韓国で大絶賛、『哭声』出演の國村隼インタビュー。
インタビュー
デビュー作『チェイサー』と第2作『哀しき獣』で、韓国を代表するひとりとなった映画監督ナ・ホンジンの待望の最新作『哭声 コクソン』。その中で、のどかな片田舎を恐怖に陥れる謎の男を演じた國村隼は、韓国のアカデミー賞である青龍賞の男優助演賞と人気スター賞の2冠を獲得。青龍映画賞史上、外国人の受賞は初めてという、快挙を果たした俳優に聞いた。
———まずは、『哭声 コクソン』にご出演なさった経緯を教えてください。
國村(以下、K):「ナ・ホンジン監督が僕の出演した映画を見て、「この役者が欲しい」と言ってくれたらしくて。台本とともに『チェイサー』と『哀しき獣』のDVDが送られてきて、その後、監督が日本に来てくれて、映画について話し合い、じゃあ、やりますか、となったんです」
———実際、現場の印象はいかがでしたか。
K:「韓国に居る時、映画関係の人から「韓国映画のスタンダードがナ・ホンジン監督の現場だと思わないでね。あのタフさは異例だから」と度々言われるほど、確かにタフな現場で(笑)。ナ・ホンジン監督はというと、才能が人の形をしているといった印象。プライベートで食事をしたり、雑談している時は、人のいい人間。でも一端、現場に入ったら、人が変わる。いまの映画のこと、この1ショットのこと以外は一切頭にない。どうして俺のイメージが伝わらないんだー!と語気荒く、怒ってるなと。僕は、しみじみ韓国語がわからなくてよかったと思いました(笑)。
でも、それだけ1シーン1ショットに内包されるエネルギー量は膨大で。大きなスクリーンで見ていただけると、それをビリビリと感じてもらえると思います。ホン・ギョンピョさん(『母なる証明』『スノーピアサー』)というカメラマンも素晴らしいですからね」
———今回の謎の男を、國村さんはどのように捉え、演じられたのですか。
K:「宗教によっては悪魔であったり、神であったり。でもテーマとしてあるのは、あくまでも人。リアルに生きている人の深い思いみたいなもの。それがコミュニティという形をとったときに、外部から入るものを排除しようとする、そんな人間の思いが生み出す化け物じみたものを具現化したものとイメージしました」
———観客も、この男は悪魔なのか、そうでないのか揺れながら見ることになりますよね。ナ・ホンジン監督とはどんなお話し合いを?
K:「監督からラストのシーンで「神か、悪魔、どっちのつもりでやる?」と聞かれたんです。僕は、神様の前で遊んでいる悪戯っ子の悪魔のイメージでいくと可愛いかなと話したんです」
———恐ろしい役ですが、その一方でとても静けさが記憶に残っているのですが。
K:「お芝居はひとりでやるものじゃなく、カメラも含め、いろんな人たちのクリエイターの共同作業です。相手のやることを受け取って、次にこちら側から返す。韓国の役者はみな、たとえばチョン・ウヒさんにしても年はお若いが(1987年生まれ)、モチベーションを高く保ちながら、高度な技術を持っている人ばかりでした。クァク・ドウォンさん(國村さん演じる男を追う警察官役)がつるはしを掴んでの対決シーンでは、僕の方はある種、カリスマに見えなきゃいけない。普通の人としてのリアクションではいけないから、僕は無反応に演じた。それを役者クァクさんが面白がってくれると、そのまま僕の表現にも繋がっていく。その辺りがスリリングでおもしろかったですね」
———韓国でのヒットの様子は耳に入ってきましたか。
K:「韓国での公開時、僕は日本にいたので、入場数がすごいとだけ聞いていて。青龍賞の人気スター賞を受賞すると聞いた時は、あの役で、どういうこと!?と驚きましたけどね(笑)」
———ジョン・ウー監督の『追捕MANHUNT』もありますし、海外のオファーが殺到しているということで、今後、海外作品への出演が増えそうですね。
K:「香港で3年ほど映画撮っていたこともありますし、誰かと映画を撮ることがおもしろいので、私のスタンスは別に特に変わりません。でも海外作品が増えれば、僕としても楽しみが広がることになるでしょうね」
監督・共同脚本/ナ・ホンジン
出演/クァク・ドウォン、ファン・ジョンミン、國村隼、チョン・ウヒ
2016年、韓国映画 156分
3月11日より、シネマート新宿ほか全国にて順次公開
©2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION
interview et texte : REIKO KUBO