世界中が涙した感動作!『光をくれた人』監督インタビュー。

インタビュー

孤島ヤヌス・ロックで暮らす灯台守の夫婦、トムとイザベルのもとに流れ着いた身元不明の赤ちゃん。望みながらも我が子に恵まれなかったふたりは、過ちと知りつつ、その子を娘として育てることに。4年後、幸せの絶頂にいた家族は、偶然にも娘の生みの母親ハナと出会ってしまう――。

5月26日(金)に公開となる『光をくれた人』は、オーストラリアの作家M・L・ステッドマンによるベストセラー小説を『ブルーバレンタイン』のデレク・シアンフランス監督が映画化。本作の共演がきっかけで恋に落ち、実際にカップルになったマイケル・ファスベンダーとアリシア・ヴィキャンデルに加え、レイチェル・ワイズら実力派が競演した愛と赦しの物語は「涙なしには見られない」と世界中で絶賛された。そんな本作について、デレク・シアンフランス監督にインタビュー。

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― 初の原作作品、雄大な自然の中での撮影など、監督の新境地が見られる作品となりました。

デレク・シアンフランス監督(以下、D):「前作『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』の撮影後、自分自身のアイデアに飽きてしまったんだ。自己嫌悪で悩んでいたし、ストーリーテリングを違う視点から学びたかったから、原作ものを撮ることにした。心に響く作品にはなかなか出合えなかったけれど、原作の小説を読んだ時、『僕が過去作品で描いてきたテーマと似ている』と感じた。ただ、時代設定が1920年代だということ、舞台がオーストラリアだということに不安要素もあった。それまで僕が作ってきた映画は、すべて現代のアメリカが設定だったからね。でも異国の地で初めての時代設定で撮影し、その世界について学ぶことができて、結果的にすばらしい経験になったよ」

― 「光」が作品のテーマとなっていますが、その表現でこだわった点は?

D:「光と影の表現は、この作品を作りたかった理由のひとつだ。光は“露呈”を、暗闇は“秘密”を表していて、その両方を描いた。主人公の夫婦は暗闇の中、ヤヌス・ロックで生活している。そこで実際に何が起きているのか、本土では把握していない。暗闇の中で下した決断は、一生明るみには出ないと感じてしまいがちだ。でもその決断に光を当てると、まったく違う見え方になる……。ヤヌス・ロックは人々の欲望や恐怖を、本土は欲望のままに行動した場合の結果を表している。これはとてもカトリック的な考え方なんだ」

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― 人里離れたロケ地での撮影だったそうですが、現場ではさまざまな困難もあったのでは?

D:「ニュージーランドで冬から春にかけて撮影したから、太陽の位置が常に低かったんだ。日照時間は10~11時間ほどだけど、日中の主な光源は太陽で、日が暮れると灯台の光とロウソクを頼りにしていた。日光のありがたみを実感したし、暗闇の中で人々がどう生活していたのかを理解しようと努めた。撮影監督のアダム・アーカポーもその感覚を最大限に活用していたよ。日中のシーンを撮るのに光が足りず、それを補う照明もないので、苛立たしく感じる時もあった。でもそれだけリアルということだ」

― もしあなた自身がトムの立場だったら、どのような選択をすると思いますか?

D:「とても難しい質問だ。トムのジレンマは理解できる。妻は自分に生きる喜びを思い出させてくれた人なのに、娘を返すことで、妻がひどく苦しみ取り乱しているのを見なければいけない。自らの道徳心や義務感と、感情との葛藤は十分に理解できる。果たして彼がやったことは正しいのか……? 正解はないと思うんだ。僕の映画に登場する人物はみんな、不可能に近い選択を迫られる。そしてどの選択も大きな結果を招く。彼らは決して悪い人々ではない。僕は個人的にヒーローや悪人の存在を信じていないから、映画の中でもそういうものは描かない。この作品は、善人がたまたま誤った選択をしてしまうという話なんだ。正当な理由に基づいてね」

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― 監督の作品ではいつも子役がのびのびと自然な演技を見せていますが、演出において心がけていることはありますか?

D:「子役の演出は毎回違う。実は彼らの演技が、作品全体をどう撮りたいかという基準にもなっている。同じことは繰り返したくないから、いつも一度しか起こらない瞬間をとらえようとしていて、子役はそれを提供してくれるのさ。彼らが現場にもたらすカオスが僕は大好きなんだ。子どもがいるだけで、大人はみんな気が抜けないし、役者たちの警戒心も解ける。今回、フローレンスをルーシー・グレース役に選んだのは、彼女とのある会話が理由なんだ。『デレク、あなたの中にガイコツが入っているのを知っている?』と言うので、『本当?』と答えたら、『そうよ。私の中にも入っているの』と。そして僕の耳元でこうささやいた。『みんな、中にガイコツが入っているの』。それ以来、僕は以前のように人を見られなくなった。4歳の女の子に影響され、みんな歩くガイコツだという認識が植え込まれてしまったんだ!」

― 想像すると思わず笑みがこぼれてしまいます。作品の中では「手紙」が重要な役割を持ちますが、監督も誰かに手紙を書くことはありますか?

D:「僕はずっと手紙を書き続けてきた。仕事でどこかに行く時も、出発前に妻と子供ふたりに手紙を書く。家を空けるのが1~2日だけでもね。家族もその手紙を大切に持っていてくれているんだ。いまの時代、メールやテキストメッセージなどコミュニケーション手段はたくさんあるけれど、ペンと紙を使って思いを書き留めるのは格別だ。僕はノスタルジックなものが好きで、手紙だと体温を残せる気がする。フィルムで撮る映画と、デジタルで撮る映画との違いのようなものだ。映画に登場する手紙で印象に残っているのは、イングマール・ベルイマン監督の『叫びとささやき』だ。これは手紙というより日記だけどね。『アウトサイダー』も原作自体がすばらしいし、『タクシードライバー』もいい。手紙を読むシーンは、ボイスオーバーの手法を使うのが大好きなんだ。今回もどうすべきか迷った。ベルイマンのようにただ手紙を読み上げるのか、声が聞こえるようにするのか……」

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― どんな演出がされているかは、作品を見てのお楽しみですね。ちなみにこれまでに監督が受け取った手紙で、印象に残っているものは?

D:「妻と結婚した時、妻の祖母が手紙をくれたんだけど、ずっと後になって、妻と1日中ケンカをしていた時たまたまその手紙が出てきたのさ。それにはこう書いてあった。『覚えておいて。お互い怒ったまま床につかないこと』と。それを妻に見せたら、祖母からメッセージを受け取ったことにビックリしていた。その時、彼女は亡くなって7年も経っていたのに、僕たちに語りかけ、結婚生活を救ってくれたんだ」

― 家族の物語を描き続けている監督にとって、家族とはどういう存在ですか?

「僕がいつも家族に関する映画を撮っているのは、僕にとって家族がすべてだから。夫であり父親であることは、映画監督であることと同じくらい大切なのさ。映画を作るたびに、家族と離れるという犠牲を払わないといけない。今回の撮影で最も大変だったのは、妻や子どもと離れ離れだったこと。90日間まったく家族と会えなかった時期がある。幼い子にとっての90日間は大きい。家族が恋しくて、会いたいと切に願っていた。その思いを映画作りにぶつけたから、思慕や苦悩が感じられる作品になったんだと思うよ」

『光をくれた人』
5月26日(金)TOHOシネマズ シャンテ 他にて公開
配給:ファントム・フィルム
ⓒ 2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC
http://hikariwokuretahito.com/

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