デザイン家具とインテリア・ファブリックの出合い。
PARIS DECO
「同じ通りにアスティエ・ド・ヴィラットのブティックがあるので、よく日本人が来るんだ。みんな、家具のデザイナーについて、すごく詳しいね」。こう声を揃えるのは、Galerie Bouvier Le Ny(ギャルリー・ブーヴィエ・ル・ニイ)のオーナー二人。彼らはアスティエ・ド・ヴィラットと同じ通りの3番地に、20世紀のフランスのデザイン家具を販売するギャラリーを構えている。扱っているのはジャン・プルーヴェ、ル・コルビュジエ、シャルロット・ペリアンなど、というから日本人の興味を引くのは確かだろう。
今、このギャラリーの前を通りかかると、デザイン家具のファンに限らず目を奪われる。というのも、鮮やかなモチーフの布が正面の壁を覆っているからだ。壁の前に置かれたシャルロット・ペリアンのベッドには、さまざまなモチーフのクッションが並べられ、日頃はどちらかというとマニッシュでミニマルなギャラリーの空間にファンタジーが溢れている。カラフルで実に生き生きとしたモチーフのファブリックは、ナタリー・デュ・パスキエによるものだ。1980年代に創立されたデザイナー集団で、ポスト・モダン・ブームを世界的に巻き起こしたメンフィスの一員として有名なアーティストである。
2年前にアメリカンアパレルとコラボレーションをしている彼女が、今年はインテリア・ファブリックのコラボレーションをしたのだ。パートナーは、南仏でペンキ、家具、ファブリックなどを製造しているメゾンのOlivades。南仏のコードにまつわるテキスタイル・デザインをナタリーにオーダーし、Olivadesのパリのブティックの並びにあるその布とギャラリー・ブーヴィエ・ル・ニイがコラボレーションというわけだ。壁一面を布が覆うだけでなく、これらのファブリックを使ったトートバッグ、クッションなどを、10月末までこのギャラリーがパリでは独占販売している。さらに、このギャラリーでしかみつからない一点ものもある。それはナタリー・デュ・パスキエの布を張った、ヴィンテージ家具だ。例えば、1955年頃にパリ郊外アントニーの大学都市のためにデザインされたペアの椅子とか……。
アスティエ・ド・ヴィラットのブティックに行く途中、あるいは帰りがてらに、このギャラリーにちょっと寄ってみてはどうだろう。
3, rue de Tournon
75006 Paris
Tel. 01 75 42 87 92
営)11:00~19:30
休)日
www.bouvierleny.com
Mariko Omura
madame FIGARO japon パリ支局長
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏する。フリーエディターとして活動し、2006年より現職。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。