立田敦子のカンヌ映画祭レポート2018 #07 カンヌ映画祭2018での日本映画の評判は⁉

Culture 2018.05.21

日本映画が1本も上映されないという年もあるカンヌですが、今年は是枝監督がパルムドールを取ったという快挙に! メインのコンペ部門は世界中から4000もの応募作品がある狭き門で、選ばれるだけでもそうとうの価値があるのです。是枝監督の『万引き家族』ともう一本選出されていた作品、濱口竜介監督『寝ても覚めても』も注目されました。

カンヌ初登場の濱口監督は、前作『ハッピーアワー』(2015年)がフランスでも公開されており、日本の新しい才能として知られています。上映後の取材にて、主演の東出昌大は、濱口監督の大学時代の恩師でもある黒澤清監督から「『濱口はカンヌを目指しているのか?』と聞かれたので、『そうです』と答えたら緊張が走りました」とジョーク交じりに話していましたが、黒澤清監督も意識するほどの日本映画期待の星です。

180522_small1 KAZUKO WAKAYAMA.jpg©Kazuko WAKAYAMA

180522_small2Kazuko WAKAYAMA.jpg©Kazuko WAKAYAMA

フォトコールとレッドカーペットに登場した、濱口監督と東出昌大、唐田えりか。

 『寝ても覚めても』は、柴崎友香の同名小説を映画化したもので、失踪した恋人麦(バク)のことを忘れられない朝子が麦とそっくりの顔をした亮平と出会うという、変形三角関係のラブストーリーです。少しヌーヴェルヴァーグっぽい気配があるのでフランスでウケそうだと思っていたところ、リベラシオン紙が絶賛していました。

180521_f85f5a617ccc8876951d9aee18698696.jpg

『寝ても覚めても』より。東出昌大が、同じ顔をした異なるタイプの男、亮平と麦という一人二役に挑む。

 50周年を迎えた「監督週間」では、細田守監督のアニメ『未来のミライ』が上映されました。過去作すべてがフランスで公開されていて、すでにフランスでは知名度の高い細田監督ですが、カンヌには初登場! 主演くんちゃんの声優を務めた上白石萌歌とともに、カンヌ入りした細田監督。作品は7月公開予定だったため、当初カンヌのことが念頭になかったそうで、3月頃にカンヌ出品の話が決まってから急ピッチで製作したとのこと。幼い子どもをもつ監督自身の体験が反映されているというこの作品には、“子どものアニメ”の復権を目指す細田監督の思いが込められています。

180521_1.jpg

カンヌに登場した細田監督と、主演くんちゃんの声優を務めた上白石萌歌。

180521_1main.jpg©2018 スタジオ地図

画像キャプション7月20日(金)全国公開予定の『未来のミライ』。

短編部門では、『どちらを選んだのかはわからないが、どちらかを選んだことははっきりしている』(英題『Duality』)が上映。佐藤雅彦、川村元気、東京藝術大学佐藤研卒業生の映画製作チームc-project(関友太郎・豊田真之・平瀬謙太朗)による共同監督作品です。上映の舞台にも5人が登壇しました。監督デュオはいますが、5人の共同監督はかなり珍しいですね。佐藤監督とc-projectは、14年にも短編作品『八芳園』が上映されています。カンヌには5人の監督に加え、主演の黒木華も来場しました。

180521_2.jpg

カンヌの公式上映に来場した、5人の監督と主演の黒木華。

180521_b8233412374a89acd938439cf520eb99.jpg

『どちらを選んだのかはわからないが、どちらかを選んだことははっきりしている』(英題『Duality』)は、黒木華が演じる若い母親とその息子を描いた、14分間の作品。

映画ジャーナリスト 立田敦子
大学在学中に編集・ライターとして活動し、『フィガロジャポン』の他、『GQ JAPAN』『すばる』『キネマ旬報』など、さまざまなジャンルの媒体で活躍。セレブリティへのインタビュー取材も多く、その数は年間200人以上とか。カンヌ映画祭には毎年出席し、独自の視点でレポートを発信している。

>>関連記事
#01 セレブカップル出演作でスタート! 第71回カンヌ国際映画祭。
#02 カンヌ映画祭"場外乱闘"の続報!
#03 ゴダールがフェイスタイムで記者会見に登場!
#04 是枝監督『万引き家族』に絶賛の声!
#05 カンヌも"#MeToo"問題にフォーカス!
#06 是枝監督『万引き家族』、日本映画21年ぶりのパルムドール!

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

フィガロワインクラブ
Business with Attitude
パリとバレエとオペラ座と
世界は愉快

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories