トゥルーヴィル、ドーヴィル、カブールで海浜リゾート。

映画『男と女』で有名になった高級別荘地ドーヴィル。

特集

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トゥルーヴィルは既存の漁師町が発展したリゾート地。ところが橋の反対側にあるドーヴィルは、高級避暑地として不動産プロモーターが作り上げたリゾート地である。選ばれた土地、ドーヴィル。この地が海浜リゾート地としてパーフェクトにシックなのも、それゆえだ。

映画とモードのドーヴィル

そのドーヴィルを世界的に有名にしたのは、なんといってもクロード・ルルーシュ監督の『男と女』(1966年)。海岸に延々と続く板張りの遊歩道(レ・プランシュ)が映画を見た人々の記憶に焼きつき、さらに、その記憶はアメリカ映画祭によってより強化されるのだ。ドーヴィルの砂浜は1400メートルあり、有名なレ・プランシュは650メートルの長さ。そしてそこに並ぶ更衣室用キャビンには、アメリカ映画祭でドーヴィルを訪れた映画人の名前が毎年書き加えられてゆく習わしとなっている。

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俳優の名前が書かれた更衣室の仕切り。

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650メートルのレ・プランシュ。日中は犬連れの散歩者で賑わう。

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レ・プランシュの更衣室の裏手、1923年にポンペイにインスパイアされたアールデコの更衣室が建築された。使用料はシャワー付きが1日14ユーロ、バス付きが20ユーロ。

映画『男と女』では海岸のシーンだけでなく、ホテルのレストランでのシーンも映画ファンの間でとても有名だ。 妻を亡くしたレーサーと夫を亡くした映画のスクリプターがそれぞれの子どもを預けている寄宿舎のあるドーヴィルで出会い、ある晩ふたりで夕食をとる。ふたりの注文に不満そうな様子のボーイを、では喜ばせてやろうと、男はこう追加するのだ。「ボーイさん、空いてる部屋はあるかい?」と。映画公開当時、このシーンを真似しようとしたカップルがどれだけいたことだろう。最近改装を終えた5つ星のオテル・ル・ノルマンディーでは、撮影に使われたスイートを「男と女の部屋」と命名した。ドーヴィルの伝説のホテルである。宿泊はしなくても、ジャン・ギャバン、ココ・シャネル、ジャック・ニコルソンといったセレブが訪れたバーで、ちょっと一杯するのも悪くない。

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ドーヴィルに5つ星ホテルは2つ。そのひとつが、Hotel Barrière Le Normandy(オテル・バリエール・ル・ノルマンディー/38, rue Jean Mermoz)だ。

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1912年に建築されたアングロ・ノルマン・スタイルのホテル。

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ホテル内。2015〜16年に改装工事が行われたが、クラシックな面影は残されている。

ドーヴィルの地名がモード・ファンの耳に優雅に響くのは、ここはココ・シャネルが初のモード店を開いた土地だからではないだろうか。彼女が帽子デザインからキャリアをスタートしたのは有名な話で、カンボン通りに1910年にすでに帽子店は開いていた。その彼女が避暑に訪れたドーヴィルを気に入って、1913年にモードのブティックを海へと通じるゴントー・ビロン通りにオープン。スポーツにインスピレーションを得て、海辺のリゾートで潮風に吹かれるのが似合うジャージー素材やマリン・ストライプ、そして有名な“濡れた砂の色”のベージュ!といったモード。いま、ドーヴィルにシャネルのブティックはないけれど、ルイ・ヴィトン、エルメスなどの高級ブランドの買い物がパリとは異なる雰囲気で楽しめる町でもあるのだ。

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シャネル・ファン巡礼の地? 1913年、ゴントー・ビロン通りにガブリエル・シャネルが開いたブティックはここ!

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オテル・ル・ノルマンディー内で紹介されているシャネルの新しい香りレ ゾー ドゥ シャネル。ドーヴィル、ビアリッツ、ヴェニスというココ・シャネルにゆかりの深い3つの海の町のスピリットを映し出すフレグランスで、そのお披露目はドーヴィルのレ・プランシュで開催された。

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コロンバージュと呼ばれるノルマンディー独特の木組みの家。これがエルメスのブティック?とつい誘われる。

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古き良き時代の香りに導かれて、ヴィラ見学

ココの心をとらえたドーヴィル。でも彼女が訪れる50年くらい前までは、小さな集落があるだけの干潟だった。ドーヴィルの町の成り立ちを語るに欠かせないのは、ナポレオンの義理の娘オルタンスの息子であるモルニー公爵(1811〜1865)だ。彼女が最初に結婚したのはナポレオンの弟だった。ふたりの間に後のナポレオン3世となる、ルイ・ナポレオンが生まれる。その後離婚した彼女は、交際相手との間に一児を設ける。これが後のモルニー公爵(1811〜1865)で、義兄ナポレオン3世による第二帝政期には政治家として活躍した。

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カラフルなパラソルが並ぶドーヴィルの砂浜。

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更衣室の裏手にこんなモザイクが!

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海辺のリゾートに欠かせないカジノも、市役所やプランタン・デパートと同じく1912年に建築された。

その彼がバカンスでドーヴィルを訪れ、すっかりこの地に魅せられてしまったのだ。そして、1860〜64年にかけて保養地として整備。ナポレオン3世が鉄道の普及に力を入れていた時代であることも幸いし、人々をこの地に来させるためにパリからの鉄道もすぐさま敷かれ、そして観光客のためのホテルや別荘が建築されていき……というのがドーヴィルの歴史の始まりである。ナポレオン3世妃ユージェニーが海水浴に積極的で、ビアリッツでの海浜リゾートをパリの社交界の人々にすでに奨励していた時代だ。

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昔の栄華の香り漂う別荘建築を眺めながら、ドーヴィルの町を歩く。

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このインテリア・ブティックLa Maisonのように、かつてのヴィラがブティックに使われていることもある。

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競馬場裏手の厩舎は、ナポレオン3世時代の建築のまま。

モルニー公爵が馬好きだったこともあり、ドーヴィルを訪れる人にレジャーを提供すべく、競馬場が作られた。現在ドーヴィルには競馬場がふたつあり、競馬用の馬のオークションが開催されて、というように馬と関係が深い。夕方の海岸、乗馬する人々のシルエットが浮かび上がる光景はドーヴィルならではだ。

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1865年にオープンした競馬場。競馬はドーヴィルにおいては文化で、1928年にはふたつめの競馬場が作られた。

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入場料は通常5ユーロ。帽子をかぶり着飾った人々が集まる夏の週末は8〜10ユーロ。2ユーロから賭けられる。雪の日でも馬が走れる特殊な砂を用いたコースを備え、ここでは1年中競技が開催される。騎手たちは毎日6時から12時までトレーニングを行う。

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お馬さまが優先!とはドーヴィルならでは。

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陶製の馬の装飾はドーヴィルの町のあちこちで発見できる。

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ル・ノルマンディーの屋根の上にも馬と騎手! なおこのホテルの屋根には、装飾や屋根の腐食を防ぐために置かれた陶製の猫や鳥をあちこちで見つけられる。ポトリィー・バボンでこれらはいまも製造されているので、個人宅の屋根にも。ヴィラ見学の際は、屋根のチェックも忘れずに。

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ドーヴィルの夕景のひとつ。馬の脚の腱に海水がとても良い、という。馬もタラソテラピーである。

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お邪魔します、ヴィラ・ストラスブルジェ!

開発の進むドーヴィルで19世紀後半から20世紀前半にかけて、300近いヴィラ(庭付きの邸宅)が建築された。2005年に市長がこれらヴィラを保護する条例を設け、それ以来、ドーヴィルは“ヴィラを眺めて歩く、オープンエアの美術館”という謳い文句も。ナポレオン3世スタイル、ゴシック・スタイルなど、町中そして海岸沿いのヴィラを眺めて歩くと、古き良き時代にタイムトリップできる。かつて著名人が暮らした家の前には写真とともに解説が掲げられている……といっても、これらは個人宅なので訪問できないのが残念。でも、ヴィラの中ってどうなってるの?という好奇心を満たす方法がある。

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舞踏家イサドラ・ダンカンは1914年の夏を、このブラック&ホワイト・ヴィラで過ごしたそうだ。

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ドーヴィルに最もなじみの深いセレブは馬主でもあったジャン・ギャバン。1956年からドーヴィルに通いはじめ、1960年にこのヴィラを購入したとある。

ツーリスト・オフィスで予約してガイドツアーに参加すると、ヴィラ・ストラスブルジェの訪問ができる。この家は映画『ココ・アヴァン・シャネル』(2009年)の撮影に使われたことでも有名だが、ちょっとした歴史が残された家だ。というのも、この家があるのは、ドーヴィルの町の始まりとなった丘の上の集落だった場所。ここにあった農家は作家フロベールの父親がオーナーだったが、フロベールは親族の借金の返却のため、この農家を手放した。いま私たちが見ることのできるヴィラを建築したのは、1907年にこの地を購入した財閥ロスチャイルド家である。

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素敵な門の奥に姿を見せるストラスブルジェ邸。映画『ココ・アヴァン・シャネル』の撮影に使われた屋敷だ。

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Villa Strassburger(Avenue Strassburger)。6月〜9月はガイドツアー(4.5ユーロ)が開催されている。7〜8月はほぼ毎週水曜・木曜の14時30分からのスタート。申し込みはツーリスト・オフィスにて。

その家を1924年にアメリカの富豪であるドイツ人ラルフ・ビーヴァー・ストラスベルジュが購入。海軍兵士としてドーヴィルを知った彼はこの地にすっかり魅了されてしまい、大の馬好きでもあったため、競馬が開催されるドーヴィルのこの家を手に入れたのだという。また彼は大のパーティ好きでもあり、この家の1階の広間でしょっちゅうパーティが催していた。家の3階は招待客たちのための宿泊フロアだったそうだ。ドーヴィルを訪れる著名人で彼のパーティに招かれない人はいないというほど。画家の藤田嗣治も常連だったらしい。彼の没後、息子が家をドーヴィル市に寄贈。それでいま、彼が暮らしていた時代を再構築した家の中をガイドとともに見学できるのだ。良き時代の雰囲気が残るヴィラ内を歩き、ドーヴィルの当時の華やぎに思いを寄せてみよう。

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1階の大広間。

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家の持ち主が馬好きだったことが一目瞭然のインテリア。

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ベッドにティーセットを配置し、ストラスブルジェ夫妻の暮らしぶりを垣間見せる。

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夫人の化粧室。

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ミシンが置かれた使用人部屋。ストラスブルジェ夫人はシンガーミシンの創始者ファミリーの出である。

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市場やブロカント、そしてレストラン

町の中央には噴水広場あり、そこから港、駅、競馬場、海岸、カジノ、ノルマンディー地方の陸側へという6つの大切な方向に道が放射状に伸びる造りとなっている。駅から広場を抜け、カジノに通じる道が目ぬき通り。というのも競馬と同様、避暑地の楽しみにカジノは不可欠なのだ。噴水の裏手の広場に週に一度、食料品・雑貨の市がたつ。また毎月最終土曜は教会前でブロカントが開催されるので、時間が許せば掘り出し物をしてみよう。

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教会前広場で催されるブロカント。

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パリのブロカントより価格も低めだ。

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使い込んだ家具やどこから持ってきたのだろうといった看板。思いがけない品に出合えるのがブロカントのお楽しみ。でも、ワンちゃんは店番です。

ドーヴィルでの食事はレ・プランシュにあるカフェ・レストランや噴水広場に面した店を選ぶのが簡単だけど、いささか観光客向きすぎるかも。ドーヴィルの住民は4000名と少ないが、週末になるとその8倍の人であふれかえるという。この中には観光客だけでなく週末をすごす別荘族も含まれていて、この別荘族に愛されるレストランというのが、ドーヴィルの食の穴場といえる。そのひとつは、オテル・ノルマンディーの裏手の広場に面した美味しくて価格も手頃なLe Jardin(ル・ジャルダン)。素材は常に新鮮で、料理はほどよく洗練されていて味も良い。それに加えてサービスも感じが良いとなれば、リピーターが増えるのも当然だろう。

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夏、テラス席が奪い合いになるLe Jardin(5, rue Hoche/tel:02 31 81 10 05)

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アラカルトでも注文できるが、前菜・メイン・デザートが各3〜4種類から選べるセットメニューが価格も手頃。こんなアミューズ・ブーシュからスタートする。

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たとえば前菜はサーモンのグラヴラックス。ぶどうやブリニスなどの飾りが味と色どりをプラス。

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メインの魚のボワレは、焼き加減もパーフェクト。

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レストランの向かいの広場の眺め。中央のノルマンディー・スタイルの建物はプランタン・デパート、右手がオテル・ル・ノルマンディーだ。

●協力
ノルマンディー地方観光局
www.normandy-tourism.org

ドーヴィル観光局
www.indeauville.fr

カルヴァドス県観光局
www.calvados.fr

フランス観光開発機構
http://jp.france.fr

réalisation & photos:MARIKO OMURA

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