タイ・イサーン地方のおいしい旅。

Travel 2019.02.18

イサーン地方は、北はメコン川を経てラオスと、南から東はカンボジアと国境を接し、メコン川流域で発展した伝統文化や、古代文明の中心地として栄えた歴史を刻む遺跡の数々から、一帯は「タイの心の故郷」とも表されている。今回は、日本で本格的なタイ料理を紹介するレストラン、「マンゴツリー」とタイ国政府観光庁(TAT)が開催する、イサーンの美食を巡るツアーに同行した。「マンゴツリー」が発売したイサーン料理のレシピブック、『マンゴツリーキッチン』(ダイヤモンド社)がテーマとなった今回のツアーは、レシピブックに登場する名物料理を本場で味わい、また現地の名店でそれらの作り方を習うという趣向だ。

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チリ、ニンニク、パクチーに、グリーンペッパーとコリアンダーシードのペースト、そしてカランガルやレモングラスなどのハーブ。イサーン料理に欠かせない食材たち。

辛くて酸っぱいイサーン料理。

 バンコクを中心とする中部タイで栄えたタイ中部料理、プーケットなどマレー半島で発展した南部料理、ランナー王朝という連邦国家があったチェンマイを中心に見られる北部料理、そして東北地方のイサーン料理と、大きく4つに分けられるタイ料理。中でもイサーン料理は、「ソムタム(青いパパイヤのサラダ)」や「ガイヤーン(炭火焼のチキン)」など、日本人にも馴染みの深いメニューで知られている。

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「チャバ・バーン・イサーン・ヴィンテージ」でいただくイサーン料理の数々。

 はじめに訪れたのは、北イサーンを代表する都市で、先史時代の遺跡で知られるウドンターニー。こちらではローカルに人気のレストラン、「チャバ・バーン・イサーン・ヴィンテージ」の料理教室に参加した。
 料理教室で作るのは「ソムタム(グリーンパパイヤのサラダ)」と「トムセップ(豚の軟骨を煮た辛いスープ)」の2種類。イサーン料理の入門編とも言える「ソムタム」は、熟す前の青いパパイヤを千切りにし、ミニトマトや干しエビ、ピーナッツを加え、クロックという石の鉢に入れて叩きながら和えるのがポイント。フレッシュライムジュース、ナンプラー、ニンニク、パームシュガー、そしてたっぷりのフレッシュチリで酸っぱ辛く味つける。パームシュガーを使っているものも甘味はほとんど感じられず、バンコクなど中部で食べられるものに比べると数倍辛い。イサーン流「ソムタム」の特徴だ。

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「ソムタム」で使うクロック。タイではクロックに入れた食材をすりこぎで叩く音で、料理上手かそうでないか判断されるそう。

「トムセップ」は、レモングラス、バイマックルー(コブミカンの葉)、カー(タイの生姜)、コリアンダーリーフ(パクチーラー)、スプリングオニオン、パクチーファランなど、たっぷりのフレッシュハーブ&スパイスと、モツや軟骨を煮込んだ香りの良いスープ。ここではモツではなく豚の軟骨ですっきりとしたスープに仕上げている。

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インテリアも素敵な「チャバ・バーン・イサーン・ヴィンテージ」。

「イサーン地方の主食はうるち米ではなくもち米(『カオニャオ』)。食卓では蒸した『カオニャオ』を竹かごに入れてサーブします。『カオニャオ』に合うよう、料理の味付けは辛味と酸味を際立たせており、甘さを抑えめ。全体的に濃いのも特徴です。そしてたっぷりの生野菜やハーブを添えます」と、イサーン料理の特徴を教えてくれたのは、TATウドンターニー事務所のセクサンさん。
「農耕地帯であるイサーンですが、もともとの土壌が良くなかったことから、収穫した作物を発酵させて長持ちさせる保存食の文化が発達しました。塩漬けした魚を発酵させる調味料、プラーラーや、米を加えて発酵させたソーセージなどの味わい深い食材もイサーンならでは。また、そうした事情からバッタや赤アリの卵など、昆虫をタンパク源とした料理も豊富です」

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ウドンターニーでぜひ訪れたい、「レッド・ロータス・レイク」こと「タレー・プア・デーン」。湖一面が赤い睡蓮の花に染まるこちらは、ウドンターニーの冬の風物詩だ。開花時期は12月〜2月ごろ、1月が見ごろ。

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クメール遺跡の街で、お母さんの手料理に舌鼓。

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お正月用のお菓子、「カノム・ホー」を作ってくれたバーン・プラサット村のお母さん。

 翌日はウドンターニーから南下して南イサーンのナコーンラーチャシーマー(コラート)県へ。コラートはイサーン地方の最大都市で、このエリアの玄関口に位置している。国内最大規模のクメール遺跡が残るピマーイでも知られる地方都市だ。こちらでは、3000年という歴史を誇る小さな集落、バーン・プラサット村を訪問。村の女性たちが、新年を祝って作るという伝統のスイーツづくりを実演してくれた。
 タイでは4月13日から15日の「ソンクラーン」に正月を祝う習慣がある。この旧正月のために作られるのが、「カノム・ホー」。パンダンリーフで蒸し上げるもち米のスイーツだ。みじん切りにしたヤングココナッツとパームシュガー、ピーナッツペーストをよく練って餡を作る。粉末にしたもち米を、パンダンリーフを漬け込んだハーブウォーターでよくこねる。一口大サイズの生地をとって手のひらに広げて伸ばし、餡を包む。パンダンリーフでくるんで蒸しあげればできあがり。集落ごとに餡の味付けが微妙に異なるようで、地方色豊かなスイーツと言えるだろう。

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もっちりと蒸しあがったお餅にほのかなパンダンの香りと甘塩っぱい濃厚な餡がマッチする「カノム・ホー」。日本人好みの食感、味わい。

 バーン・プラサット村にほど近いピマーイにある遺跡群は、カンボジアの世界遺産、アンコールワットのモデルになったと言われている。「ピマーイ歴史公園」で開催された、遺跡をライトアップするイベント、「ミニ・ライト・アンド・サウンド・ピマーイ・プレゼンテーション」に参加した。

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クメール人の文化を感じさせるピマーイ歴史公園。神殿にはクメール人を思わせる顔立ちのブッダやヒンドゥーの神々の姿が彫られている。

 ここでのお目当てはローカルフードマーケット。地元の女性たちが屋台で作ってくれるのは、このエリアでしか食べられない郷土料理の数々だ。「パッ・ミー・コラート」はコラート地方の名物の焼きそばで、豚のベーコンを使っていること、タマリンドソースとソイソース、パームシュガーで味つけている点がポイント。「ソムタム」と一緒にいただく。「ナム・パー」はローカルの手作りフィッシュソーセージ。「ヤムネーム」はイサーンの発酵ソーセージ、ネームと数種のハーブを使った、酸味のある激辛サラダ。「ミー・オン」はパンダンリーフで色付けした米粉のクレープに、ココナッツとパームシュガーの餡を添え、くるくると丸めたスイーツだ。

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クレープの要領で手早く「ミー・オン」の皮を焼き上げる。

「タイ人の心の故郷」と呼ばれるイサーン地方には、ここでしか食べられない郷土の味わいが揃っている。辛くて酸っぱくてフレッシュなハーブが香るイサーン料理には、タイ料理の真髄が凝縮されているよう。ヒーヒー言いながら、カオニャオを片手に召し上がれ。

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おかずに添えられるフレッシュなハーブや生野菜。これがイサーン流!

Chaba Barn Isan Vintage
チャバ・バーン・イサーン・ヴィンテージ
4 68 Thanon Nittayo, Mak Khaeng, Amphoe Mueang Udon Thani, Chang Wat Udon Thani 41000 Thailand
+66-93-449-6000
営)11:00〜22:00
無休
Hat Kham Café
ハット・カーム・カフェ
131 Moo 3, Huen Hat Kham Cafe&Hotel, Nong Khai 43000, Thailand
+66-82-844-5522
営)6:00〜23:00
無休
http://huenhatkham.com/
Phimai Historical Park
ピマーイ歴史公園
Tambon Nai Mueang, Amphoe Phimai Chang Wat Nakhon Ratchasima 30110
+66-44-471-535
開)7:00〜18:00
無休
Red Lotus Lake
タレー・プア・デーン(レッド・ロータス・レイク)
Unnamed Rd, Tambon Chiang Wae, Tambon Chiang Haeo, Amphoe Kumphawapi, Chang Wat Udon Thani 41110 Thailand
+66-89-395-0871
ボートの運行時間6:00〜12:00
ボート料金:300バーツ(2人乗り)〜500バーツ(8人乗り)/約1時間

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photos : MIDORI YAMASHITA realisation : RYOKO KURAISHI collaboration : マンゴツリージャパン、タイ国政府観光庁

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