Music Sketch

創り上げることへの対話〜青木ロビン×青木崇高 対談(後編)

Music Sketch

引き続き、10代からの友人であるdownyのフロントマン、青木ロビン(ミュージシャン)と青木崇高(俳優)による対談を……。

■ 歳を取るとマインドが広がるけど、消化するのに時間がかかる

青木崇高(以下、M):「“downy(の活動)を1回やめよう”って思ったきっかけは何だったの?」

青木ロビン(以下、R):「1年に1枚アルバムを出してたんだけど、本当に疲れちゃって。あんなに一生懸命作ったのに、またすぐ次のアルバムを作らなきゃいけないって、喪失感が半端ないし、次に向かうのに結構エネルギーがいる。ちょっと休みたかったっていうか、単純に音楽が嫌いになりそうだったかな」

M:「これは本当にもう根詰めてやった人じゃないと、たぶんそこには絶対いけないと思う」

― 崇高さんは、役選びはどうしているのですか?

M:「お話が来たものは何でもっていうわけじゃないですけど、やったことがない役とか今のうちにやっておかないと、40歳とか50歳とかになってきたら、たぶん食わず嫌いになってくると思う。感覚が鈍くなる可能性もあるんで、そこは気をつけています」

R:「さっき撮影しながら2人で、“やっぱり歳を取るとマインドが広がるけど、消化するのにちょっと時間がかかる”っていう話をしてて。崇高は、“すごい人に会うと落ち込む”って話もしてて」

M:「役者さんだけじゃなくて、表現者とかの生き方に関して」

R:「俺は“今、自分はどこにいるのかな”って思う時期でもあるし、若い頃だと“なにくそ”が先に立っちゃって、すごい人がいても“俺の方が凄い”って思い込もうとしていたけど、この歳になるとすぐ人のことを受け入れられるようになってるけど、感動すると共にショックを受けたりとか。でもそのことを消化できない自分と、どう向き合っていくかっていう年代な気がするな。だから仕事を頑張るって人達が“40ぐらいまでが働き盛りだよ”って自分たちが子供の時に言っていたのが、最近ちゃんとわかってきて(笑)」

M:「なんだかんだでその言葉が残ってきてるっていうのは、やっぱりそういうことなのかな」

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青木ロビン(ミュージシャン)。2000年に結成されたdownyのフロントマン。バンドは2004年から9年間活動休止していた。他に、Dhal、zezecoとしての活動に加え、空間デザインやアパレル・デザイナー等、多岐にわたって活躍している。
http://downy-web.com/
Photo:笹原清明

 

― 沖縄のような東京とは時間軸も環境もまったく違う場所でdownyの音楽を作るのはとても大変な気がします。

R:「ね(笑)。曲を作ってる間に子供と海に行ったりするじゃないですか。“俺、何でこんな暖かいところにいて、こんな冷たい音楽しか作らないんだろう”って、夕日の写真とか撮りながらおかしいなって思って(笑)」

M:「夕日を前にしてdownyの曲作らないでしょ(笑)」

R:「不思議なもんで、そこだけ違うスイッチがあるんだよんね。downyの音を再生した瞬間にdownyの世界に持っていければいい、という気持ちで作ってるので、そこに生活が介在していない。もちろんみんな人間だから微々たるものでちゃんと熱量は残っていくけど、そこに風景とか動くようなものがないというか。絵を1枚描いて、それを毎回ライヴハウスに持って行くような感覚なので。downyは美術館が変わったら、照明が変わるでしょ?、ぐらいの感覚でいます。1個ずつ絵を描いて、今日はどの順番で見せていく?みたいな感じというか」

「左の種」第一作品集『無題』に収録。

■ 心を物質化させて役に取り組む

M:「そのスイッチっていうのを自分に置き換えてみたら、映画の続編で1年空いたりすると、“あの感じ”っていうのは体のどこかに残っていて。それを引き出すきっかけは、例えば『るろうに剣心』の相楽左之助だったら“ジャンプして、バーンと顔を叩くと役に入る”というスイッチでやってたから、キャラクターって物質化されているというか、その連続性がちゃんと自分の心に役を作ってるというか。downyはずーっと時間が空いていたから、そのスイッチは揺るぎないもので、何か新しいものを入れても絶対downyであり続けて進化していくんじゃないかなって思う」

R:「すごいね。そうするといっぱいスイッチがあるってことだよね(笑)」

M:「そうそう。集中のスイッチとか記号にする時もあるし、心を物質化した方が整理整頓がつくこともある」

― 心の物質化?

M:「心の整理が必要な時ですね。例えば去年やっていたドラマがあって、その後すぐ舞台があって、“こっちをやりながらの次の準備が全然できない、どうしよう”ってなって。刑事の役だし、もうひとつは全然違う役だしで、普通に1個1個やればいいっていうだけなのに苦しくなっちゃう。心を扱っている仕事な分だけ、そういうことは起きると思って、“よし、今日はちょっとゆっくり頭の中を整理しよう”と思い立ったんです。まず、“しんどいっていう状況は悪くはない”、なぜかというと、“ちゃんと仕事に向き合おうとしている姿勢がある”、“両方とも愛そうとしている”、だから苦しいわけで、“これは大丈夫、作品に対する愛情はあるぞ”と思って。ただその作品をどうやって心の中で整理していくかと思った時に、自分の心をお盆にして、2つカレー皿を乗せられない状態なんだなと思った」

― 面白いですね。

M:「“じゃあ、両方を乗せるためにはどうしたらいいんだろう”、“2枚重ねればいいんだ、そうすれば心には乗るんだ”って考えていって。“心にこの2枚が乗っている状況って、どういう状況なんだろう”って思ったら、役を重ねるっていうことで、設定が全然違うけど、“これだ!”って思ったのが、ひとつの役は刑事の設定なんだけど、そいつの物語に全然関係ないけど、そいつの大好きな映画がもうひとつの役に関するもので、彼がその原作をたくさん読んでいるっていう設定にしたんです」

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青木崇高(俳優)。映画『るろうに剣心』シリーズでの相良佐之助役や、NHK大河ドラマ『龍馬伝』後藤象二郎役をはじめ、 映画やTVドラマ、舞台などに多数出演。趣味は世界を旅することで、絵画の才能でも知られる。主演映画『雨にゆれる女』(11/19(土)レイトショー公開)。
http://stardust-blog.net/aokimunetaka/
Photo:笹原清明

 

『雨にゆれる女』予告編

R:「それ、めちゃくちゃ面白いな」

M:「そう思っただけで心がスーっとラクになって。それをやっているっていうことは“大丈夫、もうひとつの役もちゃんと意識してる、背いてない”っていうことだから。で、作品を演じているっていうことは、ちょっと引いてみればこいつの好きな映画に繋がってるということだから、ちゃんと着地したっていうか」

R:「役を通して役を見ているわけだ」

M:「そうそう。だからそのやり方を見つけた時、俺は天才的な発想のひとつを思いついたかも、と思って(笑)。本当に身体がその瞬間ラクになって、“大丈夫、集中できる”ってなった。発想で心がラクになるっていうのは、自分がやっている演技というか芝居の最たる部分でもあって。心っていうのは面白いように働くんだなっていうのはありました」

R:「いい仕事をするには、やっぱりコントロールしなくちゃいけないもんね」

M:「やっぱり詰め込んだ時の自分に酔うのはちょっと危険だし、クリエイティヴってある程度までは行くけど、それだけではその次に行けないような気がして。俺も結婚しましたけど、プライベートが膨らんでいくところの表現っていうのは絶対変化していくんじゃないかな」

R:「介在するわけだからね」

M:「そう。次にパパ役をやるとしたら何かしら変化はあるだろうし、作品作品でピックアップする要素は変わると思うんですけど、やっぱり素材が増えるということはある」

R:「すげえ。崇高が俳優だ(笑)」

M:「(笑)こんなこと言ったこともないしね」

R:「でもこういうのを知りたかったし、面白い」

M:「理論のような自分の心がスムーズに動くようなアプローチって、ミュージシャンだったり、いろんな表現者にはそれぞれにあると思う」

R:「続けていられる人って、それを見つけたから続けているんだろうなって思う。俺は休むことで手に入れたけどね」

「曦ヲ見ヨ!」第5作品集『無題』に収録。

■ 音楽を人それぞれが持っている記憶と融合させたい

― お互いに影響されている部分や刺激されている部分はありますか。

R:「刺激されてますよ、(俳優をやっているところを)見るから。“頑張ってるな”ってシンプルに」

M:「俺はやっぱり10代の時にミュージシャンとしていろいろやってるっていうことが本当にショッキングでしたし、すごいなって。それでしかもdownyは独特だったし、それもただ奇を衒ってではないというのは感覚としてわかったんです。すごいところを探っているバンドだっていうふうに思ってたんで」

R:「さっきの話のようにdownyの曲は風景がない分、1枚の絵で。別に先入観は与えたくないんだけど、お客さんがdownyのこの曲を赤や青に感じるかはこっちが決めたい。だからライヴに来た人は、例えばある曲が炎の映像だとすると、次にライヴに来てその曲を聴いたらたぶん炎を連想してしまうと思う。そういうことがやりたくてdownyを始めたから、ステージの真ん中にバンドがいなくて映像があるのはそういう感覚から」

M:「音という情報から脳が認識して、浮かんでくるものが火であったり、映像を誘いこむ音を作るっていう」

R:「そうそう。そんな感じ。しかも今回のアルバムは匂いを意識していて、自分で調香してアルバムの香りみたいなのを作ろうかなと。それを“アルバムを聴く前に嗅いでみてください”っていうのをやろうと思ってて。ライヴ会場でできればベストだけど。例えば俺はブルーハーツを聴くと高校の時の坂道を思い出したりする、ああいうのもこっちがちゃんと仕掛けられるというか」

M:「人それぞれが持っている記憶と融合させて、音楽も絶対その人のオリジナルのものになっていくという」

R:「そうそう。そうなるといいな」

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3歳違いという、仲の良い兄弟のような2人。Photo:笹原清明

 

最後は2人とも同じ3月生まれということで誕生日会を一緒にやっていた頃の話から、お互いが知っている10代、20代、30代の話、そして5年後、10年後はどうなっているか、という話に……。話の尽きないお二人だった。

*To be Continued

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