【空間と美食で2倍の贅沢 2】フランス文学賞とドゥルーアン。

PARIS DECO

フランスで最も権威のある文学賞とされるゴンクール賞。10名のメンバーが選考をし、賞の発表が1903年の賞の創設以来行われているのは、2区のレストランDrouant(ドゥルーアン)だ。1880年にバー・タバとして創業したオーナーの名前がいまもつけられているが、昨年、ガルディニエ兄弟がオーナーとなった……と言われても、この名前にピンと来ない? でも、老舗タイユヴァンの現オーナーでワインビストロles 110 de Tailleventのコンセプトの考案者と聞けば、ドゥルーアンにもクオリティとエレガンスが期待できるというものだ。

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歴史の重みを感じさせる外観とエントランス。©Matthieu Salvaing

ゴンクール賞の発表は毎年11月の初旬。2018年度の賞の発表後から、今年の発表直前にかけ、新オーナーはレストランの大改装を実行した。レストランは1920年代に当時のオーナーであるジャン・ドゥルーアンが時代にふさわしい内装を求めて求め、アールデコの第一人者と高名を得ていたジャック=エミール・リュールマンに改装を依頼。レストランは新たなインテリアを得て、単なるビストロからガストロノミーレストランへと変身を遂げ、パリの社交界が集まる場となった。1920年代以降、ドゥルーアンといえば誰もがアールデコ・スタイルを思い、目に浮かべるのは審査員がゴンクール賞を発表する場である大階段である。

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リュールマンによるアールデコ建築の傑作である大階段。©Matthieu Salvaing

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サロン・ゴンクール。毎週火曜のランチに、審査員10名が集まる部屋だ。©Matthieu Salvaing

ガルディニエ兄弟は今回の大改装にあたり、店が持つ遺産を大切にすることを最優先した。彼らが選んだのは建築家ファブリツィオ・カシラギとADのフランク・デュランである。イタリア人だが4年前からパリに暮らすカシラギ。仕事に際し、まず第一に考えるのはその場所へのリスペクトであり、もともとリュールマンの仕事に興味を持っていたというから適任者である。「白紙依頼というのは僕の好みじゃない。ドゥルーアンの仕事は場所が持つエスプリをキープする、というのが出発点だった。でも以前のままに復元するという仕事はしたくなかった。わかりやすい例をひとつあげると、階段の上のシャンデリア。これは改装前からずっとこの場にあったようなノスタルジーを感じさせるけど、実は新しい品なんです」

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4つの個室サロンを持ち、2フロアからなるレストラン。 壁、床、照明、家具……ドアノブに至るまで場所の記憶を大切にしつつ、カシラギは改装を成し遂げた。彼は照明の電球の色にもこだわり、夜はまるでシャンデリアの灯りで食事をしている雰囲気が醸し出されるように工夫されているそうだ。2階席に設置された横長の棚には、これまでのゴンクール賞受賞作の初版が並べられている。将来のため、40冊くらい追加できるスペースがとってあるという。2019年、ドゥルーアンの歴史に新しいページが開いたのだ。

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ファブリツィオ・カシラギ。33歳、気鋭の室内建築家である。©Matthieu Salvaing

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21世紀風アールデコ・スタイルの贅沢な空間。この雰囲気で提案されるランチのセットメニューSt. Augustinは前菜、メイン、デザートで45ユーロ。ディナーのセットメニューGaillonは前菜、メイン、デザートで59ユーロ。どちらもメインは肉か魚のチョイスがある。©Matthieu Salvaing

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最もこぢんまりとした個室のコレット。©Matthieu Salvaing

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マルセル・プルーストは1919年に『花咲く乙女たちのかげに』でゴンクール賞を受賞している。なぜか以前はサロン・ロダンと命名されていたが、改装を機にサロン・プルーストと改名された。壁画は彼の受賞作のタイトルにインスパイアされたもの。©Matthieu Salvaging

パリならでは、ドゥルーアンならではの空間。ここで食事時間を過ごすのはフランスのエスプリに浸る時間である。ガルディニエ兄弟がドゥルーアンのシェフに選んだのは、グループのles 110 de Tailleventで腕を振るっていたエミール・コットだ。ギイ・サヴォワ、フレデリック・アントン等の下で修業を積んだ彼、もともとはラガーマンというのが信じられないほど生み出す料理は繊細である。彼は自分同様に素材、季節、フランス料理の基礎のマスターをリスペクトする料理人のフィリップ・ミルとのコラボレーションで、クラシックなガストロノミー料理のこれぞドゥル-アンというメニューを作り出した。 洗練の味わい、軽いソース、焼き加減……もちろん素材の産地にもこだわりを見せる。

ドゥルーアンの食事ではワインも大切な役目を担っている。200種を揃えたカーヴを有するレストランのワインリストは、実に見事だ。ソムリエを味方につけて、選んだ食事に最高にマッチするワインを選んでもらおう。

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アラカルトの前菜から、「3種の肉のパイ包みパテ」19ユーロ。メニューのグラフィックやロゴを担当したのはフランク・デュランだ。©Matthieu Salvaing

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アラカルトのメインから、超クラシックな「ヴォロ・ヴォン」。ポム・ヌフが添えられて39ユーロ。©Matthieu Salvaing

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アラカルトのデザート「ブラックチョコレートのスフレ」17ユーロ ©Matthieu Salvaing

Drouant
16-18, place Gaillon
75002 Paris
tel:01 42 65 15 16
営)12時〜14時30分、19時〜24時
無休
https://drouant.com
大村真理子 Mariko Omura
madameFIGARO.jpコントリビューティング・エディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は『とっておきパリ左岸ガイド』(玉村豊男氏と共著/中央公論社刊)、『パリ・オペラ座バレエ物語』(CCCメディアハウス刊)。

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