世界遺産グラン・プラスに誕生した、ドゥバイヨルの旗艦店。

Travel 2019.01.17

チョコレート愛好家にもパティスリー・ファンにも愛されているドゥバイヨル。ベルギーのブリュッセルで創立されたブランドである。35周年を迎えた2018年の10月26日、創業の地ブリュッセルに旗艦店をオープンした。初めて街を訪れる人でも、この店を見つけるのは簡単。場所は約20年前にユネスコの世界遺産に登録されたグラン・プラスなのだから。ブリュッセルに着いたら、誰もが最初に足を向ける名所といっていい。

190108-debailleul-01.jpg

グラン・プラス(大広場)の37番地にできたドゥバイヨルの旗艦店。

190108-debailleul-02.jpg

扉の上の柏のモチーフは、中世のギルドハウス時代のなごり。

190108-debailleul-03.jpg

街灯の裏に優雅に佇むドゥバイヨルは、広場を飾る小さな宝石のよう。

広場を囲むのは、多くが観光客相手のブティックやチョコレートショップ。そんな中で、ドゥバイヨルの店はプリンセス然と優雅な雰囲気を醸し出している。ほかとはちょっと違う。これはドゥバイヨルというブランドの成り立ちを聞くと、納得がいくだろう。創業者マルク・ドゥバイヨルはベルギー人ではなく、フランス人。北の街リールの出身である。その彼がなぜブリュッセルでブランドを創業したかというと、愛妻がベルギーの女性だったからだ。ベルギーではぼってりと重いプラリネチョコレートがほとんどだが、見た目もエレガントで素材も上質なドゥバイヨルのチョコレートがそれらと一線を画しているのは、フランスのDNAを持つブランドゆえである。

190108-debailleul-04.jpg

中央左手の美しい建物の中に、ドゥバイヨルがある。

190108-debailleul-05.jpg

夜も美しく、観光客の姿が絶えない広場。ドゥバイヨルの向かい側、左手の市庁舎の建物は、装飾たっぷりな15世紀のゴシック・フランボワイアン様式。

---fadeinpager---

世界一美しい広場でおいしい時間を。

作家ヴィクトル・ユゴーが「世界で最も美しい」と称えた広場に面した旗艦店は、1階がブティックで、2階がティールームという造りだ。場所の美しさだけでなく、ブリュッセルでしか味わえないパティスリーがあり、ティールームでしか舌鼓を打てないメニューがここで待っている。

ベルギーといったら、なんといっても名物はワッフル。日本のドゥバイヨルでは味わえない、軽くふわっとしたブリュッセル風ワッフルがこのティールームでは3種類も。グラン・プラス店オープンにあわせて新たに開発されたレシピによるワッフルは、トッピングなしのシンプル・バージョン(6ユーロ)でも口福は得られる。この別格の美味しさのワッフルに温かいエクアドル産のダークチョコレートのガナッシュ、レッドフルーツソース、ホイップクリームといったパティスリーに使われる上質な素材を添えたタイプは、ブリュッセルのほかの場所では味わえない繊細さだ。

3つめのワッフルはバニラアイスクリーム、温かいエクアドル産のダークチョコレートのガナッシュ、ホイップクリームを添えたもの。原料にこだわり抜いたドゥバイヨル自慢のバニラアイスクリームは、ねっとりと濃厚な味わいで、クセになりそうなおいしさ。

190108-debailleul-06.jpg

グラン・プラス店だけのガトー2種。手前はカルミン、後方はパッシフロール。テイクアウト(各4.5ユーロ)するか、イートイン(各6ユーロ)するか。

190108-debailleul-07.jpg

ワッフルにバニラアイス、温かいエクアドル産のダークチョコレートのガナッシュ、ホイップクリームを添えた Gaufre de Bruxelles Dame Blanche(9ユーロ)

190108-debailleul-08.jpg

ワッフルに温かいエクアドル産のダークチョコレートのガナッシュ、レッドフルーツ、ホイップクリームを添えた Gaufre de Bruxelles Debailleul(9ユーロ)パティスリーに使われる上質な材料のトッピングばかり。ブリュッセルのほかの場所では味わえない繊細さが、軽やかなワッフルと口の中で溶け合う。

このティールームではイングリッシュティーもオーダーできるが、おもしろいことに、むしろ日本茶とパティスリーの組み合わせを提案している。パリのサロン・ド・テでは多いが、ブリュッセルでは珍しい。ドゥバイヨルのマネージング・ディレクター、ダヴィッド・ジョルダーノ氏は、こう説明する。

「日本茶の優しい味はパティスリーを味わうお供として、ふさわしいと思うのです。それに、ドゥバイヨルがある広場はブリュッセルの一等地。すでに日本茶の味を知る舌の肥えた人々や、美味を追求する人々もこの店にやってきますからね」

ティールームは朝からオープンしている。早起きしたら、散歩も兼ねて広場までやってきてドゥバイヨルで1日をスタートするのはどうだろうか ?

190108-debailleul-09.jpg

クロワッサンひとつからオーダーできる。朝食セット(15ユーロ)にはプラス8ユーロでシャンパンをつけることもできる。

190108-debailleul-10.jpg

パッシフロールと日本茶。

---fadeinpager---

チョコレートが生える樹!? 新パッケージはちょっぴりシュール。

旗艦店のデザインはベルギーのBase Design(ベースデザイン)が担当したそうだ。創業35周年を迎え、未来を見据えてリブランディングを行うためにドゥバイヨルが組んだのが、このデザインオフィス。彼らの仕事は店舗設計だけでなく、ロゴやパッケージングなどトータルなブランドイメージを作り上げるので有名だ。今年のバレンタインチョコレートのパッケージも手がけ、さらにチョコレートのモチーフも彼らのデザインによるという。

190108-debailleul-11.jpg

現代とクラシック、伝統と未来といった、相反する価値感を表現するフェミニンな曲線を多用した店内のデザインも目をひく。

190108-debailleul-12.jpg

2階のティールームはふたつのスペースに分かれているが、どちらも広場に面している。

190108-debailleul-13.jpg

広場を眺めながらティータイム。ブリュッセル滞在の素敵な思い出作りを。

ジョルダーノ氏はブランドのアイデンティティ再定義について、次のように語る。

「ブランドにモダニティを与えるため、まずはアーカイブをリサーチしました。その結果、エレガンス、クオリティ、革新、ユーモア、オリジナリティ、フェミニティ……これらを現代の言語で表現するのがいいだろうとベースデザインと仕事を始め、ブランドの新しい価値を探ったのです。M.O.F(フランス国家最優秀職人賞)を持つ創業者ドゥバイヨルはフランスのパティスリーの世界チャンピオンですが、若い時にベルギーでキャリアをスタートし、会社もベルギーに作りました。フランスとベルギーのミックス、という大変ユニークなブランドなんですね」

クリエイションはエレガントなフランスのヘリテージをベースに、店舗やパッケージにはベルギーのシュルレアリスムやアールデコの要素を取り入れて、新しいドゥバイヨルの世界が旗艦店に築き上げられた。1階のブティックに入るや、 新しいアイデンティティを感じ取ることができるだろう。とてもフェミニン。そして、陽気な気分が漂っている。

190108-debailleul-14.jpg

アールデコ調のおしゃれな店内。淡いピンク色に迎えられ、楽しい気持ちに。

190108-debailleul-15.jpg

マグリットを例に挙げるまでもなく、ベルギーとシュルレアリスムは切り離せない。新しいパッケージにも、シュールなタッチがプラスされた。

「ドゥバイヨルは喜びのブランドなんです。生きる喜び。それがブランドのメッセージです。ドゥバイヨルは特別なエリートのためのリュクスなブランドではありません。ほかのショコラティエやパティシエに比べると確かに少し高価ですけど、それは上質な素材ゆえ。その素晴らしいクオリティがもたらす美味があり、それがエレガンスと結びついていて、この店に来れば誰もがそれを発見することができるのです」

Debailleul
Grand Place, 37
1000 Bruxelles
営)9:00〜22:00
無休
www.debailleul.com

réalisation:MARIKO OMURA

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

清川あさみ、ベルナルドのクラフトマンシップに触れて。
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
2024年春夏バッグ&シューズ
連載-鎌倉ウィークエンダー

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories