いつまで続く? ワクチン分断。

TAO'S NOTES 2021.09.25

TAO

久しぶりに日本に帰国している。実際に日本の人々と話す機会が増え、ネットニュースやソーシャルメディアからだけでは測り知れなかった、ワクチンに対するさまざまな考え方に触れ、いろいろと考えさせられている。

私は2度のワクチン接種を5月に終えている。不安がなかったと言えば、嘘になる。私の両親は昔から健康志向が強く、有機野菜を選んだり添加物の入ったものは子どもたちに食べさせなかったり、加えて小学校入学時などに学校から強制される数々のワクチン接種を、学校に手紙を書いて回避させられていた。風邪をひいても病院には連れて行かれず、痛み止めなども飲んだことはなかった。東洋医学の予防学などには理解がある反面、西洋医学には疑いを持っていた。

そんな家庭に育った私はお陰で大病もせず、健康である。しかし大人になって、ほかの影響や自分なりの生き方を見つけた上で、病院にも行くし、よくないなとも思いつつ生理が来るたびに痛み止めを飲んでしまう。ただワクチンには正直抵抗が残っていたままだった。インフルエンザにも罹ったことがない私は、自分の体力に自信があったし、アメリカの薬局で無料提供しているインフルエンザワクチンにはいつも懐疑的だった。

しかし今回このパンデミックを経験し、紆余曲折しながらも、私はワクチンを接種した。結果、自分自身の感染と重篤症になる危険性、さらにハイリスク者などにうつしてしまう可能性が下がったという安心感を手に入れた理由から、接種してよかったと思っている。受けることにした要因には、私はアメリカの永住権を取る時に強制的に受けさせられるワクチンを数種受けているのでいまさら、という気持ちもあったし、幼少期、水疱瘡のワクチンを打っていなかった私たち三姉妹は中高生の時に水疱瘡にかかり、大変辛い思いをした上に、姉の額近くには水疱瘡の痕が大きく刻まれてしまったのを見て、ワクチンは必ずしも悪ではないと思わされたからだ。アメリカは反マスク反ワクチン=トランプ支持者だとざっくりなカテゴリーをされてしまう風潮にもあったので、誤解を招くのも面倒だと思っていた。

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このようにワクチンひとつに対して、接種するかどうかを選ぶまでに、いろいろな過去の要因や周りの影響があった。それは十人十色なんではないかと想像する。父や母が西洋医学に懐疑的だった背景には父が昔医者に手術を失敗されたという過去があるからと聞いているし、そんな父は絶対にワクチンを打たないだろうなと思っていたのだが、最近になって接種をしたようだ。母も渋っていたがようやくこの間予約を取ったと連絡があった。

帰国して久しぶりに話をした友人の中にも、ワクチン接種をするつもりはいまのところないという人が数人いた。理由を聞くと、本当にさまざまだった。
ひとりは、幼い頃身体が弱く、薬漬けの毎日で学校も休みがちの軟弱体質だったところから、お母さまの判断で薬を経ち、食生活なども改善してから体力が上がり、学校にももっと通えるようになった過去があった。もうひとりは子宮頸癌ワクチンの接種をした後、下半身の違和感や痺れなどの後遺症に悩まされたという人だった。そんな経験があれば、怖いと思ったり、慎重になるのは当たり前だと思う。

逆にワクチンを打たずに、死ななくても良かったはずの病気にかかり渡航先で命を落としてしまった知り合いを持つ友だちも知っていて、その人はワクチンの大切さを声高に謳っている。

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私は科学を信じているし、集団免疫力の大切さと他人の命を守るための責任も感じている。自分の仕事なども、もっと自由に渡航できたり、スームスにことが進む日々が来て欲しいとも思う。その傍ら、ワクチンを不安に思ったり、そもそも何かを強制されることを嫌う人の気持ちも分かってしまう。アメリカの女優のジェニファー・アニストンが、反ワクチン者とは友だちの縁を切ると言ってニュースになり、私の夫も彼女に賛同するとも言った。

「人命がかかっている」というフレーズもセットで聞くが、本当に人命を最優先で考えるなら、車で時速20km以上出せる状況は何も言われないことや、世界の死亡ケースの5人にひとりが化石燃料による大気汚染が原因とされるなか、世界の化石燃料産業はまだまだ金儲けを企み、間接的死者数を伸ばし続けているが、最優先で対処されていく様子は見られないのはどうなのかとも思う。伝染病とそれらを一緒くたにすることは間違ってるのかもしれないけど、「正義」の矛盾を感じずにはいられない。

もちろんワクチンに懐疑的である人の中には、コンスピラシーセオリーやフェイクニュースを信じているタイプの人もいるし、予防もしない上にウィルスを撒き散らすような無責任な行動をしている人がいたとしたら、それはダメだろう!と思っている。ただその人たちにもその人たちの理由と信じる「善」があるのでなかなか分かり合えないのも事実だ。

100%考え方が合う人なんてまず存在しないと思っている私は、だから人間おもしろいとも思うし、人々は他者との考え方の違いを受け入れながら生きていくしかないとも思うのだが、ことがことだけに今回の対立には頭を悩ませている人々が世界中にいるように思う。

私には、何が「正しい」、何が「正義」だと、断言し解決することはできないこの問題。ただ以前のように、多種多様な考え方の友人たちと、何の心配もなく笑いながら酒を飲む日はいつくるのだろうかと、憂いずにはいられない。

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これから寒くなるが、気を抜かず皆んなに健康でいてもらいたい。

TAO

千葉県出身、LA在住。14歳でモデルを始めた後、2013年『ウルヴァリン:SAMURAI』のヒロインとして女優デビュー。以降、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(16年)やドラマ「ハンニバル」「高い城の男」(ともに15年)など話題の映画やテレビドラマに出演。18年はHBOドラマ「ウエストワールド」に出演、日本では『ラプラスの魔女』や『マンハント』が公開され、国内外で活躍の場を広げる。インスタグラムのアカウント@emeraldpracticesでは、バイオダイバーシティや環境問題について投稿。新たにポッドキャストにて「エメラルド プラクティシズ」をスタート、ゲストを迎えてグリーンなライフスタイルへのヒントを発信していく。

※TAOのオフィシャルインスタグラムでは、連載「TAO'S NOTES」で読みたいテーマを随時募集中。コメントまたはDMにてお知らせください。@taookamoto

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