バカラ美術館にJ・M・フランク、アイリーン・グレイ再び。

PARIS DECO

新しくなったバカラのクリスタルルームでの昼食後、ぜひ同じフロアの美術館を訪れてみよう。『Baccarat la modernité intemporelle(バカラ、タイムレスなモダニティ)』展が昨秋から開催され、三部構成で合計350点の逸品を見ることができる。

最初の部屋は“グラマラスなテーブル”と名付けられ、8名のゲストのためのテーブル・セッティングだ。1764年の創設以来、バカラと所縁のあるセレブリティ8名が食卓を囲む、という設定。ジャン・コクトー、サルヴァドール・ダリ、ココ・シャネル、マリリン・モンロー、フランス共和国大統領といったセレブリティの名を冠した、8種の異なるテーブル・セッティングを展示。

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ココ・シャネルもゲストのひとり。1964年のバカラ200周年の際に、布を裁つハサミを描いた皿がマドモワゼル・シャネルへのオマージュとして制作された。そして彼女は当時のバカラのディレクターにこう語ったそうだ。「他の人々が付け足した余分をすべて断ち落とすのに、このハサミが役立ちました」と。photo:Laurent Parrault

その隣り、ジェラール・ガルーストがクリスタル制作をテーマに描いた天蓋に囲まれた小さなスペース。ここではバカラの卓越したサヴォア・フェールに焦点を当てた展示が行われている。

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ジェラール・ガルーストによる、クリスタルを創る4つのエレメント(水、砂、火、空気)の寓意画の天蓋で覆われた小部屋。photo:Laurent Parrault

最後のスペースとなる大部屋で展開されているのは、4つのテーマだ。たとえば、赤のクリスタル。24金ゴールドのパウダーが生み出す赤いクリスタルは、バカラならでは。1867年にパリで開催された万国博覧会に出品されたサイモン・ヴェース「水のアレゴリー」が、展示ケースの中で王者の風格を放っている。また、1920年代にバカラのアーティスティックディレクターだったジョルジュ・シュヴァリエによる革新的な研ぎ澄まされたデザインのクリスタルを集めた展示も。

さて、この部屋ではガラスケース内に展示されているバカラの傑作以外にも、見るべきものがある。

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サイモン・ヴェース「水のアレゴリー」。1867年からいまも、時代を超えた美。photo:Patrick Schüttler

メゾン・バカラが10区から移転してきた現在の16区の建物は、かつてシャルル・ドゥ・ノアイユ子爵とマリー・ロール子爵夫人が1920年代から暮らしていた個人邸宅だ。1895年に建築されたルイ14世スタイルの建物で、内装はジャン=ミッシェル・フランクに任されたことで知られている。当時の貴族が暮らす邸宅に見られるブルジョワ的な内装とは大きく異なり、1926年に彼が実践したのは装飾を省いたミニマルでモダンなインテリアデザイン。中でも有名だったのは、 淡い色の羊皮紙(なめした羊の皮を薄く延ばしたもの)のパネルで覆ったスモーキング・ルームの壁だ。ミュージアムで最も広い展示スペースがこの部屋なのだが、2003年にフィリップ・スタルクが美術館の内装を手がけた際に、この壁はカーテンの下に隠されてしまった。昨秋このカーテンが取り払われ、羊皮紙に修復が施され……そして、いま、伝説の壁を美術館来訪者たちは見られるようになったのだ。

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ジャン=ミッシェル・フランクによる明るい色の羊皮紙パネルの壁が蘇った大展示室。壁に展示されているマリー=ロール・ド・ノアイユの写真も見逃さないように。photo:Laurent Parrault

またスタルク時代にカーテンで隠されていたブロンズのドアも、昨秋の改装で姿を表した。このドアはフランクの依頼を受けて、アイリーン・グレイが制作したものである。彼女がE.1027を建てる前のことだ。ガルーストによる天蓋がかかっている展示室では、1920年代のストロー・マルケトリーの壁というのが緞帳の下に隠されているという。これも、いつか見られる日が来るのだろうか。ちょっと気になる。

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カーテンの下に隠されていたブロンズのドア。

カーテンがなくなり空間には少々温かみが欠けたが、子爵夫妻が暮らしていた当時をイメージしやすくなったのは確かだ。彼らは芸術愛好家で、若いシューレアリストたちを支援していた。この邸宅は彼らの溜まり場で、サルヴァドール・ダリ、ジャン・コクトーなどが頻繁に出入り。夫妻はルイス・ブニュエルに短編映画の製作費用を提供し、南仏イエールにロベール・マレ=スティーヴンスにヴィラを建築させ、さらにそのヴィラでフィルム(『骰子城の秘密』)をマン・レイに撮影させてもいる。また、ジャン・コクトーも映画『詩人の血』の財政援助を彼らから受け……。夫妻は早い時期からモンドリアンのコレクターでもあった。子爵夫妻が暮らしていた当時のこのスモーキング・ルームの写真が、修復された羊皮紙の壁に掛けられている。1926年撮影の写真では、子爵夫妻が所蔵していた絵画、彫刻が室内を満たす様子が見てとれ、その中でバルテュスがマリー=ロールをモデルにした作品が目を引く。セシル・ビートンが1938年に撮影した写真では、また別の芸術作品が壁を飾っている。当時の貴族としては型破りに革新的だった夫妻が愛したフランクの内装を蘇らせた中で、この「バカラ、タイムレスなモダニティ」展を見るのはすごく興味深い。

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バカラの春夏コレクションはThe Golden Days of Blue Jazz。メゾン・バカラもそのテーマに合わせたインスタレーションを展開している。©Baccarat

「バカラ、タイムレスなモダニティ」展
Musée Baccarat
11, place des Etats Unis
75116 Paris
tel:01 40 22 11 00
開)10:00〜18:00
休)日・月
料金:10ユーロ

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大村真理子 Mariko Omura
madameFIGARO.jpコントリビューティングエディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。

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