【ブリュッセル街歩き 2】モードと世紀末建築のイクセル地区。

Travel 2019.01.19

グラン・プラスのある中心部が観光客向けなのに対し、ルイーズ広場を起点に歩くイクセル地区は中心部から少し離れているので住民向けのアドレスが多い。気になるお店や場所の住所の郵便番号が1050だったら、イクセル地区だということを覚えておこう。

イクセル地区のトワゾン・ドール通りは、パリでいえばシャンゼリゼ大通りかモンテーニュ通りかというように、高級ブランドのブティックがずらり。ルイ・ヴィトン、グッチ、ジョルジオ・アルマーニ、エルメス、カルティエ、シャネル……。こうしたリュクスの波から少し外れたところに & Other Stories があり、その隣にArket(アルケット)が並んでいる。このアルケットも & Other Stories 同様に、H&Mの姉妹ブランドである。2017年に生まれ、コペンハーゲン、ロンドンなどすでに7カ国にブティックがある。そのうちのひとつが、ブリュッセルのこのイクセル店だ。なお、ベルギーではアントワープにも今年オープン予定とか。

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地下鉄の最寄り駅はPorte de Namur。Arketとはマーケットに似ているけれど、スウェーデン語で“一枚の紙”という意味だ。

このアルケットはライフスタイル・ブランド。レディース、メンズ、キッズのモードだけでなく、ホームコレクションも販売し、かつヘルシーフードのカフェも併設している。モードは極めてベーシックなのだが、ほんのりトレンド感が盛り込まれていて、価格はCOSよりは少し高めとはいえ手頃。ヨガウエアにも力を入れている。ホームコレクションは食器、ファブリック物、キャンドル、バス用品など幅広い品揃えで、10ユーロ以下でも可愛い品があるので、ついあれこれ手に取ってしまう。

カフェでは北欧スタイルのフレッシュでシンプルなサンドイッチやサラダ、ホームメイド・パティスリーなどをイートインできる。フラットホワイトをとって、ここで観光で疲れた足を休めるのも、いいだろう。

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上階のメンズウエア。ボーイフレンドや家族へのお土産に何か見つけられそう。

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1階のホームコレクションのコーナー。

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カフェだけの利用ももちろんOKだ。

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北欧のスイーツだけでなく、軽食もとれる。

Arket
Avenue de la Toison d’Or, 15
1050 Ixelles
営)10:00〜18:30(金土 〜19:00)
休)日
tel:32 2 400 27 20
www.arket.com/en_eur/index.html

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ブリュッセルはアールヌーヴォー建築とアールデコ建築の街である。街中でも簡単に、この両方のスタイルの建築物を見つけることができる。アールヌーヴォー建築で世界的に名高いのは、ベルギー生まれのヴィクトール・オルタ。彼が手掛けた4つの建築物は、「建築家ヴィクトール・オルタの主な住宅群」として、世界遺産登録されている。彼の自宅(1898〜1901年)も、その中のひとつ。オルタ美術館として一般公開されているので見学に行ってみよう。なお他の3軒とはタッセル邸、ソルヴェイ邸、ヴァン・エトヴェルド邸だ。

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オルタ邸の外観。アールヌーヴォー・ファンを喜ばせるこの曲線!

オルタ邸は居住用とアトリエ用のふたつの建物を合体させた広いもので、見どころが満載である。入館すると渡される解説書によると、この家で見逃せないディテールは5つ。家の外に吊り下げられている紋章、地上階の階段脇のラジエーター、食堂のテーブルとその秘密(ホットプレートと電話)、寝室に隠された便器、そして階段の最上階の鏡とその無限の写り込み、である。

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邸内は写真撮影禁止だが、売店で絵葉書を販売している。

この美術館の界隈、オルタが手がけたものではないが、素敵なアールヌーヴォーの建物が眺められるので、ぶらついてみてはどうだろう。

オルタ美術館へのアクセスはルイーズ広場からなら、トラムの92番に乗って3つめのJansonで下車。進行方向に沿って進み、左角にポルトガルのティールームが見えたら、そこを左折し、Amériaine通りに入る。ほんの少し行った右手が美術館。保存指定建造物ゆえ入場人数を限っているので、入り口で待つ可能性もあると覚えておこう。

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オルタ邸の界隈をぶらぶら歩くと、世紀末の建築物が見つけられる。

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トラムを降りたら、進行方向をこのブルーが見えるところまで歩く。このティールームを左折するとオルタ邸がある。

Musée Horta
Rue Américaine 25
1060 Bruxelles
開)14:00〜17:30
休)月
料金:10ユーロ

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ここまで足を伸ばしたなら、同じ通りにあるル・ティポグラフのブティックを訪問してみよう。職人の手が感じられる活版印刷の味わいが魅力のカード、封筒といったステーショナリーが待っている。商品は日本でも一部販売されているけれど、暖炉があり、活版印刷のどこかのアトリエでその昔使われていた活字の引き出しの棚があって、といった店内を見るだけでも心弾む。その引き出しを開けると、鉛の活字が入っていたりするのだ。

ブティックと同じ建物にある工房では、19世紀の機械でいまも活版印刷の作業が進められている。

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オルタ邸と同じ通り、同じ側にあるので見つけやすい。

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ブティックのエントランス。入る前に活字収納枠を使った通路の壁の装飾もぜひ見て。

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書体ごとに活字を収めるヴィンテージの引き出し。

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引き出しを開けてみると……タイポ・マニアを興奮させる光景が待っている。

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商品の種類はパリのボン・マルシェのコーナーよりも、日本の店よりもずっと豊富だ。

Le Typographe
Rue Américaine 67
1050 Ixelles
tel:32 2 345 16 76
営)12:30〜18:00
休)日

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オルタ邸は午後だけの開館。入場制限にひっかかり、待たねばならないこともたまにある。そんなときはル・ティポグラフをのぞいた後、そのまま101番地まで進んでみよう。掘り出しもの好きなら血が騒ぐような、Les Petis Riens(レ・プティ・リアン)が待っている。パリではピエール神父によるエマウスが有名だが、このレ・プティ・リアンもベルギーの神父が1955年に創設したものだ。ベルギー住民の日常生活の中で古くなり、持ち込まれた品々の山の中に、出合いがあるかもしれない。

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日曜を除き、10時30分から18時までの営業。

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黄色がテーマカラー?

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古着のコーナーのレトロ・パラダイス。何が待っているかは、その日のお楽しみだ。

オルタ邸からル・ティポグラフへと向かう途中、2本目にRue du Tabellionという通りがある。ここを右折して、どんどん進むと通りはFranz Merjayと名前を変える。その56番地にあるブティックのEva  Velazquez(エヴァ・ヴェラスケス)が、なかなかおもしろい。ベルギーのファッション関係者には知られた名前だ。

Franz Merjay通りに入ると、6番地でパン屋Matinal(木〜日 7時~16時。www.matinal.be)の前を通る。エヴァも推薦のこのお店は古代小麦を使って焼き上げるという。パンはどれもおいしいそうだ。また、ひと休みしたい、小腹を満たしたいと思ったら、エヴァのブティックに到着する手前の右手にある、Chez Franz(シェ・フランツ)へ。暖かい季節になったらテラス席が快適そうな、気軽なビストロだ。

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Chez Franz(Av du Haut-Pont 30)。

では、56番地のエヴァのブティックへ。ヴェラスケスという苗字から察せられるようにエヴァはスペイン人。店内奥のテーブルはミニアトリエで、彼女の弟ユーゴが作業をしている姿を見ることができるかもしれない。このブティックに並ぶ服のタグを見ると、3種ある。黒ラベルはユーゴによるクリエーションで、どちらかというとクチュール系。パリの高級メゾンで不要になった布を買い取って、ドレスに仕立てているそうだ。オーダーも受けている。

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ブティックEva Velasquez

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ブティックの奥で作業するユーゴ。

赤と白はエヴァのラベルである。「私は自称、“モードの骨董商”なのよ」と言うエヴァ。昔の作業着、とりわけ農民の服に興味を持っている彼女は、そうしたアイテムを含め、掘り出した古い服を洗って、修繕して、という作業を施す。それらの販売を赤ラベルで行っているのだ。「たとえば、これは1920年代のフランスのサロペット。それに、その時代に女性が起きがけにきた“マティネ”という白いレースのブラウスを組み合わせたのよ」と、ブティックの入り口に飾ったシルエットを指差した。

白ラベル。これは使用する布やボタンは古いものだが、彼女による現代のクリエーションだそうだ。古い布を使うので生産に限りはあるが、同じデザインを別素材で作るというやり方。春夏、秋冬の年2回の新作という販売ではない。

ブティックは地下スペースもある。ここではモロッコの古いショール、ペルーのウールで手織りした古い帽子などを販売していて、今度は「私は“モードの民族学者”でもあるの」とエヴァが言う。服にセカンド・ライフを与えることを使命としている彼女のブティック。オルタ美術館より気になる?

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エヴァと弟のユーゴ。

Eva Velazquez
Rue Franz Merjay 56
1050 Ixelles
営)11:00〜18:30
休)日・月
tel:32 2 223 04 11

réalisation:MARIKO OMURA

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