パリの西、時間で外観を変える坂茂の音楽ホールは新名所。

PARIS DECO

2013年7月に発表されたように、パリ隣接の郊外都市ブローニュ=ビヤンクールを流れるセーヌ河の中州に浮かぶスガン島の音楽ホールは、コンペティションの結果、坂茂の設計に決定した。フランスにおいて彼はすでにメス市のポンピドゥー・センターを手がけていることもあり、“バン・シゲル”の名前はフランスの建築ファンの間ではとても有名だ。

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左:セーヌ河に浮かぶスガン島に出来たラ・セーヌ・ミュジカル。卵型のドームの周囲を三角の帆が太陽を追ってスライドする。photo Didier Boy de la Tour
右:設計したのは坂茂と彼のフランスのアソシエであるジャン・ドゥ・ガスティンヌ。ここは過去に、安藤忠雄の設計によるピノー財団の現代アート美術館の建築計画があった場所だ。

その音楽ホールのLa Seine Musicale(ラ・セーヌ・ミュジカル)は4月21日にボブ・ディランがこけら落としのコンサートを行い、翌日の22日に一般オープンした。ルノー社の工場の跡地に坂茂が設計したのは、パリの西の玄関にふさわしいモニュメンタルな建築物というコンペの条件を満たす建築物。一度目にしたら忘れられない帆船のような建物だ。コンサートのチケットを持ってない人も広場の巨大なスクリーンでコンサートを楽しめるし、素晴らしい散歩コースでもあるオープンなスペースである。

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左:ラ・セーヌ・ミュジカルの正面。巨大なハイビジョンLEDスクリーンが広場に面して掲げられている。photo:Didier Boy de la Tour
右:200メートルの通路。使用したペンキの効果で、天井は光によってグレー、グリーンに色が変わる。

地下鉄駅を出てからスガン島に向かうと、セーヌ川をはさんで見えてくるのがラ・セーヌ・ミュジカル。コンクリートの細長い建物でその上にクラシック音楽ホール「オーディトリアム」を擁するガラスの卵型ドームが乗り、そしてそのドームを三角形の帆が覆っている。この帆が曲者! というのも、470枚の太陽光パネルが並べられ、ドームの外側のレールの上を太陽を求めて建物の半周をスライドするのだ。それによって建物の外観は時間の経過で変化することになるのだから、これだけでも見ものでは!?

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左:ガラスの卵型ドームを支える木造架構。
右:木造架構の合間から見える、三角形の帆が太陽の動きに合わせて自動的にスライドするためのレール。

ラ・セーヌ・ミュジカル内、いずれ音楽関係のブティックが並び、大きなテラスを備えたレストランもオープンする200メートルの長い通路が走っている。この通路をつき進むと、行き着くのは島の先端にある彫刻のテラス「ロダン広場」。3方をセーヌ河に囲まれた広々と開放的なテラスにはベンチも備えられているので、のんびりとした時間をここで過ごすのもいいだろう。入り口近くに位置する多目的ホール「グランド・セーヌ」を覆う丘は、エッフェル塔もはるかに眺められる緑豊かな屋上庭園となっているので、こちらも晴天時はなかなかの散歩コースである。ここからは卵型のオーディトリアムと太陽光パネルがとても間近だ。屋上庭園へは建物の外の大階段からダイレクトにアクセスできる。

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左:470枚の太陽光パネルによる高さ45メートルの三角形の帆。年間80,000kWhの発電量が見込まれているそうだ。
右:ラ・セーヌ・ミュジカルから見える眺めは、セーヌ河の片側はブローニュ=ビヤンクール、片側は緑に恵まれた高級住宅地ムードン(写真)。

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左:建物内の階段。見る角度や光の当たり方で色が変わるスカラベのようなモザイクタイルで覆われている。
右:屋上庭園へと続く外の大階段。

さてラ・セーヌ・ミュジカル内のコンクリートの建物の上に乗った“卵”の中、「オーディトリアム」へ入ってみよう。 ここは音の吸収、あるいは拡散……というように異なる効果をもつさまざまな種類の木が使われている。蜂の巣のような六角形の木製フレーム916個が吊るされた天井が壮観!! 籐のバスケットのような壁は、ホール内どの座席にも同じ音質が得られるように設計されているという。音響についてのコンサルタントを務めたのは、パリでは過去にメゾン・ドゥ・ラ・ラディオやフィルハーモニー・ドゥ・パリに関わった日本が世界に誇る永田音響設計だ。

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音響効果を追求したオーディトリアム内部。天井が波打ち、六角形の中に4種のサイズの輪切りされた紙菅が収められている。木の素材が多用された中で、椅子の赤が映える。
photos:Mariko OMURA

行ってみたいけど、パリの中心部からちょっと遠いのでは……と足踏みする? もし、本誌パリ特集(3月20日発売)でも紹介されている魅惑のHoliday Caféに行くつもりなら、ここはその最寄り地下鉄駅Porte de Saint-Cloudの3つ先とすぐ近く。ある晴れた日、ふたつを制覇するのはどうだろうか。

La Seine Musicale
Ile Seguin
Boulogne-Billancourt
アクセス 地下鉄9番線Pont de Sèvres下車。出口No.1Forum du pont de Sèvres から出て、パネルIle Seguinを頼りに進む。
www.laseinemusicale.com/fr
大村真理子 Mariko Omura
madameFIGARO.jpコントリビューティングエディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。

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