アートに触れてセンスを磨く、いまおすすめの展覧会4選。
Culture 2024.04.21
絵画のコアに触れる、光と色と空間の実験。
『フランシス真悟 -Exploring Color and Space- 色と空間を冒険する』
ビーチや砂漠など起伏に富んだカリフォルニアの自然を体感し、両親をはじめ現代美術家に囲まれた青年期を過ごしたフランシス真悟。空間や光を新たなマテリアルと捉えるアートの突端に触れた彼は、人間の知覚と絵画における光や色を探究し、自然界や宇宙の崇高性に近づこうと試みてきた。本展では、蝶の鱗粉のような光干渉顔料が観る角度や光の反射で表情を変える代表『Interference』、青一色で塗り込められた『Blue's Silence』、果てしない空間を想像させる『Infinite Space』、コロナ禍の閉塞的状況で日記のように描かれた『Daily Drawing』など、初期作から最新作までを紹介。絵画のコアな冒険を続ける画家の作品世界を感覚に滑り込ませてほしい。
会期:開催中〜6/9
会場:茅ヶ崎市美術館 エントランスホール、展示室1〜3(神奈川・茅ヶ崎)
tel:0467-88-1177
開)10:00〜16:30 最終入場 ※5/3以外の金は19:30最終入場
休)月、4/30、5/7 ※4/29、5/6は開館
料)一般¥800
www.chigasaki-museum.jp
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唯一無二の気品にあふれたエロティシズム。
『宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO 』
1960年代以来、時代を牽引してきたレジェンドでありながらも常に進化し続けるイラストレーター、グラフィックデザイナー、宇野亞喜良。過去最大規模となる本展では、デザイナーとして仕事を始めた50年代の企業広告、60年代のアングラ演劇のポスターや児童書、近年の俳句と少女をテーマとした絵画など、貴重な原画や資料等を余すところなく紹介する。たとえば70〜80年代、過去の様式を求めるクライアントの仕事を抑制し、自身の表現スタイルを見直すために発表した作品群は、輪郭線を生かしつつ淡く着彩された裸婦像などリアリティのある肉体表現を特徴とするもの。唯一無二の気品のあるコケットリーとエロティシズムを纏うその世界に、大人の乙女心を震わせられるはずだ。
会期:開催中〜6/16
会場:東京オペラシティアートギャラリー(東京・西新宿)
tel:050-5541-8600
開)11:00〜18:30 最終入場
休)月、4/30、5/7 ※4/29、5/6は閉館
料)一般¥1,400
www.operacity.jp
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日常の奥に潜む非日常を描いた幻想の絵画。
『デ・キリコ展』
20世紀を代表する巨匠のひとり、ジョルジョ・デ・キリコは1910年頃から幻想的な風景や静物により非日常的な世界を表現する「形而上絵画」を描きはじめ、ダリやマグリットといった後世の芸術家や芸術運動に大きな影響を与えた。日本では10年ぶりの大規模な回顧展となる本展では、初期から晩年までおよそ70年もの彼の画業を、「イタリア広場」「形而上的室内」「マヌカン」などのテーマに分けて展示。さらに彫刻や挿絵、舞台衣装のデザインなど、絵画のみに留まらず多岐にわたる創作活動を紹介する。なかでも晩年、あらためて自身の過去作品を再解釈し、新境地に到達した「新形而上絵画」は、独自の軽やかなユーモアをも帯びていて、大きな見どころのひとつだ。
会期:4/27〜8/29
会場:東京都美術館(東京・上野)
tel:050-5541-8600
開)9:30〜17:00 最終入場( 火〜木、土、日)、9:30〜19:30 最終入場(金)
休)月、5/7、7/9〜7/16 ※ 4/29、5/6、7/8、8/12は開館
料)一般¥2,200
www.dechirico.exhibit.jp
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緻密に描き込まれたミステリアスな物語世界。
『junaida展「IMAGINARIUM」』
『Michi』『の』『怪物園』『街どろぼう』など、近年出版された絵本が国際的に注目され、大きな話題を集めている画家 junaida(ジュナイダ)。鮮やかな色彩で緻密に描き込まれた人物や背景、ヨーロッパ文化の薫りを想起させる装飾性、光と闇が共存する謎めいた物語の世界観はその大きな魅力だ。全国巡回を経て、美術館では初となる大規模な巡回展では、真紅や金に彩られた展示空間に絵本の原画や一枚絵として描かれた作品をはじめ、本展のために描き下ろされた新作も含めた400点を超える作品を展示。三連画の新作『IMAGINARIUM』や、怪物たちが行進するアニメーションの映像インスタレーションなど、絵を浴びるように空想世界に入っていくことのできる展示となる。
会期:開催中〜6/2
会場:市立伊丹ミュージアム 展示室2・3・5(兵庫・伊丹)
tel:072-772-5959
開)10:00〜17:30 最終入場
休)月
料)一般¥1,000
www.itami-im.jp
*「フィガロジャポン」2024年6月号より抜粋
text: Chie Sumiyoshi