スポーツジムのブランシュ。建築とレストランを見に行こう。

PARIS DECO

スポーツジムのオープンが続くパリ。こんなアールヌーヴォー・スタイルの建物の中でスポーツ!?と、6月にオープンするや、パリっ子たちを驚かせたのはBlanche(ブランシュ)だ。1901年に建築された個人邸宅の建物内にプールを備えたジムができ、おまけにメンバー以外も利用できるレストランまであるのだから……。

そして驚きはまだ続く。パリ市内にはかつての個人邸宅は多数残っているけれど、このブランシュ通り21番地の建物はプティ パレの建築家シャルル・ジローの作品という、いわば “血統書つき” 代物なのだ。1900年の世界万博の際にプティ パレを見たベルギーのレオポルト2世から、自分のためにも同じものを作って!と頼まれたほどの建築家である。建物の依頼者はポール・ドゥ・シュダンスといって父親が創立した音楽出版社を引き継ぎ、作曲家ビゼーを世に出した業界の有名人。居住スペースだけでなく、建物内には彼の職業がら複数のコンサートルームが備えられていたそうだ。

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スポーツジムが入っている建物とは外からは想像しがたい、1901年建築の建物。

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プティ パレと同じ、シャルル・ジローが建築した個人邸宅だった。

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建物2階のレストランフロアは、1階の屋根の上に広がる中庭がテラス席。写真には写っていないがテラスにはテーブルが置かれ、パリの中心部にいることを忘れさせるのどかな食事&ティーの場所である。

その後この邸宅は1940〜80年代には演劇学校となり、そこで学んだ生徒はジュリエット・グレコ、イザベル・ユペール、クリスティン・スコット・トーマスなどそうそうたる顔ぶれ。しかし学校が引っ越した1997年以降は空き家となり、放置され、不法占拠され、そして見るも哀れな状態に……そこに救世主が登場! Ken Club、Klayといった洗練されたスポーツジムを経営するベンザカン兄弟が偶然にこの建物を不動産屋から見せられ、すっかり気に入ってしまったのだ。2013年に買い取り、今年の6月にブランシュをオープンさせた次第である。最先端の設備、地下には20×10メートルのプール……界隈のボボ住民、そして界隈の会社勤務者たちが続々とメンバーになり、順調な滑り出しとなった。2階のレストランB.B.はTVの料理番組から生まれたスター、ジャン・アンベールがシェフ。ヘルシーフードも交えたメニューはジムの会員たちにも好評で、また、誰にでも開かれていることもあり、正式オープンの10月を前に、徐々に外からの食事客が集まり始めている。

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ブランシュの現代的なレセプション。

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アクアジムも開催される20×10メートルのプール。

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こんな明るい場所で筋トレに励むのは、さぞ快適だろうと思わせる自然光のスタジオ。会員の年会費は1,810ユーロ。毎月支払う場合は160ユーロで、最低12カ月の契約が必要とされる。

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この建物はファサード、屋根、1階から2階への階段、温室(現在のバー)が歴史的建築物指定を受けているので、大改装はこれらを保全しつつ行われた。そのほか、ちょっとしたディテールにも、できる限り建築当時の要素を守ることにベンザカン兄弟はこだわったそうだ。たとえば、2階のレストランへの鋳鉄の階段の花の装飾は、残っていたのはふたつくらい。それらはもちろん守り、さらに同じものを復元させて階段を昔のように花で飾った。ひどく傷んでいた踊り場の床の愛らしい小花モチーフのモザイクも修復。レストラン入り口のバラの花型の組み床などは 床職人から修復不可能とまで言われたほど損傷がひどかったのだが、保存にこだわる彼らは必死の思いで、修復に意欲的な職人を探し出すことに成功した。

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階段踊り場のモザイク、手すりの花など建築当時のままに復元された。

レストランの内装を兄弟が任せたのは、トロ&リオタールという若手のデュオである。最近、彼らが手がけたラ・ペリューシュもプランタン・デパートの屋上にオープンしたところだ。レストラン内部は、ブードワール、マダムの部屋、カンティーヌ、温室(バー)の4パートに分かれ、さらに広々としたテラス席が建物前を占めている。真鍮のランプ、鏡のテーブル、マジックマッシュルームを描いたカーペット……内装のテーマはデカダンス。ベンザカン兄弟の説明よると、歓楽街ピガールに近い場所であること、そして偶然からわかったことだが建物の主だったシュデンス氏がかなりの好色家だったことから生まれたテーマだそうだ。天井に描かれた絵、トイレの壁紙……見逃さないように。

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レストランは朝から営業している。また、近隣に劇場が多いことから、近々アフター・シアターの食事も取れるようになる。

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革のベンチ席、天井の裸婦たち、マジックマッシュルームのカーペット……内装のテーマはデカダンス。

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鏡、真鍮など、デカダンスの中にエレガンスと洗練を生む素材のセレクションだ。

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現在バーとして使われている温室。テラス側からの眺めが美しい。

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バー。天井のモザイクも1901年の建築当時のままだ。

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今後もこの建物内では、いろいろな事が起きるらしい。1階は現在だだっ広いロビーホールとなっているが、ここでポップアップストアを開催したり、バーを設けてみようか、といったことを兄弟は考えている。また30席の映写室でこの先予定されていることも興味深い。映画のプロデューサーでもある彼ららしいアイデアとは……。

「ここは30席しかなく、たった30名のための単なる映画鑑賞の場として使うのでは、映画1本のレンタル料のほうが高くついてしまいます。それゆえに、ここは貸切スペースとして使って行くつもりです。じつはシェフのジャンとひとつ準備していることがあるんですよ。僕たち兄弟は何かしら新しいプロジェクトに取り組むことに、ジムのオーナーであること以上に興奮する傾向があって……。いま進めているのは、ジャン・アンベール・シネマ・クラブなんです。 随分前にオドラマというのを試した監督がいますね。上映中に映画のシーンに合った匂いを観客に嗅がせる、というもの。視聴以外の感覚も使って映画を体験するというアイデアですね。僕たちはそれを味で試してみるのはどうだろうかと考えています。つまり映画の内容に合わせて鑑賞者に料理や飲み物をサービスするんです。キッチンとのタイミングがなかなか大変だろうけど……。上映する映画によって当然メニューは異なってくるので、毎回がオーダーメイドのメニュー。こんなユニークなサービスはきっと気に入られると思いますよ」

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オーナーのベンザカン兄弟。

Blanche(スポーツジム)
B.B.(レストラン)

21, rue Blanche
75009 Paris
tel:01 42 40 12 12(ジム)
www.21blanche.com
tel:01 40 40 21 61(レストラン)
www.bbblanche.com
大村真理子 Mariko Omura
madameFIGARO.jpコントリビューティングエディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。

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