枠にはめられがちな私たち。

TAO'S NOTES 2021.11.28

TAO

ここ2週間ほど、夫の昔からの親友が泊まりに来ていた。そもそも苦手な友人で心配もあったのだが、信じられないほど打ち解けて、楽しい時間となった。

初めて彼女に会ったのは私が夫と付き合い始めてすぐだったので、8年ほど前になる。当時彼女は恋人と別れた直後で、かなりエモーショナルになっていた。

そんな時期に新しい恋人ができた夫とパートナーの私に対して祝福する気になれなかったのも仕方がない気もするが、私が彼女に対し不信感を抱いてしまった理由は、自身の子どもへの暴言が過度にあったからだ。

彼女は、当時まだ12歳ほどだった息子のことを、「あいつのせいで私の人生滅茶苦茶だ」「産まなければよかった」と繰り返し、どうしてもいい印象を持てなかった。恋人が変わるたびに住む国や街を変えて、その度に転校させられる子どもを可哀想とも思っていた。

夫がスイスに里帰りしている時、朝方まで連絡が取れない夜があり、やっと電話が繋がったら、彼女とクラブに行ってたと言われたことがあった。子どもを置いて夜遊びするのは彼女の自由だが、夫にはそんな夜遊びに加担して欲しくないと思っていた。夫は、「子どもはお祖母ちゃん家でみてもらってたんだ。たまに息抜きするのがなぜそんなに悪いんだ? 彼女は最高の母親なのに」と、彼女の肩を持ち、大喧嘩になった。

シングルマザーの大変さも頭では理解していた。子育ては綺麗ごとだけじゃないのも分かっているつもりだったし、ストレスの発散も必要だろうとは思っていた。しかしどうしても彼女を女性として尊敬できなかった。

しかし時は流れ、私の中のフェミニズムが開花した頃、私は彼女を自分の信念ではなく、社会から植え付けられた「理想の母親像」という物差しでジャッジしていたんだと気付き、反省した。自分自身「女性」という社会が勝手に決めつけた形の枠にはめ込まれたくないと考えるなら、それをほかの女性に押し付けることはナンセンスだ。

彼女はスイスでは有名なパブリックフィギュアで、そんな生き方をさんざんタブロイド誌で叩かれてきた。しかし彼女自身はどんな女性も応援するフェミニストであり、個人を尊重するインディビジュアリストだと自称する。

---fadeinpager---

ここまで読んでいただいて、それでもやはり身勝手な母親だと思う方もいるかもしれない。確かに彼女は自由奔放に生きてきている。しかし、いつも偽りなく、自分の気持ちに正直に行動する彼女は潔く、見ていて清々しいし、そういう結論を出せるのは、息子との関係がほかに例を見ないほど強い絆で結ばれているんだということが手に取るように感じられるからだった。

彼女はいまも電話口で「まだ起きてるのかクソガキ! 殺すぞ!」と汚い言葉も使う。しかしそれはふたりのジャレ合いであり、何より息子がお母さんのことを大好きで、大切でしょうがないんだということも伝わってくる。彼女もずっと息子の話をしているし、本当にベストフレンドなんだと感じられる。

近代ではいろいろな子育てメソッドなどもあり、「やっちゃいけない」「言っちゃいけない」とされていることがたくさんある気がするが、正しい答えなどない気もするし、あってもひとつではないんだろうと想像する。

「私は従来の理想の母親ではなかったけど、私は私のできるベストをやった」と言い切る彼女に、偽りはないし、早い頃から「私はあなたのママだけど、私には私の人生もあるのよ」と教えてきた彼女の息子は、現在19歳とは思えないほど理解のある青年に育っている。

フェミニストとして映画や番組をプロデュースする彼女の話は、いつもとても刺激的なものだった。酔っ払うと彼女はいつも、「私はどっちの性器がついているかで話しているんじゃない。個人(インディビジュアル)の話をしているんだ」と語り出す。

彼女のその言葉は、私の中の矛盾や疑問をスッと解かしてくれた。女を一括りにすること、母親を一括りにすること、フェミニストを一括りすること、LGBTQ+の人々を一括りすることは不可能であり、不毛である。頭では分かっていながらも、カテゴライズしたりジェネラライズすることを習慣として癖づけてしまっていた私には、行動に移すまでに時間がかかってしまった。

普段から「男だから」「キリスト教だから」「ヴィーガンだから」など分類して分析し、知ったかぶりをしたがるのが社会だが、それは自分がその人のことを知ろうとする気持ちの妨げになるし、まったく得にならないのではないか。何事も一枚岩であるものなどあらず、真の意味で個人の個性を尊重できる人になりたいなと、改めて思わされた2週間だった。

211124-tao-01.jpg
8年越しに仲良くなれた彼女にたくさんいい影響をもらえた!

TAO

千葉県出身、LA在住。14歳でモデルを始めた後、2013年『ウルヴァリン:SAMURAI』のヒロインとして女優デビュー。以降、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(16年)やドラマ「ハンニバル」「高い城の男」(ともに15年)など話題の映画やテレビドラマに出演。18年はHBOドラマ「ウエストワールド」に出演、日本では『ラプラスの魔女』や『マンハント』が公開され、国内外で活躍の場を広げる。インスタグラムのアカウント@emeraldpracticesでは、バイオダイバーシティや環境問題について投稿。新たにポッドキャストにて「エメラルド プラクティシズ」をスタート、ゲストを迎えてグリーンなライフスタイルへのヒントを発信していく。

※TAOのオフィシャルインスタグラムでは、連載「TAO'S NOTES」で読みたいテーマを随時募集中。コメントまたはDMにてお知らせください。@taookamoto

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories