クリュブ・ソンシーブルなら、アートに一目惚れできる。
PARIS DECO
ある時、アリス・ミッテランは考えた。自分の心を捉えたアート作品を大勢に紹介したい、大勢と分かち合いたい、と。こうして、昨年バスチーユにアートショップClub Sensible(クリュブ・ソンシーブル)が誕生した。
タイランディエ通り2番地にあるアートショップ。ファッション・ブティックが立ち並ぶシャロンヌ通りの31番地から、すぐ見える場所にある。中央の陶器のクマはクレマンティーヌ・ドゥ・シャバネの作品。
現代アートを取り扱うスペースというと白い壁に作品がぽつぽつと展示されていて、どことなく入りにくように思ってしまうが、ここは違う。若いオーナーの目にとまったフランスと海外の若い世代のアーティストの作品はデッサン、セラミック、刺繍、コラージュなど表現法はさまざま。それらが壁を左から右へ、上から下へと埋めるクリュブ・ソンシーブルでは、何かしら心惹かれる作品に出会えるはず。あるいは親しい誰かに贈りたい、という気にさせる作品に出合えるはず。
ここは今どきのパリジェンヌのインテリアに欠かせない、気軽に楽しむアート作品の宝庫。一点といわず、壁にかかっている作品全部をまるごとそっくり自宅の壁にかけたくなる魅力あふれるデッサンやコラージュがいっぱい。
ポエティック、ユーモラス、ちょっとブラック、なんとなく子ども時代を思い出させる……アリスが選ぶ作品は、表現法は異なっても、こうした点が共通している。特に意識しているわけではないが、女性のアーティストの作品が多いそうだ。例えば、クレマンティンヌ・ドゥ・シャバネ。詩情を感じさせる動物のセラミックで知られるアーティストだが、アリスは彼女によるデッサンも扱っている。アメリカのペーパーアーティスト&イラストレーターのホリー・チャステインもお気に入りの一人で、ブティックの壁に張り替え可能な大きなスティッカーを展示。「就寝前のチーズは悪夢のもと」と英国でよく言われることをブランド名にしてしまったCheese Before Bedtime。ニュージーランドのエンブロイダリー・アーティストで、その作品はとても好評だそうだ。
左:Lucile Jaeghersは祖父の残した古い切手を、蚤の市で掘り出すアンティークのピルボックスやマッチ箱などと組み合わせて小さな世界をクリエートする。1点20ユーロ前後。
右:壁を飾っているのはHollie Chastainのスティッカー。跡を残さず簡単に剥がせ、別の場所に貼ることができる。
左:左はクレマンティーヌ・ドゥ・シャバネのYEAH。
右:エンブロイダリー・アートはCheese Before Bedtime以外のアーティストによるものも扱っている。photos:Mariko OMURA
左:ニュージーランドのアーティストCheese Before Bedtimeによるタイガー。
右:古い写真をコラージュしたHollie Chastainの作品。
4月22日から5月27日まで、ギャラリーの一角でマレーシアのアーティストKamweiの作品展を予定している。動物をテーマにしているアーティストで、作品展のタイトルは「Kamwei ‘s Ridiculously Happy Animalerie in Paris」。小さなセラミックの動物たちを限定販売するという。可愛いスコッチ・テリアやダルメシアン……犬好きは興奮してしまうかも。それに50〜120ユーロと手が出しやすい価格もうれしい。アートの民主化という点にも配慮するクリュブ・ソンシーブルでは、Kamweiに限らず、訪れた客が一目惚れした作品を買って持ち帰れる、という価格帯の品を揃えている。小さな豆本5ユーロから始まり、オリジナルデッサンは150〜250ユーロ。アートとの出会いを求めて、ぜひ訪れてみて。
4月23日から限定販売が始まるKamweiのセラミック・アニマル。
左:ほのぼの感いっぱいのKamweiによる動物のデッサンは通常販売中。
右:オーナーのアリス・ミッテラン。
madameFIGARO.jpコントリビューティングエディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。