パリ、恋のエトセトラ

カップル社会、フランスで大切なことって?

こんにちは。
私はかれこれ4年か5年か6年くらいフランスのパリに在住しているのですが、米や醤油の味を常に夢見ているために普段はもっぱら「パリでおいしい肉まんを食べる方法」など、パリのおしゃれとは隔絶されたようなことについて書いています。しかしいろいろあってこのように、フィガロジャポンさんで「フランスと恋」をテーマにコラムを執筆することになりました。身の丈に合っているのか、また肉まんで塗り固めたオフィシャルイメージが崩れないか若干心配です。もちろんここで「醤油と私」などというテーマで連載するわけにはいかないのですが。

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最近のパリの風景。1月3日までエッフェル塔の下で開催中のクリスマスマーケットの様子です。

さて、第1回目はフランスのカップル社会について書いてみたいと思います。
フランスはカップル社会。これは耳にしたことがある人もいるはずです。どんなときもカップルで単位として考えられるというもの。

分かりやすいところでは会社のパーティーに呼ばれても配偶者や恋人と一緒に参加するというところでしょうか。日本だと仕事の場にはひとりで参加しちゃうことがほとんどですよね。

フランスでもカジュアルな集まりはひとりで参加してもまったく構わないし、私などはしのごの言わさずひとりでも参加してやるんですが、日本と違うのは、たとえ配偶者や恋人を予定外にふらっと連れて行っても何も「問題ない」というところ。日本だと少し気を使うかもしれません。「マミ子を連れて行っていいのか」「マミ子を連れて行っていいか事前に尋ねてみようか」「マミ子を連れて行っていいか事前に尋ねたら『ダメだ』とは答えづらいために結果マミ子を強制することになりはしないか」「そもそもこれほど気を使ってまでマミ子を連れていく意味はあるのか」……考え過ぎちゃう人になるとこのようにエンドレスです。

また、フランスでは結婚していないカップルが「パックス」という制度によって、結婚と同等の(実際には差があるようだけど)権利を得られるし、籍を入れていなくても10年20年一緒にいるよというカップルにも頻繁に出会います。日本だと内縁関係、と呼ばれると思いますが、何事も言葉の響きやらイメージやらが持つ力というのは凄まじいなと思わせてくれますね。内縁関係、という言葉の持つ火サス感ときたら、口にしたとたん片平なぎささんと断崖絶壁のことしか考えられなくなるくらいです。なぜこのようなイメージが付いてしまったのかは別の機会に考察するとして、日本でももうちょっと気軽に口にできる言葉があると、みんなに優しいかもしれないと思います。

とにかく、フランスではカップルでありさえすれば問題はないのです。
私がフランスに住んでいるというとすぐ「どうせアムールなんだろ」「このアムールが」と言い掛かりをつけてくる友人らもいるわけですが、こんなにパリにアムールやら恋人たちの街やらというイメージが付いてしまったのは、このフランスにおける「人間関係の最小単位はカップル」という意識が強すぎることも原因なのかもしれません。

日本だとカップルの間に子どもが生まれれば、子どもを含んだ家族として3人が最小の単位に変わることが多いはずです。しかしフランス人は頑ななまでに「我々はあくまでカップルである」という基本姿勢を崩しません。まず生まれたばかりの赤子であっても夫婦の寝室には入れないことは有名です(これは特にフランスだけの習慣ではないのですが)。たまには週末にカップルで出かけるべきだし、誰も面倒を見てくれる人がいなければベビーシッターを雇います。それを子育ての放棄だとか、怠惰な親だとか言う人はいません。

この「カップル」という単位を守ることは、性を守るということでもあります。私はときどき思うのですが、カップルが情熱を維持しながら関係を続けるということは、毎日こまめに欠かさず筋トレをすることに似ています。自分たちがカップルであることを意識し、ふたりの時間を作り、自分なりにめかしこみ、キレイだのセクシーだのとほめたたえ、作ってもらった料理を(ただのトーストでも)素晴らしいと言い、するべきときにはきちんと嫉妬する……という、これらのこまごまとした日々の雑事をきちんとこなすことは、カップルとして存在するための筋肉(出会ったころよりは確実にか細くなっている)を鍛えることになるのです。面倒臭いですよね、そりゃあ面倒臭いんですが、筋肉はたとえ5分でも、毎日鍛えていると次第に強化されます。私も以前は、事あるごとにキスをするなど(カップル間ではない挨拶のキスはとくに)ずいぶん面倒臭いだろうなあなどと考えていたのですが、たった10回でも毎日腹筋を続けていれば、そのうち慣れて、知らないうちに20回30回とできるようになるのです。

しかし、この「カップル社会」をイヤだと思う人、そしてデメリットはないのでしょうか? そんなもん、もちろんありますよ! でもそれはまた別の話(永遠に回収されない前振りとして)。

シロ

パリの片隅で美容ごとに没頭し、いろんな記事やコラムを書いたり書かなかったりしています。のめりこみやすい性格を生かし、どこに住んでもできる美容方法を探りつつ備忘録として「ミラクル美女とフランスの夜ワンダー」というブログを立ち上げました。

パリと日本を行き来する生活が続いていますが、インドアを極めているため玄関から玄関へ旅する人生です。

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