世界は愉快:お祝いの食 from 香港

香港の正月の主役は、ひと味違うお餅たち。

毎月ひとつテーマを設け、お国柄や街の様子をお届けする連載「世界は愉快」。1月は「お祝いの食」がテーマです。

特集

January 6, 2021

写真・文/甲斐美也子(在香港ジャーナリスト、編集者、コーディネーター)

直前まで仕事納めで慌ただしく過ごした後、しみじみと新しい一年を迎える――。そんなお正月の気分というのは、日本も香港も共通しているけれども、決定的に違うのは、そのタイミング。香港では旧暦に基づいた旧正月がお正月なので、1月後半から2月半ばくらいの間となり毎年時期が異なる。2021年は2月12日が新年の始まりだ。

どうしても1月1日をお正月と思いたい香港在住の日本人としては、新年の抱負がうまくいかなくても、数週間後の旧正月にリセットできるのがお得なところ。また干支の区切りも旧暦に従っているので、1月~2月生まれの人は日本での干支と異なることもある。

DSC01523.jpg獅子舞も香港の旧正月に欠かせない。超絶アクロバット技を駆使しつつ、とても愛らしいので、人が入っていることを忘れてしまう。

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文化の根っこの部分が日本と共通していて、お正月のお約束もいろいろと似ている部分もあるし、違う部分もあるのがおもしろい。たとえばお年玉は「利是(ライシー)」と呼ばれて、お年玉袋にあたる利是袋という封筒に入れて渡されるのは同じ。でも子どもだけではなく、大人同士でもやり取りするので大々的になるし、しかも年齢と関係なく「既婚者が未婚者に渡す」という習慣があったりするので、既婚の新入社員が未婚の大先輩にお年玉を渡すというビミョーな場面もよくある話。


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旧正月前後にはレストランでも縁起のいい期間限定メニューが多くなる。こちらは「金が余る」という言葉と同音である金魚を象った、麗しい蒸しエビ餃子。広東料理店の明珠海景にて。

親戚一同が集まったり、初詣をしたり、年始回りをしたり、おめでたい飾り付けをしたりという習慣も共通している。そして日本で言うところのお正月の食べ物である餅と似たルーツを感じさせる食べ物も存在する。それが「年糕(ニンゴウ)」だ。

基本のタイプは、餅米とココナッツジュースとキビ砂糖を使ったデザート風の椰汁年糕(ジェザップニンゴウ)。飲茶でおなじみの大根餅こと蘿蔔糕(ロウバッコウ)も旧正月に食べる習慣がある。こちらは甘いものではないが、この時期は年糕の一種のように扱われる。高級レストランやホテルがオリジナル版を作って豪華なパッケージや贅沢な食材を競い合っている。

18569.jpgザ・ペニンシュラ香港からいただいた椰汁年糕(写真左)と蘿蔔糕(写真右)。好みがわからない外国人には椰汁年糕が贈られることが多い気がする。

たいていは円形か長方形で、これを薄くスライスして焼いて食べる。どちらも外側をカリッとさせて食べるのが最高。しかしきれいにおいしく焼くのには慣れが必要で、特に甘くてねっとりした椰汁年糕は、すぐに焦げ付かせてしまいがち。日本のお餅とは違うけれども、外がカリッ、中がふっくらと膨らみ、モチっとした食感はくせになるおいしさ。砂糖もたっぷり使われているし、とにかくおいしいのでどんどん食べたくなるなど、ダイエットの大敵であるところも日本のお餅と同様、いや、危険度はそれ以上?


15739.jpgシェフの手で完璧に焼き上げられて、外側がカラメリゼされた椰汁年糕。

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ちなみにデザート系の年糕にもさまざまな種類がある。私のお気に入りは、キンモクセイとクワイを使ったもの。香しくて爽やかな風味と、シャキシャキっとしたクワイの食感、透明感のある見た目も華やかだ。

18614.jpgキンモクセイとクワイを使った桂花馬蹄年糕(グワイファマアタイニンゴウ)。優雅な香りの牡丹茶などの白茶に合わせるのがお気に入り。

いっぽう、甘くなくおかず系である蘿蔔糕は、冬の味覚である大根を主役に、精製前の白米であるうるち米、中国ソーセージや干しエビなどを使って作られている。最近、高級品では「日本の大根や桜エビ使用」を売りにしている店も多数ある。シェフたちに理由を聞くと「品質が高くて明らかにおいしく仕上がるから」と教えてくれた。

17759.jpgシェフが蘿蔔糕を焼いているところを見学。油を薄く敷いて、火加減に気をつけるのが基本中の基本。
DSC01014.jpgレストランでいただいた完璧な焼き上がりの蘿蔔糕はうっとりするようなおいしさ。

こちらも上手に焼くにはコツがいるけれども、やはり外側を少し焦がして焼き上げて、干しホタテ貝などをたっぷり使った香港名物のXO醤など、少し辛いソースを添えていただくのが最高! こちらは代々伝わるレシピで手作りする家庭も多い。深みのあるプーアール茶と一緒にいただけば、ほのぼのと心も身体も温まる。

香港でのコロナ禍は2020年の旧正月から始まったので、あれから一年経ってしまったというやるせなさと、厄介な年をリセットして明るい年の始まりになってほしいという願いが入り交じって、いつもの脳天気な旧正月とは少し趣が異なりそう。とにかく世界中が愉快で楽しい年になりますように。

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DSC08156.jpg悪運を吹き飛ばし幸運を呼び込むという風車で有名な車公廟での初詣。たっぷりの線香も供えて新年の幸運をお願いしたいもの。

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photos et texte:MIYAKO KAI

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