パリ、恋のエトセトラ

「美女好き」は普通でも、「イケメン好き」が非難される理由。

さて今回は前回の続きです。もう忘れたわーという人はひとつ前の記事へ

念のため前回のお話は、「フランス人女性は男性に中身を求めない」ということではもちろんありません。容姿も内面も両方求めるし、それを口にすることを憚らないというだけです。一方、日本では成人女性が「イケメンが好き」というとどこか「薄っぺらい女」というようなイメージが付きまといます。しかしイケメンであるということは男性としてかなり高ポイントなのは間違いありません。まず健康な肉体のしるしであるし、そもそも子どものころから「本物のイケメン」として扱われ、ふるまうという環境は、人格形成においてほとんどの場合よい方向に働きます。

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女性は男性よりも美しさを当然のように求められます。そういうと「いや男だって同じだ」という人もいるかもしれません。しかし日本では、それほどパッとしない容姿の女性が「イケメンが好き。顔のいい人と付き合いたい」と発言すると「ブスのくせに」と男性からも女性からもまるで罪でも犯したかのように責められることがあります。実際には本人でさえもそうなることをよく分かっており、「私がイケメンを求めるなんてずうずうしい」などと一歩さがってしまいます。少なくない日本人女性が「イケメンが苦手」「顔はよくない人のほうが安心」と発言しますが、その理由は「イケメンは緊張しそうだから」「イケメンは浮気し放題なのでは」といった消極的なもの、イケメンが彼女たちの心を揺さぶらないのではなく、「私とは釣り合わないから付き合いたいなんておこがましい」または「仮に付き合ったとしてもまわりの目がこわい」といった自信のなさからくるものであることが多いのです。自ら扉を閉めてしまっている。

でも男性はその容姿に関わらず、ほとんどすべての人が「かわいい子が好き、美人が好き」と容姿のよい女性を求めます。そのような発言が女性のようには責められません。「俺は不細工だから」という理由で「かわいくない女の子がいい」といってしまう男性なんてほぼ存在しません。私は自分の容姿がどうであれ、好きな異性の容姿なんて自由に求めていいと思いますが、なぜか女性にはそれが許されていないと思いこんでいる人が多い気がします。

ところで私は以前日本で、ある男性から「好きなタイプ」を尋ねられたことがあります。うろ覚えなのですが、たしか「全体的にセンスのいい人。とくに会話とか」みたいに答えたはず。当時はそう思ってたんですね。

すると、彼は怒髪天を突くといった調子で怒りだしました。私としても意外な展開だったので無言で見守るしかなく、そんなときに限ってつい「ときどき道にズボンが落ちてたりするのはなぜなんだろう」などと考えてしまうのですべてを覚えているわけではないのですが、ひとつだけ一言一句間違えずに覚えているフレーズがあります。それは「センスや才能がなくても、不器用で失敗ばかりするけど一生懸命な男のほうがカッコイイって思わないの!?」という、すなわちこれが彼の怒りの核でした。これだけだと「本当にあった世界不思議物語」のひとつにすぎませんが、意外にもこのあと同じような出来事に何回か遭遇しました。そしてこの怒れる男たちはみんな、「イケメンでリッチで女性にモテてモテてしょうがない」人たちではありませんでした。

分かり切ったことのようですがこのように、世の中には女性が有能な男性を求めるとイヤだなって思う人たちがいるのです。それで、イヤだなって何度も何度もたくさんの人が口にし、それが「容姿で男を選ぶなんて性悪女」に発展します。女性も同じことをするかもしれませんが、日本では男性より女性のほうが従い聞きいれる確率が高い。私はこれ、女性のほうが経済、未来に不安を抱えていることが多いからだと思います。

私はフランス人女性が日本人女性よりリッチだとは思いません。でも大きく違うのは専業主婦というものが存在しないに等しいこと。独身女性が専業主婦を目指すと、恋愛するうえでしばしば自分の立場が相手より弱くなります。また、フランスは結婚せずに子どもを持つことが日本よりも簡単です。制度が調い手当が厚く、何よりまわりから色眼鏡で見られることがありません。そして年を取ってからもカジュアルにパートナーをみつけられる、という風潮もあるはずです。さらにもうひとつ、何歳になってもいろいろな仕事に就いてお金を稼ぐことができます。たとえば40歳で客室乗務員を目指すことも可能です。日本よりは女性の経済的な不安、結婚へのプレッシャー、加齢への恐れが少ない社会だといえます。

仏女優のジャンヌ・モローが、かつてモテてモテてしょうがなかったであろうころに好きな男性のタイプを聞かれ、「美しければそれでいい。ほかはすべて私が持ってるから」と答えたのは有名です。

彼がお金を持ってても持ってなくても私とは関係ない、結婚はしてもしなくてもいいし、彼氏はいくつになっても見つけられる。もし日本の独身女性がこう思える社会になるなら、もしかして好きな男性のタイプもちょっと変わるのかもしれません。

シロ

パリの片隅で美容ごとに没頭し、いろんな記事やコラムを書いたり書かなかったりしています。のめりこみやすい性格を生かし、どこに住んでもできる美容方法を探りつつ備忘録として「ミラクル美女とフランスの夜ワンダー」というブログを立ち上げました。

パリと日本を行き来する生活が続いていますが、インドアを極めているため玄関から玄関へ旅する人生です。

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