新世代ミュージシャンに注目! #01 テン年代を象徴するD.A.N.のグルーヴ

Culture 2016.09.26

「D.A.N.が発信するのはどれもクールでカッコイイ!」と、幅広い層の音楽ファンを魅了する3人は、常に気になるものをチェックしては、音楽やファッション、映画などを共有し共感してきた。その揺るぎない感性が、音楽への自信へと繋がっている。そのD.A.N.にインタビューした。

モノを作るのなら、自分達がいいと思うものを全部考えたい

「僕らが目指しているものは、シンプルでかっこいい違和感ですね」と、桜木大悟は話す。

D.A.N.は、そのスタイリッシュな音楽性はもとより、ミュージックビデオやCDのアートワーク、ステージングなど、発表するもの全てにおいてセンスが良いと注目されている23歳の3人組だ。「モノを作るんだったら、自分たちがいいと思うものを(自分たちで)全部考えるでしょ」と市川仁也は当然のように語る。桜木と市川、そして川上輝の3人は中高生の頃からの知り合いで、音楽やファッションなどに興味を持ち始めた頃から行動を共にするようになった。D.A.N.の前に6人組のバンドに在籍していたが、思うような方向に進めず、そこで前から感性の合う3人でバンドを結成したところ、すぐに曲がポンポンとできるようになったそうだ。

「6人だとエゴがぶつかる。3人になるとその分一人一人の行動範囲というか、自由度が増した感じになった」(桜木)

「僕たち3人は、音楽を作る上で同じ力で対等な立場でやりたいし、みんなが楽しくやっていないと意味がない、というのがあった」(川上)

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写真左から、桜木大悟(Gt,Vo,Syn)、川上輝(Dr)、市川仁也(Ba)

その対等でありたいという姿勢は、音の棲み分けからも感じられる。重低音で歌うように踊るベースと、一つ一つのサウンドに意味があるような独特なリズムを乾いた音で刻むドラム、その上をシンセサイザーやギター、スティールパン、ヴォーカルが層を成していく。緻密に音を構築する、その基盤にあるのはリズム隊から生み出されるグルーヴだ。

「歌いながらセッションをしていて、ベースとドラムを重ねていくといったことをやっていて。いかにここでグルーヴを作るかが最初の関門で、その上で絡み合いを考えて上ものを重ねていく」(桜木)

重低音がしっかりしているため、その分、装飾的サウンドで多彩なことができるのだろう。それはライブを見て、さらに感じた。

「僕らはドラムとベースの関係性がとても重要。というのも、僕の歌はあまり変わらないですけど、僕や(サポートの小林)うてなが担当しているシンセサイザーやギターというパートはフレキシブルにやる必要があるから。実際に“せえ〜の”で、生で一緒に演奏することでダイナミクスが生まれると思うので、そのダイナミクスな部分がより引き立つような音を選んでいって、という感じです。棲み分けはとても重要で、どれだけ機能的にその音域を誰が役割を持ってやれるかという。それがいいアレンジになると思う」(桜木)

「Native Dancer」 映像も合わせ注目された人気曲。ファーストアルバム『D.A.N.』に収録。

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引き算しすぎて、遊びがなくなるのは面白くない

そして引き算だけを重視しているわけではないと話す。

「よく“引き算”という話になるけど、僕らは“足し算”もするし、どちらかというと重要なのは最終的なバランス感覚ですかね、ごちゃごちゃしてるのは良くないから。だからといって引き算を追求していって遊びがなくなるのも面白くないじゃないですか。要素を足す部分も大事だと思っています」(桜木)

「(曲を作っていると)情報量が多くて一回爆発しちゃうので、そこで初めて引き算を始める。いろいろ試したいんですよ」(川上)

音源を聴き込んでいた分、フジロックフェスティバル’16で見たライブステージは、いい意味でイメージがガラリと変わった。音源ではループを活かした緻密な音楽性が心地よい一方で、ライブで音の立体感や広がり、熱量の増したグルーヴ感やダイナミズムを視覚効果と合わせて体感すると、中毒性が一気に強くなる。緻密な音楽性とグルーヴに揺れるダンスとはどこか相反するような気もするが、「ミニマルテクノが好き」という桜木が、打ち込みではなくセッションで作っていく曲作りの妙に答えてくれた。

「そうですね。そこが面白いですね。ただ、僕の場合は構築的なテクノが発展していく感じというのがすごく参考になっているというか、そういう音楽を聴いていて気持ち良かったので、僕はそういうアプローチで行くことがあるんです。僕は(田中)フミヤさんとか、すごく好きです。特にビート感とかスウィングの感じがすごい似ている感じがするんですよね」(桜木)

「Dive(Live)」サポートミュージシャンとして小林うてなが参加。

聴いた瞬間に、“そういうのもあるんだ、いいね!”と感じられる音楽を

曲作りに関しては、着地点を最初から求めるより、どこに行くのかわからないのが面白いと語る。

「好きな元ネタとかあっても一辺倒にならないように、その時に自分たちが聴いているものや聴いてきたものの要素が全部ちょっとずつ混ぜたようなものにしようみたいな感じでやってますね」(市川)

「面白い違和感を探っている感じ」(桜木)

「聴いた時に“こういうのもあるんだ”っていう、意味のわかんないものってあるじゃないですか、レディオヘッドが急に発表した作品が“わけわかんない”って当時は思っても、しばらくしたら“あぁ、そうか”になるような。僕たちはレディオヘッドよりは、その瞬間に聴いて“そういうのもあるんだ、いいね!”みたいなのを作れているような気がします」(市川)

「Zidane」 EP『EP』とアルバム『D.A.N.』に収録。

確かに聴いているといろいろな音楽が見え隠れする。自分のアーカイブと彼らのアーカイブとを照らし合わせることを楽しんでいるうちに、気づくと心地良い真新しい音楽風景へ誘引されている。

「好きなのは、自分でジャズとエレクトロを混ぜたようなのとか、ブレインフィーダーのテイラー・マクファーリンと一緒にやってるマーカス・ギルモアとか、ジェイムスズーに参加しているドラマーのリチャード・スペイヴンとかも好きですね。でもあまり詳しくジャズを知らないから、ジャズをジャズとして聴いていないというか」(川上)

「僕も雑食でみんなと同じ。どのジャンルとかを考えずに、ジャズ、ヒップホップ、テクノ、ハウス……なんでも聴いている。特に好きなのはニルス・フラームというドイツのピアニスト。天才ですね。ミニマルで、ダンスミュージックの構成っていうか、その上でクラシックが解釈されている感じ。好きなのは、その人のコードの響き、音の響かせ方で、人間性がとても滲み出ているような音で、その人の音だと聴いた時に一瞬でわかる部分。基本的にそういうものがあるのは、どんなジャンルでも好き。すごくポップな歌モノでも、すぐにその人の音だなってわかるのはすごい好きです」(市川)

「Ghana」アレン・ギンズバーグのスピーチをサンプリ ングしている。

歌は邦楽洋楽こだわらずに聴いてきたという。

「たとえばライもすごく好きですし、山下達郎さんも好き、フィッシュマンズはずっと好きだし……。歌っていて、自分の意識がさ〜って遠くの方へ飛んでいく感じ、それが気持ちいいんです」(桜木)

歌詞に関してはこう話す。

「韻は、僕は意識して踏んでない。リズムとして良ければいいと思っているので。言葉にもメロディがあるし、そういうものを音として言葉を選んでいって、最終的に意味合いを、つじつまを合わせていく、そういう行程で歌詞は作っています」(桜木)

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表現する時に、普段着てないような服とか着てやるのは全然自然じゃない

好きな映画の話や写真集など、雑談していても会話は尽きないが、特に盛り上がるのがサッカーやファッションの話題だ。

「サッカーも音楽的という見方があるんですよね。リズムとハーモニーというか、連携。メロディっていうのは多分個人プレイでドリブルとかシュートのセンスで、ハーモニーというのはパスワークとか協調性かもしれない。リズムはどういう風に攻め上がるか、全体を上から見た時にどう動いているか。機能的な連携、バランスが取れている状態が一番いいと思っていて」(川上)

行きつけの古着屋での交流も重要といい、服の話も自然と音楽に結びついていく。

「服は自分の肌に身に着けるものだからデリケートじゃないですか。そういうものが好きなのは、質感やイメージを大切にしている人たちだと思う。そういう人たちと話していると自然と“音楽はこういうのがいいな”とか共通していったり、音楽に限らずいろんなカルチャーの話に及んで、そうやって僕らもいろんな人を知ったりする機会がありますね」(桜木)

「自然にいきたいんですよ。表現する時に、普段着てないようなジャンルの服とか着てやるのは全然自然じゃない。自分の音じゃなくなる。自分の人生とか、全部好きなものをまとめてD.A.N.を表現しているので、そこに異物が入ってくると純粋じゃなくなっちゃうから」(市川)

「Pool」アルバム『D.A.N.』に収録。

揺るぎない美意識や感性を共有していることを感じさせるD.A.N.の3人。

「音楽はただ押し付けてもしょうがないっていう感じですね。聴く人は聴くし、“いいものを作っていれば確実に届いてほしいところに届く”、“考えてやってる人には結果が付いてくる”と信じてやっているので、それが今できているのかなと思っています」(川上)

この自信がさらに音楽を心地よく響かせている。

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2016年4月発売のファーストアルバム『D.A.N.』

 

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プロフィール

2014年8月、桜木大悟(Gt,Vo,Syn)、市川仁也(Ba)、川上輝(Dr)の3人で活動開始。様々なアーティストの音楽に対する姿勢や洗練されたサウンドを吸収しようと邁進し、いつの時代でも聴けるジャパニーズ・ミニマル・メロウをクラブサウンドで追求した、ニュージェネレーション。2015年7月に1st ep『EP』をリリース。2016年4月に1st album『D.A.N.』をリリースしCDショップ大賞2017ノミネート作品に選出。15年,16年と連続してフジロックフェスティバルに出演。http://danbandtokyo.weebly.com

今後のライブ予定

10/09 京都 CLUB METRO
10/10 大阪 ミナミホイール (会場はJUNAS)
10/21 渋谷 O-WEST
11/05 渋谷 O-east
12/09 沖縄 OUTPUT
12/14 代官山 UNIT

photos : KO-TA SHOJI, texte : NATSUMI ITOH

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