
一日一組限定の、ゲストハウスへ。
「一日一組しか客を取らないゲストハウスって、どこにあるの?」
「山梨です。小淵沢の近く。サントリーの「白州」の蒸留所のあるところですよ」
「杉本博司さんが手掛けたの?」
「そうです」
名酒のあるところには、名水があるはず。きっとおいしいものもあるに違いない。それも世界のアート市場でも注目の杉本博司さんが初めて造ったゲストハウス、行かないわけにはいかない。ルイ・ヴィトンのコレクションのスタイリングなどで知られるパリのマリ=アメリー・ソーヴェと相談して、彼女が編集長のモード&カルチャー誌「マスターマインド」のための取材を私がすることに。
フォトグラファーはパリから来日するという。
「どうしてビニール袋が必要なの?」
羽田に到着早々、フォトグラファーのマチューに日本のお弁当カルチャーを教えていると、ふいに彼がそう言い出した。私が怪訝な顔をして、
「だってお弁当はビニール袋に入れてもらった方がよくない?」というと、「少しは地球のことを考えたことがあるの?ビニール袋は使わないようにしようよ。地球温暖化を止めるには、僕らのこうした小さな一歩から始めるべきだよ」と彼がいう。
いきなり年下男性に説教されてしまった。環境問題というと、どうしても大きな問題と考えがちだけど、たしかに日常的にそうしたマナーを身につけることが、どんなに大切かを認識すべきだ。どうやらフランスの方が、その意識は高いようだ。
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小淵沢の清春芸術村に完成した優雅なゲストハウス「和心」では、石庭に沿った見事な数寄屋造りの建物の、ピュアな美意識にすっかり酔い痴れてしまった。日本アルプスの連山に囲まれた赤松林にひっそりと建っていて、胸を打たれる美しさだった。
私たちは清春芸術村にある、1900年のパリ万博の時に、ギュスターヴ・エッフェルがボルドー・ワインのパビリヨンとして建てた「ラ・ルーシュ」に泊まることになった。オリジナルの建物はいまもパリのモンパルナスにあり、1920年代には、モディリアーニやシャガールが使っていたという歴史的建造物だ。その芸術村の創設者で、銀座の吉井画廊の吉井長三さんが、エッフェルの遺族からその設計図をもらってきて、そこに再建したという。
朝起きると、目前に安藤忠雄さんが建てた「光の美術館」があり、その日は杉本博司さんのインタビューもしたし、マチューとふたりでアート三昧の一日だった。
「ノートルダム!」
昨日はパリから入江末男さんとローラン・ラクロが来日、いつものようにホテル・オークラのロビーで会うことに。このところずっとノートルダム大聖堂の大火のことで頭がいっぱいだったせいか、パリの友人たちの顔を見ると、思わず涙ぐんでしまう。
「黄色のジレー運動もますます大変になったし、まったくパリはこれからどうなるののかなあ」とローラン。
「カールもいなくなったし」
入江さんはそういいながら、マダム・フィガロの別冊「カール・ラガーフェルド」の追悼号と、フォーションのハーヴ茶「夢の商人」のお土産をもらう。
その後3人でバーニーズの裏手にあるピザ屋「ピー・エス・ティー」に行き、ぱりっとしたおいしいピザを食べながら、パリ話に花が咲いた。新宿伊勢丹本店に売り場のあるブランド「イリエ」のために、年に2回来日する入江さんたちをいつも心待ちにしているのは、思う存分おしゃべりができるから。
明日から京都へ行くという。
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連休中の4/27(土)から5/9(木)まで、代官山 T-SITEで、私たち東日本大震災支援のアマプロジェクトは、アート本の売り場でグッズの販売をします。ジェーン・バーキンやシャルロット・ゲンズブール、ルー・ドワイヨンのデッサンのTシャツや、アンドレのプティ・トートなど。立ち寄ってみて下さい。
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