胸騒ぎの、シチリアワイン。 #01 トスカーナの名門がシチリアで生んだ魅惑のワインとは。

Travel 2017.06.15

長靴形をしたイタリア半島のつま先に浮かぶシチリア島は、イタリアの中では端っこですが、実は地中海世界のど真ん中に位置しています。それゆえに紀元前の昔からさまざまな文明とライフスタイルがこの島を通過。人々は必然的にマルチな文化を培ってきました。

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シチリア中部、アグリジェントのブドウ畑。

ワインも例外ではありません。「あらゆるブドウ品種がシチリアを経由してヨーローッパに広まった」といわれています。シチリアは九州の3分の2ほどの広さですが、シロッコの吹く灼熱の地から標高1,000メートルを超え、雪も積もる冷涼の地まで実に多様なテロワールを持っています。シチリアが「小さな大陸」といわれるゆえんです。

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多くの白ワインがレモン系のフレッシュなアロマを持つ。

ワインのスタイルもさまざま。しかし、輝く日差しを感じさせる「明朗さ」はすべてのワインに共通しています。飲めば、歌って踊って人生を謳歌したくなるワイン! 3回にわたって、シチリアを代表する3つのカンティーナ(ワイナリー)を訪ねましょう。

美しく設えられた、シチリアの館へ。

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ブーゲンビリアの咲き乱れる中庭。

トスカーナで12世紀からワイン造りを行うマッツェイ家は「キャンティ」という言葉を初めてワインに使い、それを文書に残したことでも知られる名門中の名門。そのマッツェイ家がシチリアの地に新たな可能性を見出し2003年に設立したのがジゾラです。

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まずは“ワイナリードッグ”がお出迎え。

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フィリッポ・マッツェイさん。

19世紀に建てられたバーリョ(中庭を囲んで屋敷、厨房、作業場などが建つシチリア独特の建築スタイル)の門で迎えてくれたのは24代目のフィリッポ・マッツェイさん。生活のベースはトスカーナなので、普段ジゾラの経営は現地スタッフに任せていますが、収穫期含め年に数度は来島してここに滞在しているとのこと。今回はパートナーのルクレツィアさんも一緒です。

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館内のインテリアはフィリッポさんの妹アニェーゼさんが手がけたとのこと。

フィリッポさんに促されるままに、ブーゲンビリアが壁に咲き乱れる館の中に入ると、居間もダイニングもとても品よく整えられているのに感心させられます。聞けば、インテリアを手がけたのはフィリッポさんの妹で、フィレンツェで建築家として活躍するアニェーゼさんとのこと。

>>シチリア固有のブドウで造る、フレッシュな白ワイン。

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シチリア固有のブドウで造る、フレッシュな白ワイン。

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シチリアらしい陽光にあふれたテラス。

「テイスティングはテラスでやりましょう」と24代目。白いクロスの表で木漏れ日が踊るテーブルで白・赤5アイテムを試飲しました。シチリア南東部のテロワールをよく表した、凝縮感たっぷりでありながらエレガントな赤ワインで評価の高いジゾラですが、今回特にご紹介したいのは白ワインのアジーザ2016です。

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ジゾラ・アジーザは食事を呼ぶワイン。¥2,830(参考価格)

新たな試みとして2010年から取り組み、初リリースは2014年。用いられている品種はグリッロとカタラット。いずれもシチリア固有のブドウ品種です。ほんのりとアプリコットを帯びた色合い。香りは白い花、柑橘、ミネラル。口の中ではフレッシュで生き生きとした勢いが感じられ、最後に塩の風味が残ります。これは、まさに食事を呼ぶワイン。

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旬のズッキーニをたっぷりとつかったパスタ。

テイスティングの後、同じテーブルでランチをご馳走になりました。シチリア産のオリーブオイルをたっぷりと使ったズッキーニのペンネとアジーザの酸味が美しく照らし合います。
「シチリアに来るのはいつも素敵なこと」とルクレツィアさん。「オリーブオイルひとつを取っても、シチリアとトスカーナとではまったく違うのよ」
「トスカーナのオイルは刺激があってスパイシー。こちらのはマイルドなんだよね」とフィリッポさんが補足します。

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右から、エステートの管理を任されたガエターノさん、クレツィアさん、フィリッポさん。

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仔牛のカツレツにスライスしただけのトマトを添えて。こちらは赤ワインと合わせました。デザートはアーモンド・プディング。

>>果物や建築、人々……そのすべてがワインのおいしさにつながる。

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果物や建築、人々……そのすべてがワインのおいしさにつながる。

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ガエターノさん(右)は地元の知恵袋的存在。

食後、屋敷の裏手に広がる農園を散歩しました。案内役は、エステートの管理を任されている地元在住のガエターノさん。果樹園ではオレンジやレモンの花がちょうど満開で、めまいのするような強い芳香を放っていました。つい先ほど飲んだアジーザには確かにこの香りがありました。ガエターノさんがブラッディーオレンジの果実を枝からひとつもぎ、ふたつに割って中身を見せてくれました。
「赤みが半分くらい入っているでしょう。ここから北へ150キロメートルほどのエトナ山の麓に行くと、これがもっと真っ赤になる。それほど土壌が違うんです」

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ブラッディーオレンジの色合いをチェック。

ブドウ畑は緩やかな斜面に開かれていました。ブドウ樹は夏場の強烈な日差しから果実を守るため、アルベレッロという仕立て(垣根にせず一株ずつ独立した状態で植え、低く仕立て、葉を茂られる)にされています。ブドウ畑を見守るようにしてオリーブの老木がどっしりと立っていました。ガエターノさんによると、樹齢は1,000年を遥かに超えているとのこと。

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樹間に草を茂らせた草生栽培で、ブドウを極度の乾燥から守り、草と競わせることで、ブドウの根がより深くまで張るように促しています。

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オリーブの具合を確かめるフィリッポさん。

事前にこのエステートの敷地は50ヘクタールで、ブドウ畑はそのうちの21ヘクタールのみだと聞いていました。ブドウ畑は敷地の半分以下なのかとちょっと意外な感じがしましたが、こうして農園を歩いてみて、屋敷や庭、果樹園やオリーブの老木、さらにはガエターノさんも含めた全体があってこその、ワインのあの豊かな味わいなんだなと腑に落ちた気がしました。

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エステート内で実った美しいレモン。

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貯蔵室の樽のなかで眠る赤ワイン。

texte : YASUYUKI UKITA, photos : PANDA YOSHIDA, collaboration : Assovini Sicilia

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