パリ、話題のインテリアはすべてローラ・ゴンザレス。

PARIS DECO

ホテルのルレ・クリスティーヌが改装オープンすれば、クラシックとモダンが見事に共存する内装が話題となり、ブラッスリー・オートゥイユが改装オープンすればそのコージー・シックな内装が話題となり、シャンゼリゼ大通りにロクシタンとピエール・エルメのブティックができれば、それまた……。パリの新しいアドレスのインテリアを次々と手がけるローラ・ゴンザレス。22名が働くプラウダ・アーキテクトという建築事務所を代表する彼女は、いま、パリで最も精力的に活動している女性室内建築家といえるだろう。

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「早朝からの仕事。これは避けようがないの。その上、夜も遅くまで働くのよ!」と笑いながら話すローラ・ゴンザレス。ふたりの幼い子どものママらしく、子どもたちの写真やボントンのトートバッグなどが濃紺でまとめられた彼女のオフィスに見られる。

朝早い時間から、16区のプラウダ・アーキテクトではローラの機関銃のようにスピーディで元気な声が響く。手がけている複数の工事現場について、彼女は次々と決定をし、スタッフや業者に指示を出す。彼女のその仕事ぶりは“男勝り”と表現すると時代錯誤になってしまうかもしれないが、とにかくパワフル。常に約30カ所の仕事を同時に手がけているというが、仕事が次々舞い込むのももっとも、と思わせる。

「すごくハードな仕事だから、タフじゃないと無理ですね。クライアントや工事の業者など、誰とでも戦うことができなければならない。予算もあれば、工期もあるし……」

彼女が手がけるインテリアには、いつもフェミニティが感じられる。たとえば、今年4月にリニューアルオープンしたパリの西に隣接するイシー・レ・ムリノーのセーヌに浮かぶ島のレストランL’Ile(リル)。緑に囲まれ、田舎の村にいるような長閑な時間を楽しみにパリっ子たちが集まってくるブラッスリーだ。広々としたテラス席があり、その奥には菜園もある。

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花模様、籐、ドライフラワー、ビストロ・チェアなど、今のインテリアの流行りのアイテムを盛り込みながら、ローラらしい空間にまとめている。

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パリ市内のたとえば凱旋門からタクシーで10分とかからない場所。リラックスした雰囲気と気取りのない料理が待っている。肉料理はグリルが売り物! photos:Yann Deret

L’Ile
Parc de l’Ile Saint-Germain
170, quai de Staligrad
92130 Issy les Moulineaux
営)11:00〜翌2:00
無休
tel:01 41 09 99 99
www.restaurant-lile.com

「建物は19世紀のナポレオン3世時代のものだけど、くつろいだ雰囲気をもたらすことにしたのね。夜はボーイフレンドとディナーに、週末は友達、あるいはお祖母ちゃんと、という感じに、さまざまな世代の人が気軽にやってこられる雰囲気を作り上げたのよ。ここは改装前もレストランだったのだけど、いまとはまったく異なるものだったのよ。プラウダ・アーキテクトは手がける場所に固有のアイデンティティを与えるコンセプトを考えるのが好き。このレストランはメゾン・ド・カンパーニュ(田舎の別荘)のようにしたい、って、依頼主がここを見せてくれたときにすぐに思いました」

リルのオーナーに限らず、彼女に仕事を頼む人は場所を見せ、どんな料理を出す店なのか、どういった客層を狙っているか、どんな雰囲気が欲しいかなどをブリーフィングする。それに対して、彼女から提案をするわけだ。

「最近17区にある老舗のブラッスリーの改装も手がけたのだけれど、ここはパリの人々にとって誕生祝いを始め、なにかと家族の思い出に結び付く場所。だから、ア・ラ・モードにはしたくなかった。それほど美しい場所ではなかったので、ブラッスリーとして欠けていたフレスコ画やモザイクといった要素をもたらして、19世紀末から20世紀初頭の美しいブラッスリーを現代風解釈で提案することにしたの」

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このブラッスリーの新装開店の少し前には、ローラはパリ西部のQuai Ouest(ケ・ウエスト)の改装も手がけていたのだ。こちらはセーヌ河に面した、店全体が巨大なテラスといったスペース。

「セーヌに浮かぶ場所だけど、船の形をしているわけではなく、私には水辺の小屋のように思えたのね。それで郊外に昔よくあったガンゲット(キャバレー)をイメージして、豆電球のように天井からたくさんの提灯型のランプを下げて、がっしりとした木のテーブルを置いて……。田舎の結婚式という感じに、レンガや布など高級感のない素材をあえて選んだのよ」

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メニューには新鮮な素材をシンプルに調理した、肩肘張らない料理が並ぶ。

Quai Ouest
1200 Quai Marcel Dassault
92210 St-Cloud
営)12:00〜14:30、19:30〜22:30
休)日曜ディナー
www.quaiouestrestaurant.com

昨年末はロンドンのハロッズ、クリスチャン・ルブタンのアムステルダム店、カルティエの……と、外国のさまざまな都市名を彼女は並べる。ローラの仕事はパリとその近郊には限らないのだ。しかし興味深いことに、なぜかパリは西部に仕事先が偏っている。前出のリルにケ・ウエスト、そしてブラッスリー・オートゥイユ、ブラッスリー・ラ・ロレーヌ……。

「そうね、確かに西部が多いですね。でもアルカザールはサンジェルマン、ペルー料理のモンコは8区というように、特に仕事地区を限ってるわけではないの。言えるとしたら9区や10区には地元の小さなお店というのがほとんどで、広い場所がとれる可能性がパリの西に多いからだと思います。私の仕事って、広いスペースをもつクライアントに気に入られているの。というのも、暖かみを空間にもたらすから。ひとつの店ながら中に複数のコーナーがあって、それぞれ雰囲気が異なって……それで、お客さんは今度はあっちの席で食事をしよう、上のフロアにも行ってみたい、というようになるの。大きな場所って冷たさを感じさせがち。そうなってしまってはだめなのね」

ローラは建築家である。内装のための家具や布を選ぶインテリア・デザイナーでもなく、内装だけでなく小さな空間内の配置なども行う室内建築家でもなく、ホテルやレストランといった広い空間のテクニックを要する仕事もできる建築家である。

なぜ建築を学ぶことを彼女は選んだのだろうか。

「偶然、といっていいかもしれません。私、アーティストにはなりたくなかったけど、アーティスティックなことをしたくて、でも同時に地に足をつけて実質的なことをしたかったの。バック(大学入学資格)の試験の前に、両親に相談したら、建築家!という答えが得られたのです。 建物の出発点はコンセプトだから、とてもクリエイティブ。次にそれを実現するのはとても具体的な仕事でしょう。これは私がしたいことの全てが揃ってる仕事なんです。“この場所には魂が宿ってる”と言われるのが、私の仕事に対する最高の褒め言葉ですね」

この仕事をとても楽しんでいるというローラ。いちばんの喜びはレストランもあれば、客室もあり、というホテルの仕事なのだという。世界のあちこちのホテルの仕事をしたいと願っている。パリでも予定があるらしいが、残念ながらまだ公にできない。

「私の究極の夢は、どこかの島に夫とふたりで自分たちのホテルを持つことなんです。自転車にのって島を移動するの。そしてホテルのカーテンを変えたり、部屋のインテリアの何かをしたりで1日を過ごす……夢、ですね」

大村真理子 Mariko Omura
madameFIGARO.jpコントリビューティングエディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。

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