
春まっさかり。眩しい緑と花の香りを目一杯楽しむ4月、5月。
青と白とその間の色々に、輝く緑が眩しい5月。
麦畑には真っ赤なポピーが見え隠れ。
絵に描いたような風景。
4月のはじめの畑の風景。こう見えて、サラダ系の葉っぱの野菜、ニンニクやリークなどネギ系、キクイモなどを冬からずっと収穫してきた。
春の畑のいちばんの楽しみは、アスパラガス。
気がつくとあちらからもこちらからもニョキニョキ育つアスパラ。採れたては最高にみずみずしく、ぽきっと折ると水分がにじみ出る。そのまま生でぽりぽり食べた。
イチゴ畑は雑草を取って、これからのシーズンに備えた。
5月になると毎日のように真っ赤なイチゴが摘まめる。
早い者勝ち。三女のたえが食べるか(でも気前がいいのでいちばん美味しそうなのをくれる)、ナメクジに先を越されるか。
ダンボールの上に絨毯を敷いたのは、雑草除去と、土に還る雑草と湿ったダンボールがミミズの餌になり、土が肥えるため。暖かくなったら、いつものようにズッキーニを植えるつもり。
アーティチョークの葉っぱもどんどん大きくなってきた。
5月上旬からつぼみができてきて、
下旬にはいい大きさに。食べるのは一瞬だけれど、紫色の花が楽しみで、収穫しようか迷っている。向こうにリング状に見えるのは、キクイモの畑。これだけ育つと根はスカスカになってしまうので、これもひまわりのような黄色い花を楽しみにしたい。
ジャングル化したグリーンハウス。タネから植えた野菜や花を育てるのに勇気を出して整備にかかった。
石壁から生えたサンブーコ(ニワトコ)やイバラが生い茂り、隅っこに豆やズッキーニなどのタネを植えた容器を置いておいたら、ネズミにかじられていた。
すっきり。
すっかり遅くなってからのタネ植えだけど、三寒四温で暖かくなるのも遅かったので、これからに期待したい。
タネから育てた苗(多くはオーガニックのタネ)は、一般的な苗より益々応援したくなる。
春はガーデニングショップに行くのが一層楽しい季節。
行きつけの3軒の中でもここ、ボスコ・ディ・ザン(ザンの森)はいちばん充実していて寄せ植えなども素敵 。
行くたびにあれこれ連れて帰ってくる。
こんな時は沢山積めて汚しても文句を言われない古いスバルが便利。天井が開くので、この間は長い竹をめいっぱい乗せてきた。
落葉樹の中でもいちばん最後の方に新しい芽を出すオーク。幹には友だちのパオロが作ってくれたシジュウカラの巣箱。
4月のあたま、巣箱によくシジュウカラが出入りしているなと思って中を覗くと、フカフカに新しいベッドが準備されていた。メリーナの毛も、外で切った子どもたちの髪の毛も使われていた。
4月7日。お母さん、卵を温めてるのかな。
やっぱりあった、卵は8つ。
4月25日。
もう毛が生え出している。
5月4日。すくすく育ってよかった。翌々日にはもう巣立っていた。1カ月で巣立ちするようだ。
オークの葉っぱは青々と生い茂り、本当に気持ち良いゴールデンアワーのキッチンからの眺め。
オークの向こうのニワトリ小屋。一年以上ぶりに大掃除。
床を綺麗に洗って、厚紙を敷いて工事現場で使う砂を敷いた。
壁にはニワトリが夜停まって寝る用の枝や、子どもたちが描いた絵などを飾った。
入り口にはチャリティショップで見つけたフレーズ。"友だちは、私たちが飛び立つ必要がある時に、地から持ち上げてくれる天使です"
そして迎えた新入り4羽のニワトリたち。3年前と同じくバルバラのニワトリファームからやってきた。
まだへなちょこの卵しか生まないけれど、まずは新しい環境に慣れて、美味しい卵を産んでほしい。
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4月に入ると次々いろんな花が咲き出し、毎日のように発見がある。圧巻なのは、ニセ(アカシア)の花。森中いたるところに白い花がたわわに咲いて、ミツバチが大忙しで蜜を集める羽音が響き渡る。
今年も養蜂家のルカとパパのアドリアーノが、すっかり日が暮れてから養蜂箱を32箱持ってきた。初めて設置するのを見守り、話を聞いた。一箱には25,000匹のミツバチがいるそう。彼らは他に2カ所、32箱セットを設置してきた。ルカのおばあちゃんはここの出身で、昔から馴染みな場所なのと、ここでは一度設置したら、アカシアが終わったら栗の花の蜜ができるのがいいと笑っていた。
ミツバチたちは、天気がいい日は仕事に集中しているので他に無向きもしないけれど、天気が悪いとイライラしているので攻撃されやすい。わたしもタエも、10メートルほど離れたところで刺されてしまった。でもミツバチは一度刺すと死んでしまうのでかわいそう。刺された方は一年カゼを引かないとも言われる。
一般的に働き蜂(メス)の寿命は、夏場は1、2カ月、冬場は5カ月ほど、女王蜂は2、3年。女王蜂と交尾をするためだけにいる雄蜂は1、2カ月と言われている。「もし地球上からミツバチがいなくなったら、人類は4年も生きられないだろう」とアインシュタインは言った。ミツバチは、あらゆる植物や農作物を受粉媒介する存在として欠かせない。でも、気候の変化、生息に適した環境の減少、農薬散布などでミツバチは大幅に減少している。それに、2022年にアメリカの科学誌で発表された研究によると、ミツバチの寿命は1970年に比べて50%減少し、蜂蜜生産量の減少とも一致していると発表された。自然農法の畑作りを試みたり、草を無駄に刈り過ぎなかったり、受粉する虫たちが喜ぶ植物を植えたりしているのは、ミツバチだけでなくいろいろな虫たちが繁栄できる環境を保つため。わたしなりの生態系への貢献のつもり。
アカシアの花の季節の楽しみは、花のフリット。ヒヨコ豆の粉を水で溶いた衣で揚げる。ほんのり甘い蜜の味がし、香ばしい衣はタンパク質豊富で、スナックにも前菜にも最適。
ある日のランチ。へンプシードや炒ったナッツのほか、ボラジの花を加えた春色のご馳走サラダもみんなに喜ばれる。
森に一歩入ると、ワラビが沢山生えている。
今年も何度も山ほど収穫した。
アク抜きする灰は薪ストーブがあるのでいくらでもある。
ボローニャのユリアのところに仕事に行く時も、ランチの一品にとワラビを持って行った。シンプルに、醤油、オリーブオイルとレモン汁か、醤油、炒りゴマとゴマ油。この日は畑のキクイモとニンニク、生姜、醤油と砂糖で味付けた一品も。イタリアでは基本的にワラビを食べる習慣はないので、あんなものをこんな風に食べるのか!と驚かれるし、一度食べた人には、シダを見るたびにわたしのワラビの料理を思い出すと言われたりするのもおもしろい。
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ガーデニングショップ巡りと同じくらいワクワクする、リサイクルやチャリティショップ巡り。この2カ月はいつもにも増して足を運んだ。
森の家にボローニャからまるっと引っ越して5年目になるのに、リフォームしていない部屋はまだしも、日々使っている部屋にも電気ケーブルに裸電球のところもいくつもあり、集中して手を入れることにした。
なかなか見つからないパーツなどは、引っ越し屋で不要物の廃墟を担うマウロの倉庫に。
割れてしまったデスクライトのランプシェードを探しにいったら、いろいろ候補が出てきた。
以前マウロから買った銅のお菓子の型には、穴を開けてペンダントライトのキャノピーに使った。
リサイクルショップで買った照明のパーツ。
解体して新しいソケットとケーブルをつけて、子どもたちの部屋のバスルームの照明に。
これを取り付けたのは深夜を回ってから。アップサイクルして自分で手直しして取り付けられた達成感と言ったら。
やることだらけでひとりではお手上げだったのをサポートしてくれたのは、仲良しのカテリーン。カテリーンは、ボローニャで大人気の生パスタショップ、スフォリアリーナなど3軒自分の店の内装をすべて手がけたプロ。
家にあったものをあれこれ移動して素敵なコーナーをいろいろ提案したり、やることリストも一緒に作ってくれて、本当に助かった。
アドバイスを受けてひとまずいいところまで進んだ、インテリアのブラッシュアップ。
前からやろうと思っていたけれど、石壁に穴を開けるのが大変なので机に置いたまま使っていた細長い引き出しふたつも、ようやく壁に取り付けた。
ガラスのランプシェードは、パリの蚤の市で4月に買ったもの。
寝室のコーナーに金魚の作品を吊ったのも、カテリーンのアドバイスだった。
何年も前に作ってすっかり忘れていた小さい金魚をバスルームにたくさん吊るすのも、ゴールドの額縁を鏡の周りに飾ったらと言ったのも、カテリーン。
どこからうちに来たか忘れてしまったけど、気に入っていた大きな額縁は、黒板のフレームに使うことに。
サイズ変更は友だちの額縁屋で家具の修復をするパオラにお願いした。
3日後にはもう出来上がっていた。マウロの倉庫から見つけ出したランプシェードのデスクランプも馴染んでいる。
いちばんの難関は、メインの玄関ホールだった。暖房の配管、下水の配管、電気の配線が丸出しだった。5年間毎日見て過ごしてきたので、気にならなくなってきていた。慣れって恐ろしい。
ようやく天井を張り、
天井を壁と同じ色を塗って、
何年も前に買ってしまったままだったシャンデリアを吊ったら出来上がり。
夕陽にあたると壁に虹がかかる。その度に、普段私たちの目では見えていないけれど、確実に存在するミラクルでマジカルな世界を想像してワクワクする。
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これだけ集中してインテリアブラッシュアップするきっかけができたのは、日本からドキュメンタリーの撮影隊が来ることになっていたから。
いつもの朝のドタバタから撮影したいとリクエストされ、荒れた朝もあるのでどうなることかと思ったら、みんなとても早起きしてきて、一緒にヨガをすることになっておかしかった。
2020年2月まで12年間住んでいたボローニャもご案内。行きつけのバールや友だちのお店にいろいろ寄ったり、道端でばったり友だちにあったり。
思春期の長女のゆまといつも行っていたレストランや本屋に行ったり、久々に二人で街で過ごすシーンも。
ユリアと過ごす楽しい時間。あれこれおしゃべりしながらアイディアを交換しながら作品作り。
ガブリエッラの庭園では春のお庭を見せてもらって、いつものようにテラスでお茶をいただいた。わたしはゴボウの葉っぱの茎を生姜とニンニクと甘辛く炒めた一品と、手作りパンを。ガブリエッラはいろんな野草を使ったディップやハーブティをふるまってくれた。
それに、ガブリエッラのおばあさんのレシピノートから、いつも作っているシンプルな朝食ケーキ。
昨年のサクランボのシロップ漬けと、とってもよく合う。
撮影隊に春らしい料理をとリクエストされて、花びら入りの生パスタ作り。
材料は、野原や畑の花や野菜。
生地はセモリナ粉と水。
こねて寝かして伸ばしたら、花や葉っぱをのせて、
上から生地をのせて、また伸ばす。
今回はマルタリアート、悪く切られた、という名前の形に。
花びらが、透けて見えてかわいい。
浮いてくるまで数分茹でたら、炒めてブレンダーにかけたポロネギ、フェンネル、キクイモのパスタソースとあえて、美味しいオリーブオイルをかけたら出来上がり。大好評だった。
仕上げにフェンネルの葉っぱとレモンゼストを。トルタサラータは、レンズ豆やリコッタに庭の野菜と炒ったナッツ入り。
食後には近所の子どもたちもやってきて、ジェラートタイム。イタリアの日曜の午後らしい風景。
春の2カ月で、この畑も見違えるほど賑やかな景色になった。今年もたくさんの芍薬が咲き乱れ、いい香りが漂い幸せ。
10日間一緒に過ごした撮影隊は、また7月にやってくる。森の春と夏をぎゅぎゅっと詰め込んだ映像のお便りは、秋に放送予定。
作品をリクエストされて、葉が生い茂る柳のアーチに詩を飾った。
【呼吸し、熟考し、すべてをすべての方法で感じよう】
【あなたは宇宙の一部です】
みんなにそれぞれ役割があって、誰もがいまこの瞬間宇宙に欠かせない存在だ。間違いは何もない。わたしはそう信じて、この世に生きるものの特権、酸いも甘いもとことん経験してやろうと、毎日好奇心のアンテナをびんびん立てて過ごしている。そんな姿勢が、もしかしたら映像で描かれる世界で伝わる、かもしれない。
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