パリ中が注目する夫妻の、美しいアパルトマン。

PARIS DECO

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Julie Revuz/ジュリー・ルヴューズ
Dallas PRオーナー

 

ホテル、インテリア、デザイン関連のPRオフィスを2012年12月にたちあげたジュリー。彼女が担当するオテル・パラディはモダンできれいな内装だけど、価格は手頃、という新しいコンセプトでオープンし、パリのホテル業界に新しいトレンドを築いた。ここは今やデザイン界の寵児となったドロテ・メリクゾンが初めて手がけたホテル。ホテルの仕事をしたことがないという彼女を起用した若手実業家アドリアン・グローガンは、ジュリーのご主人である。彼はその後、再びドロテと組んでオテル・パナシュを生み出した。デザインに拘りを持つふたり。いったい、どんなアパルトマンに暮らしているのだろうか。

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リビング・スペースで目を引くのは、ジュリアン・コロンビエのチョークアート。ブルーのソファに淡いピンクのクッションという色合わせは、すぐにでも真似したくなる。右奥に見えるほんのりピンクのスペースは、エントランス。棚の内側には、新品だが古い品のようにシミがついた鏡が貼られている。

 

5区に暮らしていた彼らは、2年半前、2人目の子供の誕生に際して、広いスペースが5区より手頃な価格で入手できる10区に引っ越してきた。アドリアンの仕事場に近い、というのも理由のひとつだ。

「この界隈、動きが激しいわ。フォーブル・ポワソニエール通りを毎日通るのだけど、毎日新しい店やレストランを発見するのよ。次女のエメの面倒を見に、母が毎週きてくれるのだけど、 毎回“また、新しい店ができたのね!”って興奮してるわ。パリはダイナミックじゃなく、ミュージアム・シティと皮肉られるけど、それはパリの場所次第ね。10区のこのあたりにはロンドンのようなエネルギーが感じられる。ロンドン以上かも……」

 

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左:ジュリーの仕事スペース。カーテンなどもふたりは上質な素材を好んで選ぶ。椰子の壁紙は老舗Pierre Freyの品だ。
右:夫のアドリアンはこのソファに横になって仕事をするのが好き。そんなパパのところに子供たちも集まって一家で団欒。

 

若いインテリアデザイナーや新しいホテルのPRというジュリーの仕事は、そのエネルギーの一端を担っているといえそうだ。アパルトマンはとても広く、具合良く奥まった一角を彼女はオフィスとして使っている。壁には、明るいグリーンの椰子の壁紙を選んだ。

「仕事をするならパームツリーの木の下で。これって悪くないって思っていたの。子供が帰ってくる時刻になると、リビング・ルームとの境の引き戸を閉めて仕事を続けるのだけど、エメは小さい頃は私が戸の裏にいるってわかってなかったのよ」

2歳半を過ぎた今は、戸が閉まっていたら開けて入ってくるそうだ。椰子の壁の前にはコンピューターが2台置かれ、椅子も2脚。

ご主人が隣で仕事をしていた時期もあったが、オテル・パラディがオープンした後はホテルにいることが多く、また最近は彼が別の場所にオフィスをみつけたということで、ジュリーが椰子の壁を独り占めしている。

 

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左:リビング・スペース(右)とダイニング・スペースの境には、もともとあった古い木の梁の周囲に新たに壁と柱を作り上げた。
右:エントランスはピンク色のコンクリート。照明とともに温かみのある雰囲気を生み出す。

 

引っ越してきたときから、基本的な間取りは変えてない。彼らの前にはここには絵画の修復家が住んでいて、リビング・ルームは濃いプラム色に塗られ、壁一面を絵画が埋めていたそうだ。だだっ広い空間の中央に、木の梁が二箇所にニョキッと立っていて……。

「このアパルトマンが気に入ったのは、この古い木の梁、それから牛の目と呼ばれる楕円の窓があったからなの」

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左:ジュリーがこのアパルトマンで気に入っている要素のひとつは、楕円の牛目窓。窓の外に見えるのは、隣の建物へと続いていた、かつての渡り廊下だ。
右:かつての渡り廊下の中間が壁で仕切られ、この半分の部分の奥に鏡を貼りベンチを置いたのはクロエのアイデア。以前は温室の気分を演出したく、壁をターコイズ・ブルーに塗って植木鉢を並べていたスペースだ。今では子供達が人形遊びをする、お気に入りの遊び場となっている。

 

長女のマノンは、この広いスペースで自転車に乗ったり、ローラースケートをしたり。子どもには天国だが、ジュリーにしてみると音の反響が大きく、温かみに欠ける家という気がしていた。ソファを置いても、いまひとつ雰囲気が作れない。どうしたらいいのだろう。ジュリーもアドリアンもインテリアに対して、明快な好みは持っている。とりわけアドリアンは装飾やデザインは情熱を傾ける分野である。それでも、だだっ広いアパルトマンをふたりともどうしたらいいか途方に暮れてしまった。

エメが生まれたばかりでジュリーには時間がない。そんな時に仕事で知り合ったのが、室内建築家のクロエ・ネーグル。彼女にジュリーは自分たちの問題と趣味を説明しつつ、早速相談をしてみた。

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左:リビング・スペースからダイニング・スペースを眺める。
右:クロエ・ネーグルがジュリー夫妻のためにデザインしたテーブル。椅子はベルトイヤだ。右後方に見えるのはキッチン。

 

「クロエはまずアパルトマンをあちこち撮影し、それから、いろいろな提案をしてくれたの。どのように空間をデザインするのがいいか。その点で彼女が私たちを助けてくれたのね。リビングの中央の梁の周りに壁をつくったのは、彼女のアイデアよ。周囲の壁は上部を帯状に白く残し、淡いグレーにペイント。それでレリーフが生まれ……。エントランスも空間を二分して、それぞれにベンチを置き、その下に靴を収納できるような引き出しを作ったので、とてもファミリーな感じになった。玄関からリビングの途中のピンク色の廊下は、コンクリートをワックスがけしたもので真っ平らではないの。これが普通のペイントした壁にない魅力となってるのね」

さすがプロの眼である。空間に動線を生み、温かみをもたらしたクロエの仕事に、ふたりは大満足。ダイニング・スペースに置かれた漆の脚のテーブルもクロエのデザインだという。この一点 もののテーブルを囲んでいるのは、ベルトイヤの椅子だ。

「これは若い時から1脚づつ、買い足していったのよ。長いこと時間をかけたわ。最後の2脚は同時だったけど……。新品は高すぎるので、インターネットで探して古いものを買ったの。状態がいまひとつのもあるわ」

今やパリを代表するボボ・カップルのふたりだが、これは若い時代のなんとも微笑ましい思い出話である。

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左:壁の上方に描かれたジュリアン・コロンビエのチョークアート。
右:ジュリアンの仕事の進展をジュリーは記録に残した。

 

このアパルトマン作りにひと役買った人物が、もう1名いる。それは人気のチョーク・アーティストとして最近来日もした、ジュリアン・コロンビエだ。ジュリーはギャラリーも運営する書店OFRのPRを担当している関係で、ここで個展を開いたジュリアンと知り合ったそうだ。

「うちの壁をプレゼントするわ! って(笑)、彼に白紙依頼で作品をお願いしたのよ。彼、この提案にすごく喜んで、すぐに壁を見に来たわ。この家の中で使われているオークル、ブルー、ピンク、マロンは、まさに彼が今気に入っている色だって。制作の間3週間、私たちと同居してたのよ。すごく良い人で、娘たちともすっかり仲良しになったわ」

オイルパステルで描かれているだけでその上に加工はされていないので、触れるものがないよう壁の高い位置にジャングルが描かれた。かくして、アートやインテリアに興味をもつパリ中の人たちが羨ましがるアパルトマンとなったのだ。

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左:家族で食事をとるキッチン。ここはクロエの助けなしでふたりが作り上げた。キッチンはイケアだが扉のノブを変えるなど、パーソナライズして美しく。椅子はブロック・マルテルから。
右:ウォーレンプラートナーのブルーのモダンな椅子が、古い木の梁によく似合う。

 

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左:6歳の長女の部屋。以前はピンク色の部屋が好みだったが、大きくなったので……。
右:次女の部屋。壁にサークルをペイントしたのはクロエのアイデア。しかし上手く丸を描くのは、思った以上の難行だったという。

 

このアパルトマンではソファは新品だが、その他の家具はブロカントで見つけた品がほとんどだという。例えばキッチン。家族の暮らしに欠かせないこのスペースは、引っ越してきてすぐにブルーにペイントした。テーブルは“ぶどうの収穫期のテーブル”と呼ばれるもので、古い開閉システムにより拡大する。これも椅子もブロカントでみつけたもの。自宅からそう遠くないところにBroc’Martelというブロカントがあり、そこからの品が少なくないようだ。ジュリーがオフィス・スペースに置いている家具はどれも、子供時代からアドリアンがバカンスを過ごすイル・ド・レのブロカントで見つけたという。モダン・デザインと温かみのある家具を上手く組み合わせ、美しいけれどリラックス感のある内装。このアパルトマンの写真をあれこれ眺めているだけで、インテリア上級者になれたらいいのに! と思わせる素敵な暮らしがここにある。

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左:ダイニング・テーブル後方の壁に置いた黒い家具の上には、お気に入りの品や贈り物を並べて。
右:ふたりのアイデアで大きな書棚を作った。本だけでなく、アドリアンがコレクションしているヴァロリスの陶器や思い出の品々が飾る。

 

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左:リビング・スペースに飾られたミック・ジャガーは、アドリアンの弟がデザイン校の卒業に際して雑誌の紙を切り貼りして制作した作品。ゲンズブールなど20名のアーティストの肖像を作ったそうだ。
右:夫妻の寝室。ベッドカバーや鏡はアドリアンの母からのギフト。ランプはジュリーが掘り出したアンティーク。
photos:Mariko OMURA

 

■ ジュリーのブロカント

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若いボボ・ファミリーが多く暮らす一角に、6年前にオープンしたブロック・マルテル。食器、鏡、椅子、業務用家具……掘り出し物がいっぱい。グリーンと黄色の外観が目印だ。
photos:Mariko OMURA

 

Broc’Martel
12 ,rue Martel
75010 Paris
tel:01 48 24 53 43(営業要確認)
営)13:30~19:30
休)日
www.brocmartel.com
大村真理子 Mariko Omura madame FIGARO japon
パリ支局長 東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏する。フリーエディターとして活動し、2006年より現職。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。

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