メゾンのクリエイティブ ディレクターにも新たに任命された彼女。早くもディオール メゾンに新しいダイナミズムをもたらしているのが頼もしい。

モードと連動したカプセルコレクション

日本でもギンザ シックスのハウス オブ ディオール ギンザでディオール メゾンのホームコレクションに気軽に接することができるようになり、トワル ドゥ ジュイのカプセルコレクションに心を奪われた人も多いのではないだろうか。2019年のクルーズコレクションで登場した、マリア・グラツィア・キウリの再解釈による野生動物、蛇などが遊ぶテキスタイルが魅力的に描かれたプレート、クロス、クッション、ノートブック……。このコレクションは椅子、屏風もパリでは販売され、さらにベビー ディオールをクリエイトするコーデリアらしく巨大な動物の縫いぐるみも、という充実したものだ。

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トワル ドゥ ジュイのカプセルコレクションより。プレート(左)21cm 参考商品 (右)27cm ¥151,200、クッション ¥85,320、ノート ¥6,048 以上ディオール メゾン/クリスチャン ディオール

コーデリアはメンズのアーティスティック ディレクターに就任したキム・ジョーンズとも意気投合し、ベビー ディオールのBoyカプセルコレクションで早速彼とコラボレーション。ディオール内で活発な活動をするものの、コーデリアはあまり表に出てこない。クリエイターとしてだけでなく、いち女性としても素敵な彼女である。今回はディオール メゾンにおける彼女の仕事について、紹介することにしよう。

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コーデリア・ドゥ・カステラーヌ(右)。キム・ジョーンズ、彼女の3人の息子とBoyのカプセルコレクションを着てポーズ。©Alfredo Piola

「トワル ドゥ ジュイ。これはモードとメゾンに繋がりを持たせるために、新しく始まったことなのよ。年に1〜2回、ウィメンズコレクションのテーマからインスパイアされたカプセルコレクションを出すことになり、その第1回目がトワル ドゥ ジュイだったの。ドレスのモチーフからいくつかの要素を取り出し、それをプレートなどにデザインし直して発表したんです。このテーマを知ったとき、素晴らしい!! って思ったけれど、簡単な仕事ではありませんでした。なぜって、テキスタイルをそのままプレートに再現すると、とっても息苦しいものになってしまう。びっしりと描かれた塊のようで、訳のわからないモチーフとなってしまいます。それでトワル ドゥ ジュイらしさを保ちつつ、バランスが得られるまで軽快にしました。さらに新たに紫陽花のポジとネガの2タイプのモチーフも、食器のためにデザインしたんですよ」

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トワル ドゥ ジュイのカプセルコレクションより。赤とブルーそれぞれにポジ(陽画)とネガ(陰画)のバージョンがある。ブルーサイドプレート 16㎝ ¥12,420、レッドのプレゼンテーションプレート 31cm ¥19,980

ディオールには、トワル ドゥ ジュイにまつわるちょっとしたエピソードがメゾンにある。クリスチャン・ディオールが1947年に開いたモンテーニュ通りのクチュールメゾンにはコリフィシェ(小間物屋)と名付けられたブティックが設けられていて、彼が愛する18世紀に生まれたトワル ドゥ ジュイの壁紙で覆われていたのだ。これは、クリスチャン・ディオールの親友である画家クリスチャン・ベラールが、内装を担当した若きヴィクトール・グランピエールにアドバイスをしてのこと。

「ムッシュ ディオールはそのブティックで、メゾン関連のオブジェを販売していました。それには訳がありました。というのも、クチュールメゾンにドレスを注文しにくる女性たちが、一緒に来店したご主人にお礼の品を贈るからなんです。灰皿、あるいはシルバーのカードケースなど……」

さて、世界各都市のディオール メゾンの売り場では、モードとメゾンを結ぶ第二弾であるカレイドスコープ コレクションの販売がスタートした。プレタポルテの春夏コレクションのモチーフのカレイドスコープ(万華鏡)を呼応させたクッション。インディゴ ブルーとピンクの2色があり、それぞれモチーフの見え方がまったく異なって見えるところにコーデリアのセンスがうかがえる。

トワル ドゥ ジュイもカレイドスコープもとにかく素敵なホームコレクションなので、つい次への期待が高まってしまう。プレタポルテの2019〜20年の秋冬コレクションから、コーデリアはどんなモチーフを選び、どのようなアイテムに生かすのだろうか、と。

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カレイドスコープのクッション。¥38,880

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コーデリアとアール・ド・ターブル

ディオール メゾンの歴史は長く、コーデリアもさまざまなディオール メゾンの品に囲まれて育った。Porte Bonheurというのが、両親が愛用していた食器のシリーズ。そして彼女はスズランがモチーフの「ミュゲ」で朝食をとっていたという。

「母がとにかく“アール・ドゥ・ターブル”狂で、たとえ日曜の晩、家族だけでキッチンのテーブルでディナーという時でも、パスタだけというような食事でも、母はいつも素晴らしいテーブルセッティングをしていました。調和のとれた美しいセッティングで、花が必ず飾られていて……。そうした食卓での家族との会話や意見のやりとり。それは恵まれた時間ですね。楽しいひと時の思い出として、これは私の心に刻まれています。旅先から、あるいは学校からでも家に戻って、美しくセッティングされたテーブルに座って、きれいな食器や花を目にする瞬間! これって、私の“プルーストのマドレーヌ”と言えますね。彼女、ちょっとエキセントリックなところがあって、当時でもいろいろなミックスを楽しんでいました。母からは、こうしてごく自然にたくさんのことを学びました」

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ムッシュ ディオールが愛した花、スズランがモチーフのコレクション Muguet(参考商品)

コーデリアはエマニュエル・ウンガロのクチュール部門で、創業者ウンガロが引退する前に一緒に仕事をしている。彼はテーブル周りの品のコレクターで、そしてマダム・ウンガロもテーブルセッティングに長けた女性だったとか。コーデリアは一緒に蚤の市に出かけることも多く、ウンガロ夫人からもアール・ドゥ・ターブルに関して、いろいろと学んだという。 生まれ持っての美的感覚に加え、こうして培われた素養を現在ホームウェアのクリエイティブ ディレクターとして発揮している彼女。ディオールからどのような使命を与えられたのだろう。

「私に与えられた使命は、ディオール メゾンをより前面へと押し出すことなんです。創業以来メゾンのコレクションは存在していて、いつの時代にもうまくいっています。それをさらにいまの時代の嗜好に合わせ、フレッシュな面をもたらすのが私の役目です。就任当初は、すでに存在する品々を少しリニューアルして、という風に仕事はゆっくりとスタートしました。強いDNAを持つもの、ディオールのコードはキープし、すでに新しいミリー ラ フォレのコレクションを発表しました。それに、先にお話ししたモードとメゾンを結びつける仕事が新たに加わったのです」

プレートやグラスなどで構成されるディオール メゾンのベースとなるコレクション。目下、7月のオートクチュールの時期に発表する新しいコレクションを準備中だ。こうしたコレクションはゼロからの仕事で、水彩のデッサンから最後に至るまでコーデリアによるクリエイションである。ベビー ディオールと同様に、メゾンのコードを自分自身のクリエイションに持ち込むことも彼女はこの仕事で多いに楽しんでいる。

そしてもうひとつの新しいプロジェクトもスタート。それは外部のアーティストやデザイナーとの年に2回のコラボレーションである。初回はフランス人空間デザイナーであるノエ・デュショフール・ローランス。限定販売のランプ「コロール(花冠)」が誕生した。

「コードレスの庭用ランプで彼のデザインに、ピンクカラーやアンバーといった繊細な色を一緒に選びました。モダンで、とても美しい光を放つランタンのようなランプですよ。コラボレーションのパートナーを選ぶのは私だけではないのですけど、今回のノエは私からの提案です」

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コーデリアによるコレクションミリー ラ フォレより。ムッシュ ディオールが愛したミリー・ラ・フォレの田舎の家では花が咲き、昆虫が遊び……。スーププレート 22cm ¥18,900、パスタプレート 19cm ¥16,740、トリンケット トレー ¥50,760、オーバルプレート 23×15cm ¥35,100

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タンブラー 10×7cm ¥20,520

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贅沢なブロカントのようなミックスを提案

このポストに就任したとき 、彼女はベビー ディオールのときと同じように、アーカイブをしっかりと研究したという。

「私は世界にむけてホームコレクションを発展させていくのですけれど、仕事をするうえで、過去にクリエイトされた品、そして顧客がディオール メゾンに求めていることをリスペクトしています。フランスのメゾンであるディオールのフランス的エスプリ、フランス的おもてなし……さらに私はポエジーも大切にしています。たとえばカナージュのお皿をカナージュのランチョンプレートの上に置くというようなことは、誰にでもできることですね。そうしたトラディションを超えたミックス、それを私は提案していきたいのです。アール・ド・ターブルのコードに縛られず、不揃いを恐れず、アクシデントは美しい、グリーンとブルーを合わせても問題なし、グラスとテーブルクロスがコーディネートされてなくても構わない、といったことをディオール メゾンの品を手にとる人々に知って欲しいと思っています。 クラシック好きもモダン好きも楽しめる、ひねりのある、“リュクスなブロカント”とでも言えばいいのか、そういった提案をしていきます」

笑顔を輝かせて、生き生きと語るコーデリア。メゾンのディレクターに任命されたことについても、仕事量が膨大になることなど恐れもしなかったという。

「そもそも私を脅かすことなんて、この世には存在しないのよ(笑)。ひたすら数を数え続けなければならないとか、リュックを背負って地の果てへ行け……といったことは恐ろしいことだけど。クリエイトすることが好きな人間に、何かを創れ、という依頼が来ること以上に嬉しいことはありません。それにベビー ディオールと分野は違うといっても、つながる部分はたくさんあります。求められているのはビジョンですから。どちらの部門でも、素晴らしいチームに私は支えられてるのよ。色、素材……いろいろな才能のスタッフがいて、各人が自分の分野で力を発揮しています。だから、私の仕事はオーケストラの指揮者にたとえられますね」

もちろん自身でも蚤の市に足を運ぶ。子どもの頃、蚤の市好きな母親に連れられてよく通った。最近はディオール メゾンの銀器を刷新したいという気持ちがあることからシルバーの品を漁ったそうだ。そして新しい旅先では就任以前と異なり、その地方ならではの職人仕事や、まだ知られていないサヴォワール・フェールを探し、アルチザンに会って、と積極的に行動する。クリエイションにとって旅は不可欠なことだと語る。日本の漆や木工細工……日本の高度な職人技をとりわけ彼女は評価している。子どもの頃から日本の漫画の大ファンで、日本女性からは繊細さ、洗練にインスパイアされ、日本女性から教わることは多いと語るコーデリア。では、彼女にとってフランスのエレガンスとは何だろう。

「それは、まるで何も努力をしてないかのように感じさせる、ノンシャランなエレガンスですね。シックでシンプル。決してトゥーマッチではない。これがフランスのアール・ドゥ・ヴィーヴルを特徴づけていることだと思います」

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モンテーニュ通りのブティック内。本店だけあって、うれしくなるほどアイテム豊富だ。コーデリアはテーブル セッティングも担当。©Adrien Dirand

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後方はトワル ドゥ ジュイのコレクション。手前左、カレイドスコープのモチーフの幻想的なテーブルクロスに甘い色のプレートが似合っている。©Adrien Dirand

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新しいミュゲのコレクション。可憐な花が浮き彫りされた白いお皿や花器はエレガントで、時代を超えた魅力をたたえている。©Adrien Dirand

Christian Dior
30, avenue Montaigne
75008 Paris
営)10時~19時(日 13時〜19時)
無休

réalisation:MARIKO OMURA

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