空を飛ぶ鳥のように現代社会を眺める、東アジアの作家の文明観。

フィガロが選ぶ、今月のアート5選[2016.07.29~]

記憶の円環|榮榮&映里(ロンロン・アンド・インリ)と袁廣鳴(ユェン・グァンミン)の映像表現


 日本を訪れる外国人が急速に増え、東アジアの同胞が抱える問題や人間観、自然観と触れ合う機会が日常となった。本展では隣国で活躍する2組に焦点を当てている。
 榮榮&映里は中国人と日本人のカップルで、北京で現代写真のアートセンター「三影堂撮影芸術中心」を主宰する。ふたりは写真を共通言語として愛情を育み、ビジョンを共有してきた。激動する中国社会の現実と家族が増えていく日常を写し取った作品には、雄大な自然と人間社会との関係性が、彼らの美しい身体を媒体として表現されている。越後妻有アートトリエンナーレで発表された《妻有物語》では新潟の里山に滞在し、四季折々の風景の中で子どもたちと営む暮らしを撮影した。雪景色や湯煙のモノクロームのグラデーションが美しいイメージは水墨画のよう。そこには彼らの創作のテーマである「生命の環」が体現されている。
 袁廣鳴は80年代から活動する台湾のビデオアートの先駆者。ドローン技術以前、空中にワイヤーで吊るしたカメラで鳥の視点から撮影するケーブルカムなど、特殊機材によって、目や脳での理解を超えたフィジカルな映像表現を追求してきた。彼個人の家や家族、あるいは魚、鳥、海、森などのイメージが無人の都市や廃墟と隣り合わせに存在する映像は、最先端技術を駆使しながらも常に文明批判的なテーマに斬り込む。私たちの意識下に潜む亡霊が記憶をスキャンし、現代社会を漢詩に詠んだかのような冷徹な視点は、世代の違うこの2 組の作家に共通する、合理主義を超えた鳥瞰的自然観ともいえるだろう。

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