パリ、恋のエトセトラ

フランス人男性は、付き合う前に「告白」をしない!?

女性の恋の悩みというのは、地獄の裂け目から無尽蔵に湧いて出てくるのかと思うほどこの世にあふれかえっています。立場や関係性によってさまざまであり、バリエーション豊かでデリケート、おまけに同じような悩みであっても詳細が違えば回答も変わります。だから個々人の悩みに答えてくれる占いで恋愛に関するものは人気ですよね。

でも、古典というか、昔から存在し、ずっと変わらない恋の悩みというのもいくつか存在しています。そのうちのひとつだと私が思っていて、比較的簡単に解決できると考えているのが「告白されてないのに付き合っているような関係」「いったいこれって付き合ってると思ってよいのでしょうか?」「はっきりしてほしい」というもの。日本ではこの悩みを持つ女性は案外多くいるし、私も個人的にその悩みを相談されたこともあります。

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「付き合ってるようなことはすべてしてるのに……」という状態は女性にとって不安だということはよくわかります。ただ、この「古典的な」恋愛の悩みは、フランスには存在しないものです。
フランスでは(正確にいえばフランスだけではなく欧米全体の傾向だと思うのですが)、そもそも交際前の「告白」というものはほぼ存在しません。すごく生真面目で女性慣れしてないフランス人男性だっているのでそういう人からは交際前に表明されることもあります。でもたいていのフランス人男性は交際前に、「君は特別だ」「何て美しい女性」「俺の輝く太陽光」くらいのことはバンバン口にしても肝心のアレ、「ジュテーム」を口にすることはありません。それはすべて終えたあとにやってくるものです。3カ月経ち、半年が経ち、場合によっては2年が経過したころ、相手の緊張した面持ちとともにやってくるものなのです。

定期的に会い、デートをし、休暇は一緒にイタリアの田舎に行くなど、正式なカップルのようなことをしているのにジュテームはないのです。すでに同棲をはじめている場合だってめずらしくありません。これは「カップルとして長く愛し合えるかどうか」のお試し期間が必要だと考えているからです。そのあいだ「彼女を愛しているのかどうか」男性は真剣に考え、「確かに彼女だ」と確信してようやく口にするのです。私の知っているなかで最長のものでは、出会ってから一緒に暮らし10年経ってようやくジュテームがあったという例があります。もうちょっと早く判断できなかったのか……? と素直に思ったし、実際「もうちょっと早く判断できなかったのか」とつい聞いてしまったのですが、シンプルに「できなかった」と返事をされました。できなかったんですって。

さて一方、日本人女性が交際前の「告白」の有無で悩む原因のひとつに「恋愛指南書」や「恋愛マスター的な人」の教えによるものがあると思います。多くの恋愛指南書や恋愛エグゼクティヴが放つ恋愛テクニックにおいては「はっきりと告白されるまで恋人のような振る舞いをしてはならないし、とくに肉体関係を結ぶのは最悪」と指導されています。「告白」を受ける前に要求が通ってしまうと「彼女は付き合ってなくてもOKなのか、何という僥倖!」と男性側が思ってしまうために永遠に正式な交際に発展しないということです。

そしてもうひとつ、日本人には完璧主義が多いからということもあると思います。
正確には、「下準備が完璧」でなければ本番には挑まない、という性質(習慣かもしれない)です。

これは語学習得にも顕著に表れていて、私は、日本人が英語ができないと言われる原因のひとつに「完璧に話せるようになってからじゃないと話せない」と考えてしまうことがあると思います。日本以外の国の人は、日本人よりも英語を知らなくてもFacebookの言語欄に「English」と堂々と書いてしまいます。だいたい意思疎通ができればそれはもう「俺は英語ができる」という解釈なのです。欧米ではとりあえず「やってみる」「不備があれば後から調整」というスタイルが主流なのに対し、日本では「本当にやってもよいか何度も検証」「細部まで調整してから挑む」スタイルが多いですね。これが私は日本の「告白」文化にも表れているのではないかと思います。「とりあえず全部試してみてから」ではなく「正式なステップを踏んでもらう」ことに意味があるということです。

しかしよく考えてみれば、フランス人のやり方だってある意味では「完璧主義」に見えます。彼らは「本当にうまくいく相手」「永遠に恋できる相手」なのかを執拗なまでに見定めようとしているし、パートナーがずっと自分にとって心ときめく異性であることを求めています。これだって日本人とはかたちはちがうけれどずいぶんな完璧主義です。

日本のスタイル、フランスのスタイル、どちらをとってもうまくいくカップもいればいかなくなるカップルもいます。完璧を目指すことも時には大事だけど、長く関係を続けるのは、また別の要素も必要なのですね。

シロ

パリの片隅で美容ごとに没頭し、いろんな記事やコラムを書いたり書かなかったりしています。のめりこみやすい性格を生かし、どこに住んでもできる美容方法を探りつつ備忘録として「ミラクル美女とフランスの夜ワンダー」というブログを立ち上げました。

パリと日本を行き来する生活が続いていますが、インドアを極めているため玄関から玄関へ旅する人生です。

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