フランス語もちょっとお勉強。気になるレシピ本を開く。

『屋根裏部屋の料理』電気コンロで作る料理でおもてなし。

特集

レシピ満載の一冊だけど、料理の写真はほぼゼロというユニークな料理本『La cuisine du 6è étage(ラ・キュイジーヌ・デュ・シジエム・エタージュ)』を書いたのはイタリアとフランスで暮らし、ふたつの文化に精通するナタリー・ジョルジュ。ブルジョア家庭の出身で、教養あふれるエレガントな女性である。90年代、ジョエル・ロブションが日本でレストランを開く際、彼に同行して何度も来日したそうだ。現在は小さな屋根裏部屋に暮らし、電気コンロで料理する彼女はこう語る。レシピは複雑である必要がなく、キッチンは巨大でなくてよく、素材は高級でなくていい、と。昨秋に出版されるや、フランスではさまざまなメディアがこぞって取り上げた魅力あふれる書籍である。

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左:『La cuisine du 6e étage』(Editions Herodios刊/20ユーロ)。直訳すると“6階の料理”というタイトル。パリの6階は日本の7階に相当する。建物の最上階で、建築当時は使用人たちが暮らす屋根裏部屋が連なるフロアだった。右:自宅で調理中のナタリー(photo:Benoît Linder)。

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素材を変えて、ナタリーのサラダのレシピは豊富だ。photo:Benoît Linder

3幕ものの舞台劇のような構成の本で、異なる3つの時代、3つの場所が舞台となっている。序文を書いたのはスターシェフのヤニック・アレノ。といっても彼女と面識があったわけではない。序文を依頼してきた彼女に会い、教養あふれる人柄、料理哲学、食卓を囲む人々を幸せにするためのおいしいものへの彼女の愛情が鍵となり、引き受けたそうだ。ナタリーは彼女に“食べること”の喜び、日常をお祭りに変身させることを教えてくれた祖母ジジにこの本を捧げている。

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第1幕「見習い」の舞台はパリ16区での学びの時代だ。ここで紹介されるのは、料理上手だった祖母ジジのレシピである。ときに彼女の手書きのレシピも写真代わりに掲載されている。ウッフ・ア・ラ・コック、舌平目のムニエル、アンディーブのハム巻きホワイトソース、仔牛のポピエット、カスレ、バナナ・フランベなどクラシックな料理だ。

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ジジと愛称されたナタリーの祖母ジルベルト・ジョルジュ。80歳の誕生日にて。

第2幕、舞台はイタリアへ。子ども時代のバカンスをポルトフィーノで過ごしたナタリー。彼女がここで語るのは、イタリアで彼女にとって祖母ジジの役割を果たしたマラ・マルタンという女性シェフである。ヴェネツィアの「Da Fiore」を一級のレストランに格上げした女性だ。リゾットとパスタソースのレシピを紹介するなかで、使う白ワインについて特別な日、通常、金欠時に分けて名前を挙げているのがおもしろい。材料については代用の素材も記載するなど、レシピにがんじがらめにならない知恵は料理研究家ではなく料理好きのナタリーならではだろう。調味料の量なども、小さじ1杯などといった記載はもちろんゼロだ。

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1965年の夏、ポルトフィーノで。

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1995年、ヴェネツィアのナタリー。

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第3幕、舞台は再びパリ16区。といっても第1幕の祖母のアパルトマンとは大きな違いがあるけれど……。15年くらい前、ナタリーはそれまで暮らしていたアパルトマンの絨毯よりも小さなスペースに引っ越すことになった。それは建物最上階、かつて女中たちのために用意された部屋のひとつである。狭いアパルトマンなので調理器具も最小限に限り、料理をするのは電気コンロだ。キャベツの丸ごと購入は冷蔵庫をいっぱいにするので、その代わりに芽キャベツやカリフラワーを、といった制限も多数。それでもナタリーはおいしい食事、人々を招いてのおもてなしを続ける。ここで紹介されるレシピはサラダ、スープ、デザート……。

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今宵のゲストはパフューマーのフランシス・クルジャン。オフィススペースが、夜はディナーテーブルに変身する。photo:Cédric Bernard

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左:屋根裏なので天井が斜めなのが特徴だ。右:ナタリーの調理場! photo:Benoît Linder

料理を介してナタリーの自伝的要素もちりばめられた一冊で、また祖母、彼女を知る人々の証言も含まれている。最後には彼女のおすすめの食材調達アドレスを掲載。食べるのは好きだけど、料理は上手くないし、狭い家なのでおもてなしも苦手で、という人がちょっぴり反省することになる本かもしれない。

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目利きのナタリーの食材選び。

réalisation : MARIKO OMURA

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