フィガロが選ぶ、今月の5冊 日常に潜む怪異のかけら、柴崎友香が描く怪談小説。

Culture 2017.06.13

『かわうそ堀怪談見習い』

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柴崎友香著 角川書店刊 ¥1,620

恋愛小説家の肩書を返上するべく、まったく別のジャンルの小説を書こうと、怪談の取材を始めた主人公が遭遇したのは、日常の中にある小さな怪異だった。なぜか書斎から消えてしまう本、突然現れた大きな蜘蛛、誰かに見られている気配、霊感があるわけでもない彼女が、だんだん感覚が研ぎ澄まされ、やがて自分は何か重大なことを忘れているのではないかと思い当たる。ささやかな異変が呼び水となってよみがえる記憶の怖さ。「場所」にまつわる記憶を描いてきた柴崎友香にとって、怪談は新境地というより本領発揮のジャンルだったのかもしれない。

*『フィガロジャポン』2017年6月号より抜粋

réalisation : HARUMI TAKI

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