フィガロが選ぶ、今月の5冊 カヴァンが描く孤独は、 なぜこんなに魅力的なのか。

Culture 2016.10.24

『 チェンジ・ザ・ネーム』

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アンナ・カヴァン著 細美遙子訳 文遊社刊 ¥2,808

 

少女のころは、誰もが誰とも分かちあえない孤独を抱えていたはずだ。かたくなな自分とも、やがて折り合いをつけていくものだけれど、カヴァンが描く主人公は違う。満たされない孤独を抱えながら、あてどなく突き進んでいく。長編第一作にあたる本作の主人公シーリアも、両親に愛されているという実感を持てないまま男性遍歴を重ねる。その娘クレアもチェンジ・ザ・ネーム=結婚では満たされない。支配的な母親の下で育ち、精神的に不安定だった作家自身の面影を宿した作品群は、愛に対して懐疑的だが、妥協のない醒めた眼差しに惹きつけられる。

 

*「フィガロジャポン」2016年11月号より抜粋

texte : HARUMI TAKI

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