「好きな男性のタイプ」比較、フランスと日本の場合。
好きな男性のタイプは? と聞かれたとき、どんなふうに答えるでしょうか。女性はまず、「優しい人」とか「真面目な人」とか「雑煮は白みそ派の人」など内面について言及することが多いかもしれません。では、見た目に限ってみるとどうでしょう。「背が高い人」とか「細マッチョ」とか「軽自動車を軽々持ちあげられる人」などでしょうか。
そもそも、「好きな男性のタイプ」について、まず内面に言及し、外見についてだけを事細かに答える人があまりいないのは「見た目や資産で男性を判断するのは性悪女」と思わされているところが大いにある気がします。でも私の経験に限っていえば、海外で女性たちから「好きなタイプは?」と聞かれ、「ええと、ドラクエ5ではビアンカを選ぶ人で……」などと答えようとすると、「違う違う、見た目の話よ」といわれることが結構あるのです(もちろんそれとは別に内面にも言及しますが)。
そういわれてみると私は好きな男性のタイプについて、その外見に思いをめぐらせたことがあまりありませんでした。そうやってずばり「好きなタイプの、外見」について尋ねられてからようやく考えはじめたくらいです。その結果、やはり私は美肌と肉まんに関するブログを運営しているくらいなので「肌がきれいで清潔な人」が好きなのだということに思い至りました。そこで「肌がきれいで清潔な人」と高らかに宣言すると、大抵の場合「は?」と不可解そうな顔をされます。
「は?」と不可解そうな顔をするだけではなく、あるフランス人女性はハッキリと私に「肌がきれい? 何それかなり奇妙ね」と告げました。「好きな男性のタイプっていったら普通アレでしょ、目の色とか髪の色とか体つきとかでしょ」などというので試しに彼女のタイプを聞いたら、「目はちょっと暗めのグリーンで、髪はブラウンが好き。胸板はかなりぶ厚いのが好きで、腹筋もきっちり割れててほしい。身長はだいたい185センチくらいがいい」と、その「オンラインゲームで自分だけのキャラを作ろう!」みたいな細かい設定につい無言になってしまいました。しかし向こうも好きな男性のタイプに「肌がきれい」なんてはじめて聞いたと驚いていた様子で、「清潔な人」に至ってはなかったことにされノーコメントでした。
日本では「顔の造形は関係ない、とにかく清潔感のある男性がモテる!」と婚活市場などでも最重要項目として扱われがちな「清潔感」が通じないなど、婚活の場を海外に移そうと考えているシャイな日本人男性がいたなら途方に暮れてしまうでしょう。「とにかく目の色と髪の色が大事」というそのフランス人女性の主張については「日本はそういった色彩をめぐる項目についてはバリエーションに欠ける」ということを伝え納得してもらいましたが、筋肉の発達具合については何としても譲れないということでした。
ところで筋肉の世界というのは真に平等な世界で、元気なら誰でも鍛えることができ、元の造形は関係なく、美しく筋肉を付けた者だけが称賛されます。だからそこには人種も職業も立ち入ることができず、すべての人にチャンスがあるのです。ヨーロッパでは男性が身体を鍛えていることはモテるための絶対条件じゃないかというくらいで、女性もきちんと鍛えている人は多いです。細マッチョってちょっと意味分かんない、マシュマロボディ何それミシュランマン? というくらい徹底的にメリハリを愛し、「フランスの女性は本当にマッチョが好きだからさ、面倒くさいよね」といいながら「女性の好みを反映するため」せっせとジムに通う男性もよく見かけます。
日本では、見た目や資産で男性を選ぶと性悪っぽく見られる風潮があるのでは、とはじめに書きましたが、こんな風にフランス人たちのド直球な「異性に対する外見の好み」とそれに応えようとする努力をみていると、性悪どころかずいぶんピュアに思えてくるから不思議です。そういえば私たち、小学生のころは理想の男性像の外見ってかなり細かく思い描いてはいなかったでしょうか。たとえば「髪はさらさらで短くて、目は一重でシュッとしている。背は180センチあって肩幅が広くて脚の長いスラっとした人。日焼けしててスポーツ万能」みたいに。成長を重ねるごとに何となく男性の内面について語るようになり、見た目について語るのは性悪女または幼稚な女、頭の悪い女と認識するようになったのは、単に大人になったというよりも「見た目で男性を選ぶのは悪い女」とするあらゆるものに理想が削られていったからではないでしょうか。
しかし、相性のよい相手を見つけるうえで「好きな見た目」であるというのは意外と大切です。次回は、なぜ成長するごとに日本人女性は外見の理想を語らなくなるのか、一方フランス人女性がそうならないのはなぜなのかについて考えてみたいと思います。
ARCHIVE
MONTHLY