世界は愉快：お祝いの食 from LA 大統領選からMLBまで、西海岸で祝う時に食べるもの。

文／稲石千奈美（在LAカルチャーコレスポンダント）

「お祝いで食べるもの」は多くが伝統に由来するものだが、街としての歴史が浅く、異なる文化や習慣の背景を持つ移住者や移民が多様性を紡いできたロサンゼルスでは、みんながお祝いで食べるものを見つけるのが意外と難しい。誕生日、結婚式、卒業式、新年、バレンタインデー、独立記念日、夏のビーチパーティにベイビーシャワーと宗教や民族伝統でないお祝いを思い浮かべると、かなりの確率で登場するのが、お祝いごとに合わせてデコレーションされたカラフルなアイシングのカップケーキたちだ。ベイカリーやスーパーでは時節で変わる祝日やイベントテーマでデコレーションされたカップケーキが派手に並ぶので、どの祝日が近いか一目瞭然になる。

ジョージタウン・カップケーキのカラフルなコンフェティで飾った新年を祝うカップケーキ。12個セットならフレーバーの組み合わせも12通り。36ドル。photo：Georgetown Cupcake

1828年に出版されたフィラデルフィアのイライザ・レスリーによる料理本に初めて公式に登場して以来、お手軽で便利なおやつとして重宝されてきたカップケーキに、スタイリッシュなスポットライトを当てたと言われるのが2000年のドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」中のエピソード。キャリーとミランダがグルメカップケーキの先駆者マグノリア・ベイカリー前のベンチで、買ったばかりのピンクのカップケーキ（当時では画期的な一個3ドルという値段も話題に！）を食べるシーンがきっかけとなり、おしゃれなカップケーキが爆発的なトレンドになった（後日このカップケーキは「キャリー・カップケーキ」と命名され、現在も購入可能だ）。

シアトルのベイカリー、トロフィー・カップケーキによる新しい大統領と黒人＆女性初の副大統領就任のお祝い。写真上：スパークリングワインやパーティグッズも入ったセット(70ドル）。写真下：バイデン・ハリス当選をデコしたカップケーキ4個セット（19ドル）。

このトレンドでレベルアップしたカップケーキは、西海岸でもおしゃれなレッドカーペットイベントや結婚式などフォーマルな祝賀でも、デザートアイテムとして堂々のメニュー入り。カップケーキはお皿もフォークもいらないし、手も汚れないので、ギャラリーオープニングや立食パーティでも便利なのだ。ミニサイズならひと口でいただける。また最近は食に対する個人の嗜好も多様なので、１個ずつ対応できるカップケーキに頼ることもある。たとえば誕生日にクラス分のスイーツを持参する習慣がある幼稚園や小中学校では、定番はカップケーキだ。アレルギーなどの理由で食事制限がある子のためには、同じように可愛いヴィーガンやグルテンフリーのカップケーキを別に購入して用意する。

2020年、全国優勝したロサンゼルスのドジャース（MLB）とレイカーズ（NBA）の人気2チーム。例年なら盛大なパレードになるところだが街に繰り出すことも集まることもできなかった。しかし、地元ファンのために人気ベイカリーのビッグシュガー・ベイク・ショップがお祝いののカップケーキを販売。

カップケーキがお祝いに適しているのはアメリカ人が大好きなフロスティングとトッピングで、デコレーションはここが勝負。色とフレーバーをお祝いのテーマに合わせ、トッパーと呼ばれるデコピックやトッピングアイテム、メッセージなどを飾る。トッパーはパーティグッズショップやECサイトでも揃うので、あれこれ考えて手作りするもの楽しい。

新年が2020年から一転して明るいよい年になるようにとの願いを、今年はカップケーキにも込めて。

カップケーキでお祝いするための参考書は『CUPCAKES & PARTIES!』（Sasquatch Books刊、25ドル）がおすすめ。お祝いカップケーキ専門のベイカリー、トロフィ・カップケーキのCEOジェニファー・シェイの著書で、デコレーションのアイデアやレシピが満載だ。