Oral Care 赤リップが似合うのは、健康な歯と歯茎があってこそ。

Beauty 2017.01.24

肌や髪と同じくらい、歯の印象は若さと美しさに直結する。その場しのぎの虫歯治療ではなく、見た目の白さ、歯並びはもちろん、その土台である歯茎や歯根にも目を向けたケアをすべき。全身に影響する歯周病のケアから最新の審美治療まで、いまやるべきベストとベターを探りたい。

■目に見えないけど進んでる! 歯周病とその対策。

 口臭や唾液のネバつき、歯茎の腫れや出血、歯の揺れは歯周病のサイン。といっても、途中までは痛みや出血もなく静かに進行するので、いざ歯医者に行ったら、抜歯してインプラントしかないと言われて愕然とする人も多い。
「遺伝的に歯周病になりやすい人もいますが、主な原因は細菌。何千種とある口内細菌の約20種が原因菌と考えられています。その細菌の塊が歯垢(プラーク)。歯と歯茎の境目に歯垢が溜ると細菌が増殖し、細菌が出す毒素で炎症が起きます。その炎症が進むと歯周ポケットが深くなり、歯を支える骨を溶かして最終的に歯が抜け落ちてしまいます。歯周病治療をせずにインプラントをしても、インプラントの歯周病を発症することに」
 歯周病菌は生活習慣病のリスクを高めるだけでなく、女性ホルモンを栄養に増殖するものもあり、妊娠・出産を機に歯がもろくなるのはそのため。歯周病菌の毒素が血液で子宮に届き、子宮を収縮させる、つまり早産につながることも。海外では歯周病で妊娠しづらくなるという報告もあるので、妊娠を望む女性に歯周病ケアは必須事項だ。
「30代でなんと5人に4人が歯周病。そのうち10%が軽度、80%が中程度、7%が重度。そのレベルは歯周ポケットの深さで判断できます。0~2㎜が健康で、4~5㎜が中程度、重度の6㎜以上になると歯を失う確率が倍に」
 歯ブラシが届くのは歯茎のキワから0.5㎜程度だが、予防はとにかく歯磨きに尽きる。食後約10分間の正しいブラッシング、歯間ブラシやフロスも使い、歯垢を溜めないこと。また、3カ月に1度は歯医者でメンテナンスを行いたい。
「完治しないといわれる歯周病ですが、最新治療の『ペリオド』はレーザーや超音波、アミノ酸パウダーに手技を組み合わせ、最短1日で歯周病菌を徹底除去。歯周ポケットを浅く近づけ、歯茎の色もコーラルピンクに戻ります。ただし、徹底したブラッシング指導を受けること、専門医による定期的なメンテナンスが必要です」

歯周病が進行するメカニズム

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1. 健康
歯と歯茎の隙間がなく、歯茎が引き締まっている。

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2. 歯肉炎
歯と歯茎の境目に歯垢が溜まり、細菌が出す毒素で炎症が起き、歯肉が赤く腫れている。

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3. 歯周炎(軽度)
炎症が進んで歯周ポケットが深くなったところに歯垢や歯石がつくと、自分では除去できず歯を支えている骨を溶かしだし始める。

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4. 歯周炎(重度)
歯を支えている骨がどんどん溶けて歯の根が露出し、ぐらぐらし始める。膿が出ることも。ゆくゆくは歯が抜け落ちる。

【歯磨きのポイント】
・約10分。毎食後が理想。歯磨き粉なしでもいい。
・手先が不器用な人は電動ブラシを活用。
・歯茎を傷めないよう、ブラシは「やわらかめ」で。
・歯ブラシは毛先が広がったら交換。
・夕食後は歯間ブラシやフロスで、歯と歯の隙間も。
・歯茎の出血はブラッシングが苦手な歯のサイン。

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清水智幸先生
東京国際クリニック(歯科)院長

1963年、東京都生まれ。日本歯科大学卒業。同大学歯周病学教室、奥羽大学歯周病科で研鑽を積む。2009年より現職。スウェーデンで学んだ世界基準の歯周病治療の実践と予防歯科に努める。
www.period.tokyo

>>次のページでは顔と歯のベストバランスについてご紹介。

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■歯の機能のうえに成り立つ、正しい審美。

歯の白さ、歯並びは、顔の印象を大きく左右するため、美容としての関心が高いテーマ。「審美修復治療における本当の審美とは、噛める・話せるという機能、歯1本1本の構造、周囲組織、すなわちバイオロジーとの調和のうえに成り立つものです」。歯には順応性があり、多少噛み合わせがズレても心地よいところに少しずつ動く。そのズレが時間とともに大きくなり、口元の歪みや身体の不調につながることも。「歯列矯正は、持続的に歯を動かすため骨に負荷がかかり、歯磨きもしづらいため歯周病のリスクも増えます。だから、始めるなら早ければ早いほうがいい」。歯の機能性の維持と美しさのために、歯の高さ、形、大きさ、微妙な噛み合わせまで調整する虫歯の修復補綴治療と並行して進めたい。

顔と歯のベストバランス

02-2-oralcare-170124.jpg① 顔の中心と上の歯の中心のズレが3〜4㎜以内。

② 笑った時の上の歯と下唇の上縁のカーブがほぼ相似形。

③ 上の歯の平面と左右の瞳を結ぶ線がほぼ平行。

 

02-6-oralcare-170124.jpg④ 上の歯が唇のドライウェットラインの2㎜内側に当たる。

⑤ 前歯3本の歯茎が高、低、高の関係になっている。

 

 

歯列矯正察
大人の歯列矯正は思い立った時が始め時。一般の歯科医ではなく矯正専門医にかかることが重要。できるだけ歯を残すのが大前提だが、全体的なバランスを優先して相談を。一般的なワイヤーは1本1本をコントロールでき、かかる時間も想定しやすい。表側に比べ裏側で行うとコストがアップ。マウスピースタイプは微調整が難しく時間がかかるが、費用は安い。目立つ前歯だけを整える部分矯正やベニアを装着するという方法も。予算に限りがあるなら、理想の100点ではなく、まずは60点を目指そう。

虫歯治療
虫歯に対して、一定の基準で歯を削り、詰め物や銀などの金属を被せてくれる、費用負担の少ない保険治療に対し、自分に合った器具、薬剤、素材を吟味して、オートクチュールな治療が受けられるのが自費診療。機能はもちろん、審美的にも納得するまで対応してもらえる。たとえば、セラミックスの歯なら1本15~20万円と、値段だけ聞くと高いが、素材の質や持ち、再治療の少なさ、職人が1本の歯をつくり上げることを考えれば決して高くはない。高額な分、歯を大事にする意識も強くなるはず。

ホワイトニング
真っ白が理想とされたホワイトニングも、最近は自然で健康的な色合いを好む傾向がある。薬剤、光の強さの調整でマイルドな白の表現も可能に。また、母親の妊娠中の薬剤服用で変色した子どもの歯にも、薬剤である程度アプローチできるようになった。歯が白くなると歯肉の黒ずみが目立つので、その場合はピーリングで改善を。前歯に理想の白さでラミネートベニアを貼る治療もあるが、歯の表面を削る必要がある。歯を健康的に保つために、最小限だけ薄く削る技術のある医師の下で行いたい。

根管治療
02-5-oralcare-170124.jpg虫歯の痛みは、原因菌が歯の神経に入り込むことで起こる。この神経が通っている細い管=根管は複雑な構造で、精度の低い「歯の神経を抜く」治療だと、歯の内部で細菌が増殖して悪化、最悪は抜歯になることも。専門的な根管治療は、マイクロスコープで繊細な部分まで可視化し、根管内部の汚染物質を除菌、清掃。自由診療では神経1本に5~7万円と高いが、再治療率は10%程度。神経を抜くと痛みに鈍感になる。何年も前に治療した歯があるなら、口腔ドッグでいまの根管の状態を確認したい。

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北原信也さん
TEAM東京 ノブストラティブデンタルオフィス

1963年、東京都生まれ。日本大学松戸歯学部卒業後、92年に独立し開業。歯の機能と審美を両立する根本的治療を追求。審美・修復治療、歯内治療、矯正治療が連携するTEAM東京の代表。
www.team-tokyo.com

*『フィガロジャポン』2017年1月号より抜粋

texte:ERI KATAOKA, illustration:TAKAHIROKO

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