光が織りなすコントラストが美しい、
サーペンタイン・ギャラリー・サマー・パヴィリオン。

ミツコのロンドン・ウィークリー

今年で11回目となる、毎夏恒例のサーペンタイン・ギャラリー・サマー・パヴィリオンが7月1日にオープンしました。世界の著名建築家が、ケンジントン・ガーデンにある、このギャラリーの脇にテンポラリーなパヴィリオンを建てるもので、今年は何と、スイス人建築家のピーター・ズントー(Peter Zumthor)の作品。建築界で名誉あるプリツカー賞ほか、日本の高松宮殿下世界文化賞も授賞している巨匠です。


0704london_01.JPGケンジントン・ガーデンのハイド・パーク寄りのところにあります。手前の道路をはさんで、反対側がハイド・パーク。サウス・ケンジントン駅から行くのがいちばん近いです。

これまでも、オスカー・ニーマイヤーやダニエル・リベスキンド、レム・コールハース、伊東豊雄さんをはじめ蒼々たる建築家が、毎年それぞれにすばらしいパヴィリオンをデザインしてきており、それが無料で自由に楽しめるとあって、みんなが楽しみにしているイベント。一般のオープニングに先がけて開かれるサーペンタイン・サマー・パーティーには、トップ中のトップ・セレブが毎年顔を揃えますので、ロンドンの夏もフルスイングだなといった気分になるのも、この時期です。


0704london_02.JPG黒い長方形の建物。一見、堅固な建物風ですが、実はベニヤ板にペイントしてあるそうです。

さて、そのピーター・ズントーのパヴィリオンですが、一見すると、ただの黒い長方形の箱形の建物。両側に入り口がふたつずつ付いています。入ると、まず、天井の高い真っ黒な通路があって、また、入り口が2カ所見えてきます。そこからこぼれてくる光で、それが入り口だとわかるのですが、次にそこを入ると、写真でご覧の通り、天井が空に抜けた、つまりは屋根のない庭が眼前に現れる、というものです。"hortus conclusus"と題され、これは"囲まれた庭"という意味だそうですが、なるほど、黒い壁と通路に囲まれた、長方形の庭になっています。


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0704london_06.JPG光の射し方によって、コントラストの付き方も変わってきます。ラインが美しい。

何だか、ちょっとZENな感じもする、ほっと落ち着ける空間、というのが、私の最初の印象でした。独特の静寂感があるのです。よく見ると、屋根がないのは庭の上の部分だけなのですが、圧迫感などはまったくなく、すっきりと、どことなく透明感すら感じさせます。

庭の周囲は通路になっており、ぐるっと一周できるのですが、その通路の上の屋根に当たる部分の外側に斜めに角度が付けられているので、時間が経つにつれて、光の射し込み方が変わり、庭はもちろんのこと、その空間全体に美しいコントラストがついて、見え方を変えるのです。黒い壁、コンクリートの通路、庭の中の植物そしてそれらに当たる光・・・。それらが織りなすコントラストが時間の経過や天候の具合によっても変わってくるので、見ていて飽きることがありません。きっと、庭の部分だけがすっぽり光につつまれる、という瞬間もあるのでしょうね、残念ながら、私はその時間には行きませんでしたが。

当然のことながら、屋根の横のラインと角度の付け方など、さすがに上手く計算されていて、どこを、どこから撮っても、そのラインの出方が美しく、それだけで絵になります。まさに、建築家の英知が自然の美を取り込んで創りだした見事な世界。巨匠の巨匠たる所以という感じで、素人は本当に感心してしまいました。壁に沿って、ベンチが張り巡らされ、その部分は常にシェイドになっていますので、読書などするのには最適でしょう。庭自体は、オランダ人のランドスケープ・デザイナー、ピエ・ウドルフ(Piet Oudolf)氏の手によるものです。


0704london_07.JPG壁に沿ってベンチが巡らされ、テーブルや椅子もあります。パヴィリオンの外に飲み物を販売するバンが出ていますので、そこで買って持ち込むこともできます。

オープン当日は、開館の10時から既にひっきりなしに人々が訪れ、注目度の高さが忍ばれます。もとより、公園を散歩する住民や、観光客も多い所ですので、みな、立ち寄っては、ぐるっと庭を一周したり、椅子に腰掛けて談笑したり、読書したり、瞑想あるいはウトウトしたりと、思い思いに過ごしていました。それこそが、毎年建設される、このパヴィリオンの目的。そして、この"hortus conclusus"の意図するところでしょう。


0704london_08.JPG植物に水を巻くもの、係員の仕事です。

ピーター・ズントーは、もともと"庭"をやりたいと考えており、それを試すいいチャンスと実験的にやってみたそうですが(デザイン料は無料だそう)、彼ほどの巨匠アーティストのそんな作品に気軽に触れられるなんて、やっぱりロンドンっていい街だわと、こういう時に思ってしまいます。10月16日まで開いていますので、これから、季節や光の差し方の変化に応じて、この空間がどんな風に見え方を変えて行くのか、それもまた、楽しみです。雨の日なんかも、きっと素敵でしょうね。


0704london_09.JPGすぐ隣のサーペンタイン・ギャラリー。こちらも入場無料です。

ケンジントン・ガーデンは、道路を挟んでハイド・パークと隣り合っていますが、ウィル&ケイトのロンドンの住まいとなったケンジントン・パレスや、ピーターパン像などもあり、ハイド・パークよりは小さいですが(それでも十分広大)、さまざまな表情を持つ美しい公園です。私はむしろ、こちらのほうが好き。一度、訪ねてみて下さいね。


Serpentine Gallery Pavilion
10月16日まで、毎日10時~18時までオープン。入場無料。

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